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あべこべ転生!?~あべこべ世界での僕は新しい出会いに飢えている~  作者: あだち りる
第一章「あべこべ世界に出会いを求めて」
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番外編「ココア」

本編にまったく関係ないですけど、こう言うの書いてみたかった。

私は、このコンビニで働いている。

ごく普通の、このありふれたコンビニで、唯一の私の楽しみがある。


この時間はお客さんがまったく来ないのだけれど、一人だけ、来るお客さんが居る。


そう、それは彼だ。


(今日もまた来てくれた…)


白く美しいその見た目は、この夜のコンビニではとても輝いて見えた。


前までは、つまらなくて、もうここのバイトをやめてしまおうとさえ思ったけど…今は、違う。


彼が来てくれるから。

この時間は、私だけの密かな楽しみだ。

二人だけの空間…この時間がずっと続けばいいのになぁ…。


そんな叶わない夢を抱く。

彼を眺められるだけで、私は幸せで、心の中がポカポカと暖かくなる。


今日も綺麗だなぁ…何でいつもこんな夜遅くに来るのかな?聞いてみたいな、でも話し掛けたら気持ち悪がられるかな…名前とか聞いてみたいな…。


いや、眺められているだけでも幸せだと思わなきゃ。


そうだ!高望みをしちゃいけないよ!


「あの」


「はいぃ!?」


突然、彼に話し掛けられた。


え?なんでそんなに見詰めて…も、もしかして私の事す…いやいや!で、でも、もしかしたらーー


「えと…その、お会計を」


「え!あ、すみません!!」


「あ、いえ、ゆっくりでもいいですから」


彼は頬をかきながら微笑みかけて、優しい言葉をかけてくれた。


私はその言葉に嬉しさを隠せない。


この人は本当に男の人なのかな…?

私が知ってる男の人は、こんな優しい言葉をかけてくれはしない。


むしろ喋れるだけで、私は凄く得した気分になれた。

だけどなんだろう…彼は、どこか違う気がする。


どの男の人とも違う、優しくて、暖かくて…見てるだけで、幸せになれる。


あ、なんか…今なら聞けそうな気がする。


「あの…すみません」


その時、私の口はいつの間にか動いていた。


「はい?」


彼は不思議そうに首を傾げる。


「…お名前をお聞きしてもよろしいですか?」


……………な……ななななななに聞いてるの私いいいいいいいいい!!こ、こんなのただの気持ち悪い女確定だよ…終わった…きっと、彼はもう来てくれなーー


「時雨」


「へ…?」


「灰原時雨です、いつもお仕事ご苦労様です、佐々木さん!」


「…な、なんで私の名前…」


すると、彼はトントンと、自分の胸元をつついた。

私は、それに気付き、自分の胸元を見る。


あ…そっか、名札。


「それに…あんな可愛らしい笑顔を向けられたら、流石に覚えざるを得ませんよ」


「か、かわ!?」


「いつも、ご苦労様です」


「あ、ありがとう…ございます…お、お会計の方が825円になります!!」


ついテンパってお会計の方に移ってしまった。

ん…?いつも買ってる奴と違う商品?


「あ、それ、貰ってください、僕から差し入れです」


「そんな!悪いですよ!」


「貰ってくださいよ、せっかくカッコつけたのに、これじゃ台無しになりますから、それじゃ、また来ます」


そう言って、彼は一本の飲み物を置いて去って行ってしまった。


夢の様な時間を過ごしてしまった。

私の人生の中で、誰かに可愛いなんて言って貰った事なんてなかった。


急に体が暑くなる。

彼の優しい言葉、一つ一つが私の中に溶けて行く。


何だろうこの気持ち…。


私は、彼がくれたココアにそっと手を触れた。

そのココアは、凄く、暖かかった。


「今日も、頑張ろう」


私は、その暖かいココアに口をつけたのだった。

時雨君この後顔真っ赤だな、間違いない。

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