12「ありったけの感謝を」
妹が!姉が!母が!足りない!
足りないぞおおおお!早く!早く登場させるんだ俺!!
そして、カラオケは次のローテに入り、僕は皆に頭を下げた。
反応としては…
「いいんだよ!?むしろ私達にはご褒美だよ!」
「そうですわ時雨様!私としては何度でも罵って頂いて結構ですのよ!?」
「時雨きゅんの罵倒ならいつでもバッチこいだよ!」
「しぐたんの罵倒はご褒美だお」
あ、この四人やはりセットなのか。
他の皆も、快く許してくれた、皆天使か…優しすぎて逆に申し訳なくなってくる。
元社会人としては、全員に菓子折りを渡したいくらい、いやま、しないんだけど。
後、何よりさっきから変わらないのが、謝った後の皆の驚き様かな…凄い顔してたからね、もはやこの世の物とは思えない物を見てる様な目の血走らせ方だったよ…。
でも考えると…元々あんだけ罵倒してた奴がいきなりの謝罪って…あ、うん、驚くわ。
さてと、そろそろ次のローテの子達が来るかな?
「…」
この悶々と待つ感じ、何かを思いだすなぁ…えっと…あ、キャバクラだ。
よく上司に連れられて行ったなぁ…。
僕のオタク話に愛想笑いで返してくれたキララちゃんは元気でやっているだろうか、またいつかオタク話を一方的に語りたいものだよ。
そんな事を考えていると、ガチャリ、と、扉が開く。
するお、ゾロゾロと滝の様に流れてくる。
その中で、最初に目を引いたのはーー
「あ、笛口さん」
「ど、どうもです…」
このパーティーに誘ってくれた心優しき美少女、笛口さんが居た。
僕の呼び声に、笛口さんは赤面しながらこちらに近寄ろうとする。
だがーー
「花梨、お前にだけいい思いはさせん!」
「花梨ちゃん、このパーティーに灰原くんを呼んでくれたのは感謝するよ、けれど灰原くんの隣は譲らない!」
「な、りっちゃんにるんちゃん!?」
笛口さんがそう呼ぶ二人は即座に僕の両隣に陣取った。
この光景今日で三度目だ…あれかな?好きな子の隣の席になりたい敵なそんな思いが働いたに違いない、やはり中学、高校は青春を謳歌せねば!
まぁどこぞの三十路童貞は、灰色の中学と高校生活を送った訳だが…あ、なんか涙が。
さて、皆の席争奪戦も終焉を迎えた様だし、本日最後の謝罪と行きましょうか。
これが僕の、灰原時雨としての、スタートなんたがら!
そして、最後のパーティーが始まるのだった。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄
 ̄
「はんっ」
これ上手い…ここのカラオケ食べ物のレベルが高いな、今度真似してみよう。
ふと周りを見ると、また次の人にマイクを渡し、二人が歌い出す。
皆が歌ってる中、僕は何をしているのか。
答えは簡単、黙々とご飯食べてます。
あれれ?おっかしいな~皆に謝った後、わいわいとトークを楽しむはずが、いつの間にか僕の両隣に人が居ないぞ~?
では、事の顛末を話しましょう。
僕が謝り、そして、終わっていたと思っていた席争奪戦でしたが、延長戦突入でございます。
僕の両隣を獲得できるのは、デュオで歌い、点数が一番高い一組が獲得できるのだ。
そして、もう一つルールとして、勝負の間は僕の隣に来てはいけないと言う…おい、ウサギは寂しいと死ぬんだぞ?
死ぬ前に早く終わらせて欲しい。
そして、とうとう最後の組となりーー
「あれ?」
最後は、笛口さんなのだが、どうやら人数が足りないらしく、ペアが居ないらしい。
そうか…僕を合わせてこの部屋の人数は十人。
この空間に置いて、奥の手、先生と組むは発動されない…あー笛口さんがおろおろし始めてるぅ!ど、どうする?そうだ、ここは僕が助けるしかない!
おろおろしている笛口さんの方へ行く。
「笛口さん」
「は、灰原くん…?」
不安な顔でこちらを見てくる笛口さん。
わかる、わかるよ、こう言う時ってすごく不安になるし、寂しくなる。
この状況を打破するには、僕が架け橋になるしかない。
「僕が一緒に歌うよ」
「で、でもこれは灰原くんの隣をゲットする為の…」
「じゃあゲットしようよ、それに僕も、笛口さんの隣をゲットしたいしね!」
一つウィンクをして決めてみる。
「…」
…あの、無言は辛いんですが…決めすぎたか、流石に調子に乗りましたすみません。
すると、なぜか周りの皆が踞る。
ではここで、女子一同、心の声を聞いてみましょう。
((((尊いいいいいいいいいいいいい))))
「そ、それじゃあ一緒に歌う曲決めようよ!」
「へ!?あ、そうだね!!」
うぅ…恥ずかしさのあまりテンパってしまった…これからウィンクは控えよう。
そして、笛口さんと共に曲を選ぶ。
二人でデンモクを覗く。
ほうほう…こう言う曲があるのね…あべこべで、男性ボーカルと女性ボーカルが入れ替わってるな…歌はほとんど変わらないのか。
とりあえずーー
「笛口さんは何を歌って、うわ!?」
「ひゃ!」
横を向くと笛口さんの顔が至近距離にあり、ついびっくりしてしまった。
笛口さんの顔を見ると、顔が真赤だ。
てか今僕も顔真赤だなこれ…至近距離に美少女の顔があるのはかなりヤバイ…。
しかもだ、笛口さんは僕にとっては、かなりドストライクの容姿をしているのだ。
黒い髪の毛を肩まで伸ばし、綺麗に整えている、花の髪飾りがその可愛さを際立たせる。
少し垂れている目なんか最高である。
目鼻立ちが良いのは言うまでもあるまい。
見る限りだと、すごくスタイルもいい、程よい美乳もなかなか…ん?変態?だまらっしゃい。
「ご、ごめんね、急に横向いて、なんか歌いたい曲あるかな?」
「え、えっと」
(灰原くんの横顔につい見惚れてしまった…今晩のオカズ決定だよ…)
笛口さんが顔を真っ赤にしながら指を差した曲はーー
「あ、これなら僕も歌えるよ!」
「ほ、本当に!?」
「うん、このアニメはすごく好きだから」
「は、灰原くんもアニメとか見るんだね!」
「まぁね!それじゃこれで決まり」
まさか、笛口さんがこの曲を選択するとは…喉が疼く!
そして、曲が始まる。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄
 ̄
「ん~!今日は楽しかったね、笛口さん」
「そ、そうだね!後灰原くん凄く歌上手いんだね!」
「あの曲は昔から好きだからね!いや~それにしても、まさか帰りの道が笛口さんとほとんど変わらないなんて、びっくりだよ」
「私も驚いちゃった」
今、僕は笛口さんと一緒に帰宅中である。
パーティーも終わりを迎え、皆で最後のお疲れ様をした。
あの後、席争奪戦は、笛口さんの友達である、律さんとるんさんが勝利した。
僕と笛口さんは、と言うと…まぁなんだ、とても言いにくいんですが、笛口さんはいわゆる音痴、と言う奴でして…まぁそれでも点数はそこそこだった。
けれど、何より今日は、笛口さんと歌ってる時が一番楽しかったなぁ…。
これも、笛口さんが今日誘ってくれたお陰かな。
「笛口さん」
僕は、夕暮れ空を後ろに歩く笛口さん方を見る。
「ん?」
「今日は、誘ってくれてありがとう」
ちゃんと、皆に謝るチャンスをくれたのは笛口さんだ。
感謝している、今日、こんなに楽しく過ごせたのは全部が笛口さんのお陰なんだ。
だから、今伝えられるありったけの感謝を、このありがとうに込めた。
すると、笛口さんは、おどおどと答えるではなく、風で靡いた髪の毛を抑えーー
「どういたしまして!」
満面の笑みを、僕に向けてくれたのだった。
あ、まったくこの小説とは関係ないんですが、とある小説を読みましてね、なろうで。
そのタイトルがもう凄かったので読んだんですよ。
もう出てきた感想がーー
「ヒヨ理ちゃん可愛いすぎかよ…」
あんなストーカー俺にも居ないかな?