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あべこべ転生!?~あべこべ世界での僕は新しい出会いに飢えている~  作者: あだち りる
第一章「あべこべ世界に出会いを求めて」
1/43

1「三十歳童貞男の魔法」

「ハッピバースデーテュー…ミー…」


部屋で一人、冬の寒さを手の先に感じながら小さく手拍子する。


「ハッピ…バース…デーテューミー…」


蝋燭の温もりを感じながら、自分に向けてバースデーソングを歌う。


「ハッピ…ば…す…でっ…でぃあ…拓斗…ハッピ…バースでー…テュー…ミー…」


震えていた声は、泣き声へと変わった。

十二月二十五日、クリスマスは僕、高坂

拓斗こうさか たくとの誕生日である。


今年で三十歳、つまりとうとう魔法使いの仲間入りをした訳である。

高校生の頃、ネタで言っていた事が本当になるなんて、思いもよらなかった。


すぐ卒業出来る、大学に入れば別だと。

なんせ出会いの場、と言うくらいだ。

けれど、大学に女友達は出来れど、恋人など出来なかった。


その出来ない理由、それは明白ではあった。

何故なら皆が皆、僕の事をこう呼ぶからだ。


『草食拓斗』


と。

意味は勿論『草食系男子』と言う事だ。

僕の行動の一つ一つが、この忌まわしき異名をつけられた由来だ。


僕は昔から人と少し距離を置くのが上手かった。

程よい関係と言う物を好んでおり、それ以上は踏み出さず手前に置く。

そうすれば嫌われることも、関係がねじ曲がる事もない。


自慢ではないが、僕はこの人生に置いて人と喧嘩をしたことがない。

しそうになったとしても僕がそれを全力で阻止したからだ。

僕のスライディング土下座は相当な見物だっただろう。


勿論、そんな事をするとあらば気遣いやらなんやらしなければいけない。

相手に合わせたり、相手に嫌悪されぬ様にと。


そう、この行動故に、僕は『草食拓斗』と言う忌名いみょうがつけられた。


別に僕は草食系男子ではないと言うのに。

普通に性欲処理だってするし、妖艶な妄想だってする。


そして、そんな思い出と共に大学を出た後、そこそこ大きな会社につけた。

ここからはとても普通の人生だったのかも知れない。


ただ働いて、ただご飯を食べて、そんな生き方をしていた。

けれど、ここで僕の人生に転機が訪れたのだ。


僕は彼女に出会う。

僕の…きっと、最初で最後の恋人。


出会いは彼女が新入社員として家に入って来た時だ。

その時、僕は教育を任され、彼女に仕事を教えていた。


彼女はよく笑う子だった。

失敗しても、挫けずに笑い続ける。

何でいつも笑っているの?と一度聞いてみた。

すると、彼女はこう答えたのだ。


「笑わないで下を向くなら、私は笑って下を向きたいんです!」


その時、僕は彼女の笑顔に恋をしたのだ。

きっとこれが僕の初恋だ。

そして、時が経つにつれて、僕はいつの間にか彼女と恋人同士になっていた。


いつも笑っている彼女に元気を貰える…僕の人生に一瞬で花が咲いた様に思えた。

これ程嬉しい事はない、幸せな事はない、と。


そして、付き合って一年、僕は彼女と初めてのキスを交わした。

この一年間長かった、お互い緊張して、まだだ、ここじゃない、と睨みあった一年間。


本当に幸せだ、僕は彼女となら何処までもいける。

ずっと一緒に居られる、愛し続けよう。

何に変えても、彼女を愛し、守り続けよう。


そう、決めて今日僕は意を決して彼女と体を重ねるつもりだった。

けれど、朝彼女から電話がかかり出ると一言。


「別れよう」


僕は、一瞬何を言われたのかわからなかった。

やっと理解したのが彼女に電話を切られた瞬間だった。


その瞬間にわかったのだ。

全てがなくなったことに。


だから、だから僕は無くなる前に、無くなるのが嫌だから、走った。


雪が降り積もる中、寒さなど忘れ、走った。


嫌だ、嫌だ、嫌だ。


君と居たい、君と居させて欲しい。


僕は君のためならなんだってする。


君が望むなら…だから…だから!


僕は彼女の家の扉を開けた。


…は?


「た、拓斗…どうして」


「あん?誰」


目の前で、彼女と知らない男が裸で肌を重ねていた。


「そっか…」


初めから僕は…。


何を勘違いしていたんだ。

高坂拓斗、お前はもう遅かったんだよ。

彼女は僕のことなんて、とっくに切り捨てていたんだ。


それを知らずに僕は…僕は…。


けれど、僕ってやつは何処まで言っても、僕なんだ。


「今までありがとう、さよなら」


僕は、怒ることも、罵倒することもなく、ただただ笑って、お別れを告げた。


「た、くと…」


ごめんね、君から教わったはずなのに、笑うときは、泣いちゃいけないって。

僕は、その場を離れた。


彼女は僕の名前を呼んで、何故か涙を流していたが、もうなにもかもが遅かった僕には何も言えなかった。


降り積もる雪が、足にじーんと染みる。

そう言えば急いで出てきたから靴はいてないや…足の感覚全然ないじゃん。


家に着いた僕はベッドに倒れた。

毛布をぎゅっと握り、一頻り泣いた。


きっと、その時の僕は酷い有り様だっただろう。


はは…『草食拓斗』…僕にはぴったりな忌名じゃないか。


そして、泣きつかれた僕は、せめて昨日買ったケーキでも食べて気分転換と思って蝋燭を立てて雰囲気作りをしたのはいいものの…。


「うっ…ぜんぜん涙が…とまんっ…ない…」


それはそうだ。

先程彼女の浮気を知り、天津さえ魔法使いの仲間入りを果たしたのだ。

悲しみに溺れない訳もない。


何でこんなことになったのだろうか。

僕が一体何をしたって言うのだろうか。

そんな遅い後悔をしても意味はないと言うのに。


魔法使いになっても特になにも変わらない。

どうせなら…一つ魔法でも使ってみようか。


「もっと幸せな世界に行きたい」


そんな意味のない現実逃避を僕はする。

この世界は残酷すぎる、僕にはあまりにと生きづらい。


だから僕は願ったんだ。

違う世界に、幸せになれる世界に、行きたいって。


そこでずっと、生きていきたいって。


そして僕はいつの間にか眠りについていた。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄

「ん…?」


いつの間に寝てたんだろ…?


「はぁ…」


僕は一つ溜め息をついた。

さっさと起きよう、今日も会社に行かなきゃ。


そう言って体を起こすと、不思議な感覚に襲われた。


「…?」


まずは体の違和感だ、何だか体が軽い…と言うか小さい?

そしてこの視界に入る白く細いなにか、髪の毛?

僕はこんなに白髪は生えてないはずだが…。


そしてもう一つの違和感は、場所だ。

見渡すと、白いベッドの上に何故かいた。


ここは病院…?

どういう事だ…?


頭の中が疑問に埋め尽くされて行く。

そして、ふと下を見るとそこにはーー


「っ!?」


女の子がいた。

黒い髪の毛が丁寧に手入れされているのがわかる長く綺麗な髪、美しい寝顔、恐らく二十代ほどの『女の子』がいた。


その美しさは恋の盲目へと誘われるほどだろう。

だが、僕からしたら『女の子』と言う目線で見てしまう。


なんせ三十路に入ってしまった訳だからね。

この歳にもなると自制心と言うものは頑丈なものになって行く物なのだ。


けれど、本当に綺麗…誰なんだろ?


その時、僕の手は勝手に女の子の髪を添うように頭を撫でた。


なんか落ち着くなぁ…。


昨日浮気された三十路男が二十代女の子の頭を撫でる姿って…旗から見たらかなり絵面がヤバイ様な…。


「ん…?」


あ、やば、起こしちゃった…。


僕は名残惜しさを感じながら慌てて手を退かした。


すると、女の子はゆっくりと起き上がり可愛く目を擦るとこちらを見た。


「お、おはようございます」


僕はつい丁寧に頭を下げて朝のご挨拶。

朝起きて三十路の童貞男が目の前に居ても挨拶は大切だよ?


さて、相手の反応を見るにはこの顔を上げなきゃいけない訳で、さっ!顔を上げようか。


僕は叫ばれる覚悟を決めて顔を上げた。


そこには、みるみると涙を溜めている女の子の姿が。

はぁ…浮気された翌日は警察のご厄介って所か。


もういいや、さぁ好きなだけ叫びなさい。

そして助けを媚うがいい、僕はもう静かに待つだけさ。


僕は賢者タイム張りの顔をしてその声を待つ。


そしてーー


「しいいいいちゃあああああああん!!!」


「うぇ!?」


「しぃちゃんしぃちゃんしぃちゃんしぃちゃん!!もう心配したんだよ!?」


「ちょ!え!?」


叫ばれたは叫ばれたけど、何故か号泣しながら抱きつかれてしまった。


「あ!ごめんね抱きついちゃって!?気持ち悪かったよね!?すぐ離れるね!」


すると先程まで感じていた温もりが離れて行く。

いやどれだけ自分の事を卑下しているのさ…むしろこれだけ美人な子に抱きつかれておじちゃん嬉しいよ?むしろご褒美だよ?


てかそれよりもこの人は一体…


その時ーー


「いっつ!」


「しぃちゃん!?」


頭に釘が打たれたかの様な激痛に襲われた。

そして頭の中に何かが流れ込んで行く。


これは…誰かの記憶…?

僕のじゃない…?灰…原…灰原はいばら 時雨しぐれ…?それが僕の名前。


「ハッ!!」


その時、一瞬で痛みは去り、全てを理解した。


ここは…違う世界…僕の名前は、高坂拓斗ではなく、灰原時雨、十五歳…男…つまりこれは…


ー異世界転生?ー


「マジかよ…」


「しぃちゃん大丈夫なの!?まだ何処か痛むの!?」


そして、先程からずっと僕の心配をしてくれてる年下だと思ってたこの人って僕の…この世界、灰原時雨のーー


「母さん?」


「しぃ…ちゃん…今母さんって…」


「母さん、だよね?」


「…うん…うん!そうだよ!ママだよっ!」


すると、母さんはまたみるみると涙を浮かべて泣きながら僕を抱き締めた。

記憶の中の灰原時雨くんはなかなかに辛辣な子だったみたいで、母さんとは呼んであげて居なかった。


その反動のせいかこの喜びようなのであろう。


正直、この人が僕の母さんとはいくらなでも信じがたかったが故の再確認で一度呼んでみたが…これマジだ…こんな美人な人が一時の母て…。


そして、この世界…どうやら僕は、あべこべの世界に転生してしまったらしい。


「はは…マジか」


「しぃちゃ~ん♡」

執筆スピードが遅いくせにあべこべ系が書きたくなった作者を誰が攻められようか…俺は誰になんと言われようがあべこべ系を書きたかった!例えネタが尽きたとしても!!


てことでよろしくお願いします。

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