無力さ
無力な自分
静かに話しはじめた。
「まず、ご両親は......ここに運ばれた時には
すでに心肺停止の状態でした......助ける事が 出来ませんでした。」
深々と頭を下げてから、また話しはじめた。
「娘さんの方は、まだ意識が戻りません。いつ意識が戻るかは わかりません。ICU(集中治療室)でしばらく 過ごすことになります。面会の方も
10分、15分くらいしか できません。」
そう言って また、頭を深々と下げた。
「身内の方は 入院の手続きもあるので 詳しい話しを看護師の方から お話しますので お待ち下さい。」
「今、会うことは できますか?」
「ガラス越しなら 大丈夫です。ただ 面会の方は
身内の方のみに なります。婚約者の方は......すみません。」
なんで......僕は いったいなんなんだ......彩乃さん......僕に出来ることは 何もないの?......本当に......何もないの......
僕を 察してくれたのか 親類の方が
「志貴くん、今日は ありがとう。今は、私たちに 出来ることは 諦めないで 待つことだよ。今日のところは 帰って 体を休めてくれないか?
一般病棟に 移ったら 連絡するから......」
「......」
何も答える事が 出来なかった。頭だけ下げて 彩乃さんに会いに......いかなきゃ......頭の中は 彩乃さんで いっぱいだった。
ICUの前で 一呼吸 しっかりしなきゃ......彩乃さんが 辛くなる そんな事を思って ガラス越しに
彩乃さんを探す。
彩乃さんを見つけた瞬間......涙が溢れた......
彩乃さん......うっうう......何も出来なくて ごめんね......うっ......ヒクヒク......側にいたいよー......うう......あや...あやのさん ただ泣くことしか......できなかった......