エピソード2
子供達はそれぞれ成人して、結婚したり、遠方に就職したりしていた。
姑は、胃がんの手術などして、医者通いをしていたが、特別具合が悪いわけではなく、口の方も相変わらず達者だった。
舅の方が癌に冒された。その頃私は、学生時代の伝を辿って、パートに出ていた。
舅に恨みはなかったが、近所の小さな診療所にタクシーで通ってもらっていた。
入院設備も無い診療所で出される、高栄養のドリンク剤(とてもじゃないが飲めるものではない)を飲み、舅は身をもがくように臥せっていた。
夫には、姉がいたが仲が悪いうえに、夫婦仲も悪くとてもじゃないが、親を引き取るつもりは無い様子だった。
事態が急変したのは、姑の兄弟の子供が突然尋ねて来たせいだった。なるべく付き合いをさけ、疎遠にしていた筈なのに。
その人に舅の状態を見られた事を夫に話すと、大急ぎで舅を小さな個人病院に入院させた。
夫は、その人に頭があがらないのだ。
検査の為に、総合病院に移転させられた舅の病状は一気に悪くなっていった。
介護に通わねばならないだろう。が、私には天の助けがあった。
パートさきの社長が、「休まれたら困る。介護の為に休むのなら止めてもらうしかない。他の人をやとわなければならないから。そうしたら、又働きたいと言っても来て貰える保証は出来ない」と、家にやってきたのだ。
「そういう訳なんで、入院費とかローンもあるし、今仕事を続けるわけにはいかないんで」と、私は病院通いから逃げる事に成功した。




