エピソード1
他のブログで発表した作品です。
家のドビラ開くと、色んな物の匂いが入り混じっている。
悪臭と言っても良いような匂い。これは、長年の私の恨みが発しているのかも知れないと思った。
長男と嫁としてこの家に嫁いで着た。舅は無口な人だった。毒にも薬にもならないタイプ。
だから、嫌いではなかった。
姑は素直な人。ただ、その素直さが気に入らなかった。なんでも思った事を口に出さずには居られないタイプの人間。
「私は、悪気のない人間なんだよ。友達もみんな私の事を正直で裏がない人だって言うんだよ」
多少、自分の口が過ぎるのを分っていたのか、元気な頃は良くそう行っていた。
結婚当初、共働きで子供の世話は姑に頼らざるを得なかった。その頃の姑の口癖は。
「まったく、孫飼うなら犬飼えってのは、良く言ったもんだよね。昔の人は賢かったよ。孫の面倒なんてみるもんじゃない」
「うちの、嫁は会社では、よく貰い手が見つかって、嫁に行けたって驚かれたらしいよ。家の息子は貧乏くじを引いたんだよ」
「嫁の親は、障害者なんだよ。それで嫁も目立たないけど、少し腕の動きが悪いんだよ。」
「碌な親に育てられてないから、常識を知らなくて、とてもじゃないけど、他所様の前になんてだせない」
等々の言葉を、私や子供をふくめ、まわりじゅうに言っていた。
「悪気は無い」と言われても、言われている方は、それで済む筈は無い。
私が何もする必要も無く、子供達は、姑から離れて行った。




