第2章 episode2 ミノタウロス討伐戦
ミノタウロスに遭遇してから数分がたった。
あたりはすっかり夜になり月の光だけがアツト達とミノタウロスを照らしていた。
沈黙が広がる夜の大草原にミノタウロスの咆哮が轟く。
「ラ・フラム!」
ラクが魔法をミノタウロスめがけて打ち込んだ。
ミノタウロスは避けられずにそのまま直撃した。
「やったか?」
ラクは少し手応えがあったかのような表情で言った。
「グルルルル…」
黒煙が晴れ、目の前にいたのは無傷に近い状態のミノタウロスだった。
「嘘だろ。全く効いてねぇぞこいつ!」
ラクは恐怖と驚きで立ちすくんでいた。
ミノタウロスは標的をラク単体に切り替えた。
ラクのいる方向へ石の斧を振りかぶった。
「ラク何してんだ、逃げろ!まともに受けたら死ぬぞ!」
アツトが大声で叫ぶ。
だがラクは恐怖のあまり立ちすくんだままだった。
「グォォォォォォ」
ミノタウロスがラクに向かって斧を振り下ろした。
ものすごい音と突風が吹き荒れる。
「ラクーーーーー!!!!!」
アツトが叫ぶ。
ラクの体は空中へと放り出された。
ラクは50メートルほど吹き飛ばれ地面に落ちた。
アツトとアオイは急いでラクのもとへと駆け寄った。
「おい!ラク大丈夫か!?しっかりしろ!」
アツトがラクに声をかける。
ラクは顔からかなりの血が流れていた。
「アオイなんか治癒魔法はないか?」
アツトはアオイに尋ねた。
「応急処置程度ならできるよ!」
とアオイはアツトに言った。
「それじゃあ1つ頼みがある。」
とアツトはアオイに言った
「なに?」とアオイはアツトに聞き返した。
「アオイ、ラクの応急処置が終わったら逃げろ。」
アツトは真剣な表情で言った。
「アツトなに言ってんの?あなた死ぬわよ!?」
アオイは怒りを交えた声で言った。
「アオイ、お前には助けを呼んで貰いたい。王国に着いたら救援要請を出してお前は避難してろ。」
アツトは真剣な表情で話し続けた。
「そんなことしてたらあんたとラクは死ぬかもしれないんだよ?そしたら私はどうすればいいの?こんな急に異世界に飛ばされて、頼るあてもないのに!」
とアオイは泣きながら言った。
「確かに俺たちは死ぬかもしれない。だけどわざわざ3人揃って死ぬってのは駄目だと思う。ラクは気を失っていて戦えるのは俺一人。このまま3人でこいつとやり合うよりは俺を囮にして助けを呼んできてもらった方がいい。だがら頼む!アオイお前は逃げろ!」
アツトはアオイに必死に言った。
「わかった。アツトもし死んだら承知しないからね!」
アオイは泣きながら言った。
「おれはそう簡単には死なないから安心しろ!だがらお前は全力で助けを呼びに行け!」
アツトはニコッと笑いながら言った。
アオイは泣きながらその場から走り去った。
「さぁいくぞミノタウロス!助けが来ると信じて、その間時間を稼いでやる!」
アツトは大きな声で言いはなち、ミノタウロスへ突撃した。
「グォォォォォォ!」
ミノタウロスがアツトめがけて斧を振り下ろした。
アツトはそれを躱し、空中へと飛んだ。
「行くぜ!疾風切り!!」
アツトはそう叫びミノタウロスの頭上から剣を振り下ろした。
決まったと思った瞬間、アツトの体に斧がクリーンヒットした。
「うぐっ!なんでだ…いま躱したはずなのに!」
アツトはそのまま空中へと吹き飛ばされ、地面に落下した。
痛い、苦しい。いままで体感したことのない激痛が体に走る。息するたびに体に激痛が走る、体は動かせるはずもなく、アツトの意識も朦朧としていた。
「おれはここで死ぬのか。たいして時間稼げなかったな…かっこ悪ぃ。アオイは無事に逃げれたかな?ごめんな、俺たちはここまでみたいだ。」
とアツトは心の中で思った
目の前にミノタウロスが立ち尽くしていた。ミノタウロスは斧をアツトに向けて振りかぶった。
「すまないみんな。俺たちはなにもしてやれなかった。異世界きてまだそんなたってないのにもうゲームオーバーか。いままでの人生たいしてなんもしていなかったことを今更後悔している。こんなにあっけなく終わるのかおれの異世界生活は…」
アツトは覚悟を決め目を閉じた。
「グォォォォォォ!」
ミノタウロスがアツトに向かって斧を振り下ろした。
「そこまでだ!」
何者かがそういい、剣でミノタウロスの攻撃を止めた。
アツトは意識が朦朧とする中、目の前に立ちミノタウロスの攻撃を止めた人を見上げた。
「あんたは一体…?」
アツトはかすれ声で言った。
「話は後だ!まずはこの怪物を仕留める。」
と言い黒色で短髪の青年はミノタウロスに突撃していった。