第2章 episode1 平野に轟く咆哮
辺り一面に広がる平野地帯で3人は採集クエストをしていた。
「キノコ採りとかリアルでもやったことないわ」
と笑いながらアツトは言った。
「そんなこと言っても駆け出しの私たちがすぐにワールドコネクトへ目指しても途中で全滅になるだけだよ。」
とアオイはアツトに言った。
「僕はアツトの気持ちも少しは分かるな。こんな地味なクエストよりモンスター討伐したほうが冒険者らしさが出るよねー」
とラクが呑気な顔で言った。
彼らがビギナーズエリアへ突入してからすでに3週間がたっていた。
3週間の中で3人はそれぞれの役職の基本的な特技を習得していた。
アツトは先頭に立って敵を迎え撃つソードファイターと言う職業につき、基本剣技である火炎斬りと疾風斬りを習得した。
アオイは後衛で仲間を支援するヒーラーと言う職業につき、基本治癒魔法の体力回復魔法のヒールと状態異常回復魔法のプリフィケーションを取得した。
ラクは破壊力のある魔法で敵を倒す魔道士と言う職業につき、基本魔法である火の魔法ラ・フラムと氷の魔法コンジェラシオンを取得した。
未だにキョウスケとホノカの居場所は不明のままだが3人は3週間で中間ポイントのラガール王国にたどり着いていた。
これは駆け出し冒険者にしては速い方らしい。
彼らは駆け出し冒険者で主な収入源は採集クエストである。採集クエストはレベルも上がりかつ、お金も貰えるので駆け出し冒険者にとっては一石二鳥なクエストである。
「よっしゃあー。日も暮れてきたしそろそろ街に戻るか。」
とアツトが言った。
「そうだね。夜になるとここら辺でもモンスターが出てくるし、レベルの高い凶暴なモンスターがではじめてくるからね。」
とアオイも言った。
ここから街まではだいたい歩いて三十分程の距離で日暮れに出発すれば夜になる前には街に到着できる距離である。
「ギェェェェ!」
と大きな声でどこからか叫び声が聞こえた。
「この鳴き声はゴブリンか。でも夜は出現しないはずなのにおかしいぞ。」
とアツトは疑問に思いつつ言った。
「アツト後ろ!」
とアオイが大声でアツトに言った。
とっさにアツトが後ろを振り向くと3体のゴブリンが斧を持ってアツトに襲いかかってきていた。
「くそっ。間に合わない!」
とっさにアツトら剣を抜こうとしたが奇襲に反応ができなかった。
「ラ・フラム!!」
ラクが大声で叫ぶと手の平から炎が吹き出しゴブリンをまとめて焼き尽くした。
「ラクサンキュー!!マジで助かった。」
アツトはラクにお礼を言った。
「いいってことよ!とりあえず怪我がなくてよかった。」
ラクは安心した様子で言った。
「でも本当にこの時間にゴブリンが出るっておかしいね。しかもあの焦ってた様子からして住んでる場所からなにかに追われてるような感じだったね。」
と冷静な感じでアオイが話す。
「とりあえず危険な感じだから少し急ごう。」
とアツトは言った。
2人も同意し少し歩くペースをあげた。
街まであと少しの所でアツト達は無残な光景を目にした。
「なんだこれ…」
アツトは気分が悪そうな顔をして言った。
アツト達の目の前に広がっていたのはゴブリン達の死体だった。死体と言っても、首から上がないのや上半身だけだったり下半身だけだったり様々だった。
特にひどいのは何者かに捕食されたのか、内蔵や腸などが無残に食い散らかされてたのもあった。
「誰がこんな事を…」
アオイも吐く寸前の顔をして言った。
ズドン!
と背後から大きな足音が聞こえたと思い背後を振り向くとそこにはこのエリアの中盤では出現しないはずの怪物ミノタウロスがいた。
「なんでこんな所にミノタウロスが…」
アツトは恐怖でその場に立ち尽くしていた。
「逃げる時間もねぇ。ここは戦うしかねぇぞアツト!」
ラクはアツトに大きな声で言った。
「ラク何言ってるの!今の私達がかなうモンスターじゃないでしょ!ここは一旦逃げた方がいいって。」
アオイは恐怖で震えていた。
「逃げてもあのゴブリンのようになるだけだ。なら戦ってやられる方が数倍マシだ。勿論死なねぇけどな!」
ラクは恐怖を通り越して戦闘態勢に入っていた。
「やるしかねぇな。ラク!ミノタウロス倒すぞ!」
とラクにアツトは言った。
「あったりまえだ!ここで死ぬなんてごめんだ!俺らにはまだやることがあるからな!」
ラクはそう言ってミノタウロスの方へ走って行った。
アツトもそれに続いて行った。
ミノタウロス対駆け出し冒険者2人。誰がどう見ても勝てる見込みのない戦いだがキョウスケ達を見つけるために、そして元の世界に戻るためにもこんな所で死ぬわけにはいかないのである。
ガァァァァァ!
ミノタウロスの咆哮が平野に響き渡る。
ミノタウロスVS駆け出し冒険者の無謀な戦いの火蓋が切って落とされた。