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短編集

僕はただのアルバイト。

作者: 有限会社ホタテ

僕は大学生で、ただのコンビニのアルバイト。

週4くらいのペースでバイトのシフトにはいっている。

今日もバイトの真っ最中。

客が来れば接客をする。


「お会計、200円になります」

「あ? なんだって?」


このジジィは夕方の6時頃になったら必ず来る。

何時も同じ200円の缶ビールをかっていく。


そのくせにそのビールの値段を覚えておらず

「あ? なんだって?」と聞き返してくると。


そんなジジィに対しても僕は丁寧に

「失礼しました。200円になります」

と言う。


「あー200円ねゴメンね耳が遠くなっちゃってねぇ〜」


「いえいえ声が小さかった僕も悪かったです」

と口では言いつつも内心

酒を毎日買う金があるなら補聴器をつけろ

と思っていた。


「わしが悪いのにすまんの」


「ありがとうございました!」


今日もアルバイトが終わる。


次の日、また何時もの時間にジジィがやって来た。


しかし、今日は何時もとは違い酒と饅頭を買っていっ

た。


思わず僕は

「いつもビールだけなのに珍しいですね」

と聞いてしまった。


するとそのジジィは

「これ死んだばあさんの供え物でなー。

ばあさんこの饅頭が好きでな。

毎日買って帰るとなんで饅頭ばっかりなんだと

怒られそうなんでわしは一か月に一回だけ

饅頭を買って帰るんじゃよ」


と悲しげな顔をしていった。


コンビニのアルバイトをし始めてまだ間もない

僕はそんなことしらなかった。


「すいません。プライベートなことを聞いてしまって」


「いやいいんじゃ、もう3年になる。

涙なんて枯れ果てた」とジジィは言った。


「チョットまってくださいね」

俺はレジから抜け出し饅頭をもう一個レジ袋にいれ

てやった。


「僕からもおばあさんによろしくといってください。

たまには二つ持って帰ったからって怒らないでしょうし」


「いやぁ、悪いよにいちゃん」

ジジィは困った顔をしていた。


「いつも来ていただいてるお礼です」

僕は自分でも柄にもないことをしたと思った。


「ありがとう。あんた本当にいい人だ」

ジジィは深々と腰を折り礼をした。


「ありがとうございました!

またお越しくださいませ」

今日もバイトが終わる。


次のバイトの日いつものジジィはこなかった。

次の日もまた次の日も…


俺はあのジジィのことが気になった。

俺が饅頭をサービスしたから来にくくなったのか

と思った。


しかし、それはちがった。

ある日バイトの店長から一枚の封筒をもらった。



封筒の中には1万円と手紙が入っていた。


ーーーー

この前は饅頭をありがとう。

ばあさんが死んでから酒ばっか飲んでたせいか

入院することになってねぇ。

あんたは私がどんなに耳が遠くても親切に

してくれた。

ありがとう。ありがとう。

ーーーー


と書かれていた。


俺は封筒に書いてある病院に直ぐさま向かった。


しかし、ジジィはベットの上でよこになり

目をつむり人工呼吸器をつけられ

眠っていた。


俺はそんなジジィをみて呆然とした。

医者の話だと肝臓ガンらしい。


酒の飲み過ぎだくそジジィ


数日後ジジィは息を引き取った…







ジジィの墓に俺は大量の饅頭と一本だけ缶ビールを

供えた。


ジジィはまた悪いというかもしれない

だがその饅頭と酒はジジィから貰った1万円で買った

ものだ。


金を払って

商品を忘れるなんてとんだくそジジィだ。


僕はただのアルバイト

ただ客が忘れた商品を届けただけに過ぎない。



「あの世では飲みすぎたらいけませんよ」

僕はそう呟いた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 涙が出てきました。仕事で疲れてる。休日出勤や残業が重なってて。オレもアルバイトです。40ですけど。 くそぅ。普段なら泣かないんだけどなー。疲れてる時、こういう優しい小説を読むとつい涙が出て…
2016/08/23 20:03 退会済み
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