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09.出会い

 三年後。

 私が起こした事業は大成功を収めあっという間にこの辺一帯を治める巨大な力になった。

 

 それをどうやって成し遂げたかと言うと私は最初の借金を返した後、その資金を元手に前世の知識を使って試行錯誤した末に宿と食事だけではなく食事の材料となる養鶏場・野菜工場・乳牛工場を魔法で作って、安くておいしいものを大量に生産できる仕組みを作り上げた。


 おかげで港町でありながら内陸から輸入しなければならなかったものが全てここで賄えるようになった。


 それ加え大量に作ったものを各地に支店を作ってこの国の内陸にも販路を広げまたその支店で人を雇うことである意味この国の一地方都市の領主クラスの財産を三年で軽く超えるくらいは稼ぎ出した。


 もちろんそれはいい意味でも悪い意味でも私の存在を世間に強く印象づけることになった。


 お陰で今年もこの港町一体を治める領主館から私宛に招待状が届いた。


「御主人様どうしますか?」

 黒い紳士服に身を包んだ元副船長のスティーヴンスが執務机で事務仕事をしている私に話しかけた。

「宛先はどうなっているの?」

 私は机の上で書類を確認しながら話しかけてきたスティーヴンスに問いかけた。


「一応商会宛になっています。」

 スティーヴンスはさらに自分が目を通した書類を私の机に山なりになっている書類にさらに重ねながら答えた。


「ならスティーヴンスが代理で問題ないでしょ。」

 私は積み重なる書類に大きな溜息をつきながらうんざり顔でこちらを見ている彼にその仕事を放り投げた。


「またですか。」

 そう私が答えるのを知っていたはずのスティーヴンスが嫌そうな顔でこちらを見た。

 そしてさらに私の書類の山を増やしながら今度は自分の執務机に戻るとハンコを手に持ってペッタンペッタンと押し始めた。


「あなたも代表の一人なんですからたまには出席した方がいいのではないですか?」


「この忙しいのにパーティーで踊っていられるほど暇じゃないわ。」

 私はさらに増えた書類の山を減らすべく目の前の書類に判子を押すと果敢に次の書類に取り組んだ。


「筆頭は私じゃないんですけどねぇ。」

 スティーヴンスがうんざり顔でこちらを見ながら手元では書類に判を押していた。


「そこには筆頭と書いてないでしょ?」

 私の指摘にスティーヴンスが何ごとか呟いた。


 あいつら去年私がそれを指摘したのにめんどくさがって内容を変えなかったな。


「書いてありませんね。」

 スティーヴンスは忌々しげに文面を読み直している。


「ならよろしく。着て行く服がなければ新調してちょうだい。」


「着て行く服はありますが連れて行く相手がいません。」

 そこについ最近雇った地味顔のアルマがお茶を持って現れた。


 私はアルマに特別手当の話をした。


「特別手当ですか?」

 アルマはキョトンとした表情で聞き返してきた。

 どうやらそんな彼女の仕草がスティーヴンスの萌えを刺激したらしくうるうるした目線で彼女を見つめていた。


「そっアルマに病気のお母さんがいることはわかっているけどここにいるスティーヴンスと一緒に夕方領主館まで行ってここの商品を宣伝するための営業をしてきてほしいんだけど。」


「大変うれしいお誘いですが夜は母の看病をしないといけませんので申し訳ありませんが行けませ・・・。」


「それなら大丈夫。六花と八郎をあなたが帰って来るまでお母さんと一緒に留守番させるから。」


「まあそんな良いのでしょうか?」


「仕事だからねこれも。どう?」


「それでしたらもちろん行かせてください。せーいっぱい頑張ってここで開発した新化粧品の宣伝をしてきます。」

 アルマは両手を組むと顔輝かせた。


「じゃ詳細はマカと打ち合わせして頂戴。」


「はい。」

 アルマが去ていく後ろ姿をスティーヴンスは彼女の背中に穴が空くほど見ていた。


「よかったわね。」

 スティーヴンスが真っ赤な顔で振り返った。


「いつ気がついたんですか?」

 スティーヴンスのハンコを持つ手が止まった。


「彼女を雇って直ぐよ。でも昔みたいに何も考えずに手を出すようならこんなことはしなかったわ。本気見たいね今回は。」


「そうです。本気です。」

 スティーヴンスはまた力強くハンコを押し始めた。


「まっこの機会に上手くやりなさい。」

 私は書類に判子を押すと済みの箱にそれを放り込んだ。


「言動がおばさん化してますよ。」

 スティーヴンスも押し終わった書類を済みの箱に入れると立ち上がった。


「よけいなお世話よ。」

 私は立ち上がったスティーヴンスに判子が押されていない書類を押し付けた。

「後は宜しく。」


「嫌がらせですか?」

 スティーヴンスは持たされた書類を机に置いた。


「幸せ者は人の倍は働かなくっちゃ。」

 私はそう言うと事務所から外に出ると郊外にある私が最初に始めた宿屋の厨房に向かった。

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