64.再会
真偽裁判がおばあ様たち側が勝利で終わりホッとしたのもあって、私は一郎たちと一花たちを連れて一旦マイルド国の王宮を後にする為店に残っていた残骸を片付けに向かった。
するとどこからかひょっこりとナガイとリョウが店に現れた。
「二人ともどこに行ってたのよ。」
一花が箒を手に二人に迫った。
二人はビックリした顔で一花を見ている。
どうやらここで戦争があったことも気づいていなかったようだ。
そんな二人を連れて店の片づけが終わった私たちはストロング国に戻った。
道中ナイガとリョウは一花たちにどこに行っていたかと問い詰められていた。
二人はどうやら山にキノコ採りに行っていたようでそれを書いた紙を店に残していたようなのだがあまりにも汚なかった為ごみと間違われて捨てられたようだ。
もっともキノコ取りに夢中になっていたおかげで王都の騒乱に巻き込まれなかったのだからある意味強運なのかもしれない。
そうとはいえ今回は一歩間違っていれば死んでいたかも知れないので今後のことも考えて説教してやろうと思っていたが反省した彼らは持って帰ってきたキノコで旅の途中キノコづくしの料理を私たちに振る舞ってくれた。
かなりのキノコ好きだった私は結局それらのこともあって彼らに説教をするこことなく終わってしまった。
そんな事をしながらもストロング国に戻って王都の店と港町にある店で忙しく働いているといきなり戦後処理で忙しいはずのダン王子が私を尋ねて来た。
「えっ銀獅子様に呼ばれている?」
ダン王子にそう言われ私は彼に連れられて砂漠近くの銀獅子様の別荘に向かった。
熱い砂漠風が吹く中を馬で走り続けクタクタになった頃やっと別荘に到着した。
塀を潜って中に入ると白い豪奢な建物が現れた。
圧倒されながらも屋敷に足を踏み入れた。
恐る恐る屋敷前にいた黒服の執事に案内され奥の部屋に向かった。
扉が開けられ中に入るとそこには銀獅子様ではなく昔より少しばかり年をめされた銀髪の夫人が立っていた。
この間と同じ白い鎧を着ていて腰には細身の剣下がさがっていた。
「久しぶりだね、リビア。」
「シ・・・シルビア・・・おば・・・あさま?」
涙で前が見えない私をおばあ様が黙って抱きしめてくれた。
「あ・・・会えるなんて・・・なんて・・・。」
二人ともただただ抱擁し合った。
しばらく抱き締め合ってからやっと手を取り合って傍にあったソファ-に腰を降ろした。
おばあ様は何も言わず私の黒い髪を撫でてくれた。
もう銀色ではなくなった今、昔の名は名乗れない。
下手に公の場で名乗れば偽物と揶揄されるだろう。
それがわかっているからかそれ以外の理由があるのか。
おばあ様も何も言わずただ髪を撫でてくれた。
私はそんなおばあ様にどうしても聞きたかったことを口にした。
「なんであんな裁判をやったんですか?」
本当にあれは寿命が縮むような思いがした。
「私のけじめよ。本当ならあの戦争の時マイルド国の王家を断罪するべきだったのにそうしなかった私の罪だからよ。」
「おばあ様?」
「前の大戦の時その機会はあったの。でも王妃と従妹であり親友だった私は自分がいるからまだ大丈夫だと思って彼らが戦争を起こした罪を許してしまった。それがまわり回って結局自分に返ってきただけ。だからもうそんなことがないようにしたかったの。」
たいぶたった頃横に控えていた執事がお茶とお菓子をそっと出してくれた。
「いただきましょう。」
「はい。」
二人は何も言わず。
ただお互いを見つめながらお互いの無事を喜び合ってからそこで別れた。
部屋を出るとそこにはダン王子が待っていた。
「いいのか?」
いいのか?
名乗りを挙げずに。
それとも留まらずにか。
今は何も入らない。
ただ単に自分の親族が生きていて自分がいるってことをわかってくれただけで嬉しい。
私は何も言わずにその場を後にした。
同じ頃、あばあ様がいる部屋に入ってきた銀獅子様もダン王子と同じことを聞いていた。
「いいのか?」
孫と世間的に認めないで。
それともここに留めないで。
いいえ、今は何もいらないわ。
孫が生きていたことが分かったのだからそれだけで。
「それにあの子がダン王子とまとまればすぐにまた私の孫になるわ。」
銀獅子様が嬉しそうに破顔した。
「そうだな。確かに。我が孫には頑張ってもらおう。」
二人はお互いに顔を見合わせて笑いあった。
今度は心の底から。
クッシュン。
「どうしたんですが王子。風邪ですか?」
シロを無事に店まで送って城に戻って来たダン王子がくしゃみしながら呟いた。
「くそっ誰か噂してやがる。じじぃか?」
喚く王子を二人の友が飽きれた顔で見た。
「王子そんなこと言うとまた銀獅子様に無理難題を吹っ掛けられますよ。」
「さすがにそれはもうないだろ。」
後日ダン王子は銀獅子様に呼び出されて”一週間以内にシロもといリビア姫をさっさと嫁にしろ”と剣を突きつけられて催促された。
それもあってか奮闘したヘタレ王子ことダン王子はそれから何度も王都のお店に足を運んで積極的にアプローチをはじめた。
とは言え彼の気持ちが伝われまではいばらの道がまだまだ続く。




