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06.開店準備

 私はザワザワした音で目を覚ました。

 どうやらあれからそのまま爆睡してしまったようだ。

 慌てて畳から顔を上げて立ち上がると障子を開けて廊下に出た。

 そしてすぐに玄関で靴を履くてガラスで作った戸を開けた。


 そこには船長と副船長に頼んで来てもらったここで働いてくれる予定の10人がズラリと並んでいた。


 全員中年のおばさんだ。


 私は我に返ると早速そこにいた中年のおばさん一人一人と雇用契約を結んだ。

 ほとんどがこちらの世界では高齢者だが死ぬ間際に思い出した前世ではまだ40代前半から後半の人たちがほとんどだ。


 そんな女性の中で一番の年配者がおずおずと私に質問してきた。

「あのー御主人様。私どもはそのー体力的に重い荷物を運んだりなどの重労働は出来ないのですが?」


 もちろんこれから私が始めようとしている事業には力仕事は必要不可欠だが、それはもうここに建物を立てる前に解決積みだ。


「ああ、そういえばまだ紹介していなかったわね。」

 私はそう言った後砂漠で自分が死の間際に思い出した前世の知識と魔法を組み合わせて作ったものを呼び寄せた。

一郎いちろう次郎じろう三郎さぶろう四郎しろう五郎ごろう六郎ろくろう七郎しちろう八郎はちろう九朗くろう十郎じゅうろう。こっち来て。」


 私の呼びかけに奥から犬耳の見目麗しい10人の美少年が出てきた。


 見ると私が雇った十人のおばちゃんたちが全員あんぐりと口を開いたまま固まっていた。


 あら思った以上にすごい反応ね。

 これは少しやり過ぎたかしら。


 私が心配そうに見ているとあんぐりと口を開けたおばちゃんたちがやっと正気に返ったようで先程私に質問してきた最年長のおばちゃんがまた全員を代表して質問してきた。

「御主人様。彼らは一体?」


「あっこれ。私の使い魔。」


「はぁー使い魔ですか?しかも10体!」


「ええでもそうね。ちょっと待ってまだ紹介してなかったわね。一花いちか二花にいか三花みっか四花しいか五花いつか六花ろっか七花ななか八花やあか九花くうか十花とうか掃除を中断してこっちに来なさい。」

 私の呼びかけに可愛い声で返事があると猫耳の美少女が日本の和服を着て玄関に現れた。


「こ・・・これは・・・御主人様?」


「えっもちろん。これも私の使い魔よ。」


 本当は使い魔ではなく私が嵌められていた魔力封じの腕輪を外した時に使った漢字を魔力生成の時に数十文字体の中に練り込んで作成したある意味彼らは魔道具なのだ。


 しかし魔道具と言ってしまうといろいろ不都合が生じる。

 この国では優秀な魔道具はストロング国で管理されてしまう。


 どこが優秀なのかというと彼らは私が定期的に魔力を供給しなくても勝手に練り込まれた魔力と漢字の意味に従いその意味の通りの動きをして私が下した命令を忠実にこなすのだ。


 自立型の魔道具などはまだこの世界にないので知れ渡れば取り上げられてしまうだろう。


 それよりは実際は全然違う原理で動いているものだが使い魔と説明すれば使い魔はそれを生み出したものに所有権が認められるのでこちらの方が問題がない。


 だから今現在の魔法でできる一番近い形として私は自分が作った魔道具を使い魔として紹介した。


 しかしながら今はまだ練り込まれた漢字に即した初歩の動きしかできず単純作業以外の人と人が目と目で感情を読み合うような複雑なやり取りはまだ出来ない。


 そこでその複雑な感情面を担う仕事を新たに雇った中年のおばちゃんたちに任せながら彼らに教育してほしいという理由を話した。


「あのーつまり接客の仕方を教えろと・・・。」

 最年長の中年のおばちゃんがチラチラと犬耳美少年を気にしながら質問してきた。


「ええその通りよ。」

 私が素直に頷くと中年のおばちゃんたちの目が一斉に動いた。

 それはまさに獲物をねらう狩人のようだ。


「どの子に教えてもいいんですよ?」

 今度は違う中年のおばちゃんが手をなぜか固く握り締め確認をとってきた。


「問題ないわ。ただし一人が付きっきりで教えるんじゃなく順番を組むのでそれに従ってやってもらうわ。」


 おばちゃんたちが一斉に力強く頷いた。


「仕事開始は一週間後よ。それまでにここの宿でのやり方を覚えてもらうわ。もちろんそれを教えるのは私よ。あっそれと皆さんの宿舎はここの山側に建てあるから好きな部屋を使ってちょうだい。」


 ここまで話してやっと私が20体もの使い魔を紹介したお陰で疑心暗鬼になっていた中年のおばちゃんたちもなんとか納得してくれた。

 私は自分の魔道具もとい使い魔の一郎いちろうに中年のおばちゃんたちを使用人用の宿舎に案内するように言いつけた。

 それを聞いたおばちゃんたちは満面に笑みを浮かべながら使用人用の宿舎に荷物を置きにいった。


「「「あのー御主人様?」」」

 なぜか不安そうな顔の次郎じろう三郎さぶろうが私を見ながらもじもじしている。


「なにか不都合があるの?」

 私の問いかけに二人は漠然と不安を口にした。


 彼らの中に練り込んだ心のせいだろう。

 ちょっと心配になったもののなにかあれば私に相談するように言うと次の仕事をこなすべく犬耳美少年たちは去っていった。


「さあ私たちは一週間後に外の通路で販売するお土産と観光用の食事それに宿泊客への豪華料理を研究するわよ。」


「「「「「「「「「「はい。」」」」」」」」」」


 猫耳美少女たちが一斉に鈴を鳴らしたような声で返事をした。

 私は日が暮れるまでその日は食事の研究をして過ごした。

 ちなみに次の日より午前中は雇った中年のおばちゃんたちの指導をし午後は料理の研究に費やした。


 そして一週間後に無事この世界で初めての料理宿泊それに遊びを兼ねた施設を開店させた。

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