56.一郎、襲われる!
ふーう。
一郎は魔道具を懐に仕舞った。
なんとか一花たちに内容を聞かれずに御主人様への報告が終わった。
内心は彼女たち特に一花にこのことを内緒にしているのが気になっているが彼女のことだ。
この話を聞かせれば御主人様思いの彼女が危険を顧みず突っ走ることが目に見える。
そしてきっと危険なことをしようとするに決まっている。
そんなことになれば彼女を心配するあまり俺の心臓が止まる。
そういえば今日も張り切り過ぎてあんな酔っ払いに絡まれて体を触らせていたな。
思わず御主人様に頼まれたことがあるのにその酔っ払いをギタギタのバラバラにしてこの国を追放されてもいいような気持ちになってしまった。
本当に一花は自分をわかっていない。
いくら今は男になっているからといってあんな男に絡まれるなんて隙があり過ぎる。
一郎はそんなことを考えながら先に行った次郎三郎に続いて衣裳部屋を出た。
その瞬間目の前に現れた一花にドンと体を押されもとの部屋に押し戻されていた。
「おい一花!」
慌てて彼女を押し戻そうとするがなぜかすぐに外からドアを締められた。
パッタン。
一郎は慌てて一花を押しのけて出ようとしたが彼女は何を思ったのか指に嵌めていた指輪をするりと外した。
ポンと言う軽い音と共に裸の一花が目の前に現れた。
「・・・。」
一郎は何かを言おうとしたが声にならず唖然と彼女を見つめた。
彼女は固まった一郎に近づくとそのまま彼の首に腕を回してそのままギュッと抱き付いた。
一郎の胸に柔らかーい一花の体が当たった。
ポヨーン。
ポヨン?
えっポヨンって何?
思わず抱き付かれた彼女の体をまじまじと見つめた。
その後彼の思考は真っ白になった。
気がついたら一郎は本能のまま彼女の柔らかい唇を自分の唇で塞いでいた。
あっアーン。
彼女の甘い声が耳朶をくすぐる。
もう止まらなかった。
一郎は一花を抱きしめながら彼女に問われるままいつの間にかすべてを話していた。
「「一郎、大丈夫か?」」
扉の外では先に部屋を出た次郎と三郎が二花と三花に邪魔されながらも彼を心配して叫んでいた。
しかし、二人の叫びはドアの中から聞こえてくる喘ぎ声にだんだんと弱弱しく小さなものになった。
「「いち・・・ろ・・・。」」
ご主人様、申し訳ありません。
一花に負けました。
一郎は心の中で懺悔した。
チーン!
次郎と三郎は心の中で思った。
音が外に漏れないように魔道具を発動させろ!
そしてリア充は爆発しろ!
四人は顔を見合わせて溜息を吐いた後絶え間なく鳴り響く艶めいた声にほかの部屋から防音結界が張れる魔道具を持ってくるとそれを発動させた。




