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50.黒いモヤ、靄が蠢く!後半

まだまだ、虫、注意報が発令中です。苦手な方は、退避して下さい!

 私が馬車の中でパニックになっている最中に馬車の外にいた九朗と十郎も冷や汗を流していた。

 何度か馬上で後方に弓矢を射かけたりしているが弓自体を噛み砕いているようで効果がない。


 それにもし効果があってもあの数では多すぎてどうにもならないだろう。


 それどころかこの速さで走っていても後方の大軍はどんどんとこっちに近づいて来ていた。


 何匹か追いついた奴らは九朗や十郎の手足に噛みついていた。

 二人は剣で斬り捨てながらもう片方の手で虫を掴み握りつぶした。


 しかし数が増えてきてどうにもならなくなってきていた。


 馬車の中にいた私は虫に噛みつかれている二人を見てハッとして手を固く握ると決心した。

 このままではどの道奴らに噛みつかれて下手をすれば・・・。


 うわーん、泣けそう。

 ダメよ。

 ダメダメダメダメ。

 今は考えちゃダメ。


 時間を稼いだからと言ってどうにかなるとは思えないけど何もやらないよりはましなはずよ。


 私は息を吐いて肩の力を抜くと手元で”氷”という漢字を描いた魔方陣を展開すると想像力を広げながら白い雪の結晶を思い浮かべた。

 目の前が雪の結晶で真っ白になった瞬間にそれをシールドのようにして周囲に展開した。


 同時に御者席に座っている八郎にそのまま真っ直ぐ進むように指示を出す。

 八郎は頷いてそのまま馬に鞭打って馬車を走らせた。


 私は周囲に雪のシールドを張りながら見えなくなった前方を確認するために探知魔法でシールドの外の様子を探りながら方向を指示していく。


 目の前に国境の砦が見えてきた。

 慌てふためくように動く人々が感じられるが今は彼らを助ける手段がない。


 私は八郎にそのまま走らせるように再度指示を出した。

 私たちが駆け抜けた後数十人の気配が後方で消えていったが私は黙ってそれを受け入れた。


 ここで彼らを助けようとすれば自分たちも助からない。

 私は何も考えずに砂漠に向かって馬車を走らせるように八郎に指示を出し続けた。


 そのまま国境の砦を走り抜けていくがしつこいというかなんというか。

 奴らはまだ追ってきていた。


 私の莫大な魔力を持ってしてもさすがに段々と魔力が・・・。


 まずい。

 なんでまだ諦めないの。


 さすがに疲れのせいか私の魔力も尽き始めシールドが薄くなってきた。


 奴らはそれにつけこむようにさらにシールドにぶつかったり噛り付いてくる。


 不味い不味い不味い。

 すっごく不味い。


 私が焦り感じ始めた頃前方から何とも懐かしい声が頭に響いて来た。


 ”おい、そのままこっちに来いシロ。”

 ”師匠もう少しですわ。”


 えっなんでここでダンとヴォイの声が聞こえるの?

 私はプチパニックになりながらも彼らの声が聞こえた方に馬車の進路をかえさせた。


 ”よしいいぞ。合図したら馬車から飛び降りてすぐに離れてシールドも解除しろ。”

 なんとも無理難題を言ってくれる。


 暴走状態の馬車から飛び降りて尚且つ離れろだなんて。


 私は心の中で悪態をつきながら御者席にいる八郎と両脇にいる九朗と十郎に私が飛び降りたらすぐに馬車を離れるように命令した。


 三人が頷いた。


 私もすぐに飛び降りられるように馬車の扉を開けた。


 ”いまだ”

 ダンの声に私は魔法を使って体を浮かして馬車から離れると周囲に張ったシールドを解除した。


 その途端に黒い虫の塊と透明な液が私たちに降り注いだ。


 うそー虫。

 イヤー。


 私の叫び声とともに虫がボタボタと体に降り注いだ。


 喰われ・・・。

 喰われるぅー。


 私は自分の体に食いつく虫の感触を覚悟した。


 あっ・・・。

 あれ、喰われない?


 私は行き成り振って来た液体でびっしょ濡れになりながらも立ち上がった。

 立ち上がると体に降りかかった虫がボタボタと下に落ちた。


 周囲を見ると降り注いだ液体を被った虫の死骸がそこらじゅうに広がっていた。


 ハッとして八郎九朗それに十郎を捜すと彼らは鼻を抑えながら地面に蹲っていた。


 鼻・・・!


 ツーン!


 意識した途端、物凄いお酢の匂いがそこらじゅうどころか自分の体からも立ち上った。

「なんなのこの匂いは。」

 慌てて自分の鼻をつまむが私でこれだけ匂うのだ彼らが蹲るのも頷ける。


 私が鼻を抑えながら近づいてきた人物に目線を向けた。

 そこには自分と同じようにお酢臭い二人が立っていた。

 一人は八郎たちに駆け寄り一人は私に向かってきた。


「大丈夫か?怪我はないか?」

 ダンが心配そうに近づくと私の全身に手を這わす。


 その手を這わしているダンからもお酢のきつい匂いが漂ってきた。


 一国の王子がお酢に塗れて心配そうに自分を見ている姿に私は何だが笑いが込み上げてきた。


 私の笑い声を聞いた一国の王子は憤慨したようで心配したのに笑うとは何事かとブツブツ言い始めた。


 言ってることは正しいのだがお酢まみれの姿では滑稽なだけだった。

 私は何とか笑いを堪えて助けてくれたお礼を言うと少し機嫌を直した王子をそこに置いて八郎たちを手当しているヴォイを手伝いに向かった。

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