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48.取り敢えず、実験成功で問題解決。

 さあて、やるか!


 私はスパイさん達や一郎たちそして一花たちが見守る中改装が終わった三階の奥の部屋で腕まくりをしてポキポキと指を鳴らすとアンティークなタンスの前に立った。


 全員が固唾を飲んで見守る中アンティークなタンスの扉を開けるとその中につり下げた魔道具に魔力を送る。


 魔道具は私の魔力を受けて淡い色に光るといきなり輪になった魔道具の真ん中に穴が空いた。


 全員がタンスに中に掛けられた魔道具を見つめている。


 さ・て・と。


 私は懐からおもむろに前世の携帯電話を模した魔道具を出すと六花を思い出しながらその魔道具に触れた。


 魔道具が何度も何度も振動する。


 少しすると持っていた魔道具から六花の声が聞こえた。


「なんでいきなりこれ振動するの?」


 はぁー。

 あの

 一応預ける前に何度も説明したんだけど憶えてないわけか。


 私は一瞬何か言おうとしたが諦めて六花に命令した。

「六花今すぐ二階にある私の寝室に行ってタンスの扉を開けなさい。」


「えっなんでこれから御主人様の声がするの?二階のタンス?へっ???」


「六花、早く行きなさい!」

 私の命令に疑問符をまき散らしながらも六花は階段を上がっているようだ。


 途中四花と五花の声が聞こえて彼女たちも一緒に部屋に入ったようだ。


 パタンと言う音がしてタンスの扉が開いた音がした後叫び声が上がる。


「「「なにこれ?」」」


 うん、何これだけどやって貰わないと。

 私は気を引き締めて六花に命令した。

「六花部屋の中にあるものをその開いた空間に放り込んで頂戴。」


 向こうの部屋の声が聞こえた。

「えっなんでこれから御主人様の声が聞こえるの?」

 五花の声が響いてくる。


 その途端こっちにある魔道具から枕が飛び出した。


 ヨシ!


 私は飛び出した枕を確認すると魔道具越しに六花に話しかけた。


「六花こっちから今その枕を投げ返すから受け取りなさい。」

 私が魔道具に叫んだ途端隣にいた一花が枕を拾って魔道具の真ん中に投げつけた。


 枕が魔道具の中に吸い込まれて消えた。


「「キャー枕が飛んできた。」」

 四花と五花の声が手に持っている魔道具から聞こえてきた。


 さて次は本番よ。


 私は六花たちにそっち側から野菜や牛乳などの生鮮食料品をその魔道具の中に入れるように指示した。

 それといきなり魔道具から牛乳や小麦粉なんかが飛び出してこないように入れる前にこちらに声をかけるようにいった。


「まずは軽くて壊れないものから入れて頂戴。」

 私の指示に小麦を入れると声がかかり魔道具から小麦粉が出てきた。

 今度は二花が受けとった。


 次に卵だ。

 これも二花が受け取る。


 次は牛乳。

 本当は箱で入れられるが念のため一本一本別々にゆっくりと魔道具の中に入れてもらった。


 こっち側に一本一本出てきたのを受け取った。

 どうやら向こう側から入れてこっち側に出てくるのはほぼ同時のようだ。


 よしよし。

 受け取ったものを見る限りでは問題なさそうね。


 一応後で持って来た分析器で確認しておこう。


 予定していたものの実験が終わったので六花たちに明日用意してほしいものを告げると手に持っていた魔道具を切ってタンスの中につり下げられた魔道具にも魔力を送るのを止めた。


 私が満足顔で振り返ると蒼白になったスパイさん達がそこにいた。


 あれなんで?


「そ・・・そっ・それは何なんですか?」

 つっかえつっかえマッツが私に質問してきた。


「これ?」

 私はタンスの中の魔道具を指差した。


「それともこれ?」

 私は手に持っていた魔道具を持ち上げて見せた。


「両方です。」

 マッツの隣で我に返った赤茶色の髪の細マッチョ青年であるスッパが気を取り直して質問してきた。


「えっとこっちにかかっている魔道具がミスリルで作成した”空間と空間を繋げる魔道具”でこっちの手に持っているのが会話を振動で伝える魔道具よ。」

 私の説明に他のスパイさん達はさらに落胆したようだ。


「ですからなんでそんなものがここにあるんですか?」


「えっ自分で作ったからだけど?」

 私は彼らが何を言いたいかまったくわからなかった。


 見かねた一郎が間に入ってスパイさん達に声をかけた。

「マッツ様はこの魔道具で何がしたいんですか?」


「この間も言ったがマッツでいい。俺達はあの魔道具で王都にいる宰相様と連絡を取りたいんだ。」


 なるほど彼らの言いたいことはわかるけど・・・。

 うーんどうしようか。


 明日の実験でハッキリすると思うけど私は推察を話した。

「まだ実験してないけどマッツが考えている封印魔法を施した手紙を送ろうとしているなら出来ないと思うわ。」


「なんでですか?」

 私に暗に否定され怒った顔で聞いてくる彼に明日の夜に行う実験で他愛ない内容の手紙に封印魔法を施して六花に送ればわかると説明した。


 翌日昨日と同じような実験の末私の推測の通り”空間と空間を繋げる魔道具”を使って届けた手紙には封印魔法がかかっていなかった。


 ちなみにその時行った生き物での空間転移は私の予想に反した結果に終わった。

 私の想像だと向こうで生きていた鳥がこっち側に来た時にもそのままだと仮定していたが結果は原型も留めないひき肉になってしまった。


 他にネズミや昆虫でも試したが命があるものは全てこちら側に出てきた時原型を留めていなかった。


 それに対してすでに肉の塊になったものはそのままの姿でこちら側に出てきた。


 どうやら”空間と空間を繋げる魔道具”では生きているものや魔法を帯びているものは転送できないようだ。


 うーん、当初の予定とは違うこともあったがこれで懸念事項であった牛乳とアルコールは解決できそうだ。


 私は取り敢えずマイルド国での出店の目途を立てるとおおよその指示を残して一旦ストロング国に帰ることにした。

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