43.祖国の現状
こんな所にどうやって出店しろって言うの!
私は思わず机をバンと叩いて叫ぶと立ち上がった。
一花たちはいきなり私が立ち上がったのでびっくりして目を白黒させていた。
私はそんな彼女たちの様子も目に入らずイライラと宿のテーブルが置いてある空間を考えごとをしながらグルグルと回った。
歩きながらも自分に何度も言い聞かした。
まずは落ち着くのよ。
さあ息を吐いて吸って吐いて吸って・・・。
少し落ち着いてくると何度も心の中で大丈夫と自分に言い聞かせた。
そうしながらグルグルと歩いて頭を整理する。
出店する時に必要な材料はストロング国から持って来ているから一週間は持つ。
だがら短期的な材料は問題ない。
後は料理する上でストロング国と違っていることは宿屋の主人の情報だとマイルド国では魔法エネルギーが一定供給されずなんでか突然ブチッと切れるそうだ。
これも念の為に持ってきた水晶エネルギ-が一週間分はあるのでそれを充電しながら使えば問題ないだろう。
でも今までは巨大な魔法石で豊富にエネルギーを作っていたはずなのにどうなっているんだろうか?
出店状況が落ち着いたら一郎たちにそこは調べてもうおう。
でっ最も問題なのは牛乳だ。
他のものは代替の食材を捜せばなんとかなりそうだけど・・・。
昨日聞いた一花たちの話では値段が高い所を除外すれば鮮度的には問題ないと言っていた。
というころは牛乳をなんとかすればいいわけだ。
例えば牛乳をストロング国から輸入する?
でも毎日になるとやはり量とその度に通関を通すことになるから国境で税金がかかることになってそこが大問題になる。
私は悩んだすえに結論が出せず翌日もう一度市場を調査することにした。
翌朝すぐに一花たち三人と次郎三郎の二人を護衛に連れて王都の朝市に出かけた。
昔よりは寂れているようだが人はそこそこいてにぎわってはいた。
私たちは通りを歩きながら店に並ぶ食材を一点一点じっくりと吟味した。
歩きながらもどうしてもチラチラと目につくものがあった。
このマークは何なのだろうか。
安い食材が置かれている箱や包装紙には必ず△マークが描かれていた。
思わず店の店主にそのマークの意味を聞くと
「さっきから気になっているんだけどそのマークは何なの?」
「ああこれかい。これは隣国の”中の国”から輸入されたものについてるんだよ。」
”中の国”ですって。
なんであの国から食料を輸入しているの?
どういうわけで。
私は思わず店主の洋服をワシッと掴むと彼の首を締め上げた。
「ちょちょっとく・・・苦しい。はな・・・離してくれ。」
「な・・・なんで”中の国”のものなんか輸入しているの!」
次郎が店主を締め上げている私の手を抑えた。
店主は締め上げられた首を触りながらゴホゴホ言いながらも説明してくれた。
「これも商売なんだ。一律金で税を納めるようになってこの辺りの農家は軒並みダメになったんだよ。」
「ダメになった?」
「ああよくわからんがほとんどが金で税を納めるために食料を売ろうとして騙されたり上手く売れなくって二束三文で農地を捕られたりして農業を続けられなくなったんだ。それで入って来なくなった食料品の代わりにって国が”中の国”から食材を安く仕入れるようになったんだよ。それでほとんどの商店がこのマークの食材を扱うしかなくなったんだ。」
「それじゃこの国の農家は・・・。」
「今はほとんど壊滅状態だ。」
ガーン!
そこまで酷い。
信じられない。
王子は何をやっているの?
側近たちは?
私はしばらく店先で固まった。
「ご主人様?」
一花に呼びかけられてハッと我に返った。
いかん呆けてる場合じゃない。
取り敢えず私は一花たちと一緒にこれと思うものを値段に関係なくゴソゴソと買い込むと泊まっている宿に持ち帰ることにした。
宿では食材を待っていた料理人のリョウとナガイが持って来た材料でさっそく調理を始めた。
私たちは一花と食材を切り刻んで細かくすると持って来た分析器で食材の糖度と固さなどの特徴を分析した。
全製品を分析して気になったのは多くの商店で扱っていた△マークの食材だけ微妙に数値が変わっていたことだ。
うーんおかしい。
なんでこんな数値が出るの?
なんかが引っ掛かるんだけどそれが何かわからない。
小骨が喉に櫃かかるような感じがしてスッキリしなかった。
私が数値を見ながら唸っていると不思議に思ったらしい宿の主人が私に近づくと何をしているのかと聞いてきた。
この微妙な数値の違いを説明してもわかならないと思ったので他に気になったミカンの皮を剥くときに手に付いた白い粉について聞いてみた。
「ああそれならたぶん。栽培する時に使っている殺虫剤ですよ。」
「殺虫剤?」
「ええこの辺りでは昔っから虫が多いので栽培する時はその虫よけ剤を炊いて虫が近づかないようにするんですが”中の国”は水銀が豊富なんで水銀製剤を散布するんでそれが皮に付いてミカンの皮が白くなるんですよ。」
「水銀を食べ物に使っているの?」
「ええ効果がすごいそうですよ。一回散布すると熟すまで何もしなくても虫も鳥も何も寄って来ないので労力がかからなくてとっても楽だそうです。」
ちょっと待って。
水銀って確か・・・。
私は前世知識を思い出して真っ青になった。
それって食べ物と一緒に水銀も食べることになって確かある一定の量を超えると手足がしびれたりよくしゃべれなくなったり・・・。
ちょっ・・・ちょっとまさか・・・。
私は隣で自慢げにしゃべっている宿の主人を置き去りにすると馬車に駆け戻って中から魔法石を解析するための魔法石解析装置を引っ張り出してきた。
入れっぱなしにしていてよかった。
私はそれを持って宿のテーブルに戻ると先程分析した材料を一花たちにもう一度細かく刻むように言うと水銀の含有量を測定した。
一つ一つ測るとその含有量は驚くほどの数値を示していた。
そりゃこの数値なら虫も鳥も食べないわ。
こんなのを毎日人間が食べたらすぐに限界値を突破して水銀病を発症してしまう。
ちょっと待って。
確か昨日私たちが食べた料理・・・。
私は宿屋の主人に昨日の食材と同じものを分けてもらうとそれの水銀含有量を測った。
さぞやものすごい数値になっているかと思いきやまったくこの宿の食材にはそれが含まれていなかった。
何どういう事?
私は宿屋の主人に詰め寄ると”どこでこの食材を買っているのか”すぐに教えろと迫った。




