04.出発
私とカンバーバッチはハンスが持って来た果物と酒、それに固いパンを手に話し始めた。
「それで俺にどうしてほしいんだ?」
カンバーバッチは酒を手にすると私を見た。
「資金提供と用地買収それに人員の手配。取り分は利益の七が私で、そっちが三。」
私の話を聞いてカンバーバッチがすかさず反論しようとしてきたのでそれに釘をさした。
「命より高いものはない。」
カンバーバッチはグッとなって何も言えずに手に持っていた酒をイッキに煽った。
私も固いパンを魔法を使って温めてからそれを食べた。
私が柔らかく温められたパンを食べているのを見てカンバーバッチがそれを欲しがった。
「400クローネ。」
「おい、金取るのかよ?」
「なら冷たいまんま食べれば。」
「くそっ。」
カンバーバッチは棚から2,000クローネを放ると籠を指した。
私は頷くと一瞬でほんわかしたパンにしてあげた。
「こりゃうめぇ。」
カンバーバッチはイッキに三個も食べると私を見た。
「あんた商人じゃなく料理人になった方がいいんじゃないか?」
「ある程度儲かったらやって見るかも。」
「ある程度ってどの位だ?」
「マイルド国を動かせるくらい。」
私の発言にカンバーバッチは固まった後、大爆笑した。
「そりゃいい。」
彼は冗談だと思ったようだが私が黙ってそのまま食事をしているのを見てまじめに聞いてきた。
「本気か?」
私は食べながら黙って頷いた。
私は人心地つくと彼に真剣に宣言した。
「損はさせないわ。」
カンバーバッチは酒を一息で飲み干すともう一度まじまじと私を見た。
そして、何かを決心したような目を私に向けた。
「いいだろう。ただしストロング国に着いたらもっと詳しい話をしてくれ。何か考えているんだろう?」
「もちろん。」
私はニヤリと笑った。
ストロング国に着いたらまずは市場調査だ。
たぶん私が見た夢の記憶が確かならまだいろいろやれるはずだ。
二人でそこまで話した所で副長のスティーヴンスが船長室に戻って来た。
「船長。なんとかメインマストは修理できそうです。もうすぐ船を動かせます。」
「そうか。」
カンバーバッチはそう言うと船長室の扉に手を掛けた。
「あんたはどうする?」
「私が行っても船の事はわからないからここでゆっくりしているわ。」
「ああゆっくりしていてくれ。」
カンバーバッチはそう言うとスティーヴンスと一緒に船長室を出て行った。
私は彼が飲み残したワインをグラスに注いで少し飲むと四方に結界を張って彼のベッドに横になった。
あの様子じゃ当分戻らなそうだ。
おやすみ船長。