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30.王太子夫妻到着まで、あと4日-夜中。

 早く眠ったせいか変な時間に目が覚めた私はベッドから起き上がると窓の外を見た。

 まだ夜空には満月が煌々と輝き星もキラキラしていた。


 まったくなんでこんな時間に目が覚めたのか。


 私はブツブツ言いながらベッドから起き上がるとベッドわきに置かれていた水を飲んだ。

 コップをコトンと置くと一階からなんだか変な物音が聞こえてきた。


 空耳?


 そう思ったがまたカタンカタンという音がする。

 窓外を見るが風が吹いている様子はない。


 私は意を決してドアを開けると下に降りようとしてそれを一花に遮られた。


「一花!」

 私は小声で彼女に話しかけた。


 一花は私に頷くと階段下に目線を動かした。

 そこには一郎と次郎のフサフサとした尻尾が見えた。


 どうやらすでにこの音に気づいた二人が下に降りて様子を探ってくれているようだ。

 私たちは二階でそのまま待機した。


 すぐにまた物音が厨房の方から聞こえた。

 一郎と次郎がドアを開けてそこに飛び込んだ音が聞こえた。


「うおー離しやがれ。」

 物凄い音と共に叫び声が聞こえた。


 しばらくドタバタという音がした後一郎が降りても大丈夫ですと私たちに言ってくれた。


 私と一花は階段を降りて厨房に向かった。

 そこにはいつもお店に牛乳を配達してくれる商人のオッサンが次郎に拘束されて床に倒されていた。


 なんで彼がここに・・・。


 私がそう疑問に思っていると商人のオッサンが私に気がついて罵声を上げた。

 その内容は酷い言いがかりに塗れていた。

 どうやら私があの港町で始めた乳牛事業で生活を追われた商人のオッサンは王都に流れ着いてここで心機一転商売を始めたようだ。


 そこにまた私が現れて新規事業を起こしたので疑心暗鬼なったオッサンは自分の商売を邪魔されると思ってこのお店の妨害をするためにわざと配達している牛乳を壊したようだ。


 しかしその思惑もダン王子の登場で外れた。


 それどころか安い値段であの獣人の女性が牛乳を手配してくれることになったので私はあっさりと彼に明日から牛乳を運ぶ必要がないとそう断ったのだ。


 それに憤慨したオッサンはもっと私を困らせようと厨房に忍び込んでまた嫌がらせをしようとしたようだ。


 だが私から言わせれば彼が昨日も牛乳をちゃんと納品さえしてくれていれば牛乳の手配を断ることはなかったのだが、今更それを言っても仕方ない。


 私はそこまで考えて顔を上げると一郎が手に持っていた瓶に興味を引かれた。


「一郎、それは?」

 一郎の手には白い粉が入った瓶が握られていた。

「憶測ですが何かの毒ではないかと思います。」


「「毒!」」

 一花と私は同時に叫んでいた。


 恐々とそれを見ていると店先が騒がしくなった。

 外を見ると三郎がレッドと街を巡回していた兵士を連れて店に入ってきた。


「レッド様。」

 一花がビックリした声を出した。


 そりゃそうだろう。


 こんな夜中に会うはずがない人間が突然現れたのだ。

 びっくりするだろう。 

 もちろん私もびっくりしている。


 レッドは私たちの視線を無視すると次郎が捕らえた男を隣にいた兵士に連れて行くように命令すると一郎が持っていた瓶に目を止めた。

「それは?」


「この男が持っていたものです。単なる推測ですが毒じゃないかと・・・。」

 レッドは険しい顔で頷くとそれはこちらで調査すると言って一郎から瓶を受け取ると自分の後ろに控えていた兵士にそれを王宮に持って行って調べるように命令した。

 兵士は頷いてその場からいなくなった。


「他は?」


「いえ、他は特にないです。」


「わかった。先程預かった瓶の中身は分かり次第連絡しよう。」


「ありがとうございます。」

 一郎が頭を下げるとレッドは頷いて心配そうな顔していた一花の頭を撫私の肩を軽く叩くと他の兵士を連れて去って行った。


 レッドに肩を叩かれたせいか少しホッとして息を吐き出してから私は意を決すると二階で寝ている全員を叩き起こして念の為従業員総出で店内を消毒した。


 もちろん魔法で毒検知も実施した。


 やっとそれらが終わったのは朝日が昇ってくる頃だった。


 全員が疲れた目で店の窓から差し込んでくる光を見ると溜息をつきながらもそのまま朝の仕込みに突入した。


 今日はあのマイルド国王太子夫妻が来た時の打ち合わせをする予定だったが疲れていてとても無理そうだ。


 まだ到着まで3日ある。


 明日にしよう。


 私は奴らの事を頭から追い出すと今日遣らなければならないことだけに意識を集中させた。


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