26.赤毛の美少女ミエ
伯爵家に養女に来てから数か月間は毎日伯爵家が用意した家庭教師に礼儀作法を習わされた。
それでもそれを習得すればミエの憧れであった魔術学園に通えるようになると伯爵が約束してくれた。
だからそれまでになにがなんでも礼儀作法だけは習得しろ、とミエは義理の父になった伯爵と同じく義兄になったミシェルに口が酸っぱくなるほど言われ続けた。
もっともミシェルは一週間ほどで学園に戻ってしまったので文句を言い続けたのは伯爵の方だったが・・・。
そのおかげかわからないがミエは三か月ほどで家庭教師から礼儀作法については合格点を貰えた。
貰ってからすぐに伯爵は学園に編入する手続きを取ってくれてすぐに伯爵家の馬車で学園に向かった。
馬車に揺られながら今までのことをぼんやりと思い起こしているうちに学園に着いた。
すぐに受付に行くと義兄のミシェルが迎えに来てくれていた。
ミエは簡単に受付を済ますとミシェルに連れられこの国の第一王子に紹介された。
衝撃だった。
その人の容姿は金髪碧眼の美男子でミエが今まで夢に描いてきた王子様そのものだった。
これは運命よ。
ミエの頭の中で鐘が鳴った。
思わずポーとなって挨拶されるまま第一王子の名前を囁けば彼の隣にいた白い髪の少女に睨まれた。
なんで睨まれるのかと思っているうちに二人は寄り添うように肩を寄せ合うとミエの前からいなくなってしまった。
なんで、なんでいなくなるの?
私が見つめているのに?
あの女はなんで私のものを奪っていくの?
ミエが白い髪の少女を増悪の瞳で見ていると目の前にいた義兄であるミシェルがあの白い髪の少女がコンラーダ侯爵令嬢であり、その上あの金髪碧眼のコウ様の婚約者だと宣った。
何を言っているの!
コウ様はミエのものよ。
ミエが狙って落とせなかった男はいないわ。
今に見てなさい。
あの方はすぐにミエのものになるわ。
ミエがニヤリとすると義兄のミシェルがものすごく怖い顔で彼女に詰め寄った。
「何を考えている?」
「別に何も・・・。」
「言っておくがコンラーダ侯爵令嬢に何かしようとするなら義妹とはいえ、許さないぞ。」
ミシェルの言葉にミエは唖然とした。
コウ様だけでなくミエのものである義兄にまであの女は手を出そうとしているの。
見ていなさい。
必ず思い知らせてやるわ。
ミエが妄想に耽っている間もミシェルは義妹に説教をし続けた。




