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22.夢-出会い

 綺麗な色とりどりの薔薇が咲き乱れる中庭を私は小さな体で笑いながら走り回っていた。


「お嬢様、お待ちください。」

 後ろから侍女が私を追いかけて来た。

 私は侍女の呼びかけを無視しするとそのまま王宮にある中庭の奥まで向かった。

 そこには白い大理石で作られた噴水がありその横にはマイルド国で一番崇拝される女神の像があった。


「すっごい素敵!」

 私は目をキラキラさせながらそこにあった噴水と女神像を見ていた。


「なんでここにお前がいる!」

 私が夢中になってそれを見ているとどこから現れたのか金髪碧眼の男の子にぶっきら棒な声で呼びかけられた。


 何この男の子。

 いきなりお前とか信じられない!


「知らない人にお前呼ばわりされるなんて失礼です。」

 私は家庭教師に教えられた通り偉そうに胸を張るとそう言い返した。


 男の子は目を見開いた後微笑を浮かべると透き通るような美声で名乗った。

「それは失礼した。私の名はコウ・ドラン・マイルドこの国の第一王子だ。」


 えっ王子様!

 そう言われれば金髪。


 そうだこの間家庭教師にこの国に金髪は王家にしかいないと教わったんだ。

 私は自分の失敗を挽回しようと内心かなりオロオロしていたが目の前のコウ王子は気にする様子もなく逆になぜか私の銀髪をジロジロと見ていた。


 一通りジロジロ見ると彼は徐に私に手を差し出した。

「ここはまだ寒い。向こうに行こうリビア。」


「なぜ名乗っていないのに私の名前を知っているんですかコウ王子。」

 私は彼に手を引かれながら後ろから話しかけた。


「そりゃ知っているさ。銀色の髪を持つものはこの国にはコンラーダしかいないからな。」

 彼にそう言われ家庭教師に言われたもう一つのことを思い出した。


 いいですかお嬢様。

 この国で金髪は王族だけなのと同じように銀髪はこの国を救った英雄コンラーダ一族しかいません。

 お嬢様もその一員なのですからくっれぐれもその事をしっかり心に刻み努力を怠らない様に!


 そういつも耳にタコができるほど言われていたんだった。


 王子なら当然そのことを知っているんだからわかって当たり前か。


 私がそう納得した所で手を引きながら前を歩いていた王子がボソッと呟いた。

「言っておくがコンラーダと言うのはすぐにわかったがお前の名前を知っていたのはお・・・お前が私の婚約者になるものだからだ。」

 彼はそう言うと先を歩きながら耳を真っ赤にして私の腕をさらに強く引っ張った。


 なんで耳が赤いんだろう。

 私は不思議に思いながらも後ろからその様子を黙って見ながら歩いた。

 私たちはそれから先程の中庭まで戻り私の戻りが遅いのを心配していた侍女に連れられて王宮の謁見の間に向かった。


 そこにはすでに侯爵である父クルックと母ルビアーヌが待っていた。

 コウ王子は私の両親を見つけるとすぐにそこに行ってなぜか私の代わりに謝ってくれた。

「遅くなりました侯爵。」


 父は彼に険しい顔を向けると少し屈んで話しかけた。

「コウ王子。どうして私の娘と一緒に来られたのですか?」


 彼は顔を真っ赤に染めるとなんでか咳払いをした後こう答えた。

「私はこのリビアの事を気に入っている。」


 父は複雑な顔をしていたがいつの間にか現れた王がこの婚約の儀が正式に決まったとそこで宣言してしまった。


 両親は複雑な顔で王に挨拶すると私を連れ、侯爵家に戻った。

 戻る馬車の中はまるでお通夜のようだった。

「あのーお父様?」

 私は沈黙に耐えられなくなり母の隣から父に話しかけた。


 父は少し考えた後徐に私を膝の上に抱き上げると真剣な目であの第一王子をどう思うか聞いてきた。

 私が別に嫌いではないと答えると父はそうかと言って頭を撫でてくれた。


「クルック、まだ二人とも小さいのだからそう心配することもないわ。」

 母はそう言うと父の膝にいた私を抱きしめてくれた。


 馬車はそれから間もなくして屋敷に着いた。

 その日はそれで何ごともなく過ぎたが翌日なぜか王宮からたくさんの白薔薇が我が家に届いた。

「お嬢様、コウ王子より薔薇が届いております。」

 私の目の前にこれでもかというくらいたくさんの白薔薇が部屋を埋め尽くした。

「ほんとうにすごいわね。」

 私は白薔薇の匂いを嗅ぎながら唖然としてその光景を見た。

 それからもコウ王子はたくさんの品を持って私にアプローチしてくれた。

 私もそんな彼にいつの間にか絆され気がついたら二人は本当の婚約者同士となっていた。


 婚約してから数十年後。

 魔力の強い私とコウ王子が在籍するマイルド国の魔法学園にあの女がやってきた。


 あの赤毛の美少女ミエ・エライ・ボーダー伯爵令嬢が。

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