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20.宰相様と王族

 一花の悲鳴に我に返った私が動くより早く宰相閣下が迫力美女を止めてくれた。

「デルダ手を離しなさい!」


「ラッシュ!」

 宰相閣下の顔を見て迫力美女は嫌々と首を振るも一応一花の猫耳から手を離した。

 迫力美女は手を離したが今だになぜか彼女の手はワキワキと動いていた。


「あっ母様ズルいです。自分ばかり・・・。」

 ヴォイが自分の母親を羨ましそうに見つめていた。


「二人とも御客人に対してなんて・・・。」

 宰相閣下は重い溜息をついた。


 そして宰相閣下は彼らの後ろに控えていた黒い執事に頷くと彼はどこから出したのかモフモフしたぬいぐるみを迫力美女に渡すと同時に、私たちを応接室に置いてある重厚なソファーに座るように促した。


 私はすぐに頷くとそこに腰を下ろした。

 一花たちは座らず私のソファーの後ろに立っていた。


「あら、遠慮なさらないで皆さんお坐りなさい。」

 迫力美女がモフモフぬいぐるみを手に笑顔で勧めたが獣人たちは誰も座ろうとしなかった。


 宰相閣下が無理を言うなと言う顔で自分の妻を諌めた後黒服執事が持って来た書類をなぜか私に渡した。


 私は書類を手に取り中を開いてかなりびっくりした。

「これは!」


「ああ夕食後に渡すつもりだったが妻が君の使い魔にそのーゴホン。あまりよい態度をしなかったのでお詫びも兼ねてそれを先に渡したのだ。」

 私は王家御用達商人の許可証を胸に肩の力を抜いた。


 てっきりこれは王族と謁見した後にしか貰えないものと思っていた。


 私の様子を見て宰相様は一言口にした。


「まあそのーなんだ。残念ながら陛下に謁見するのは変わらないよ。」

 宰相閣下の言葉に少し肩を落とした。


 やはり謁見はしなければならないようだ。


「私が言うのもなんだが。妻の今の行動からもお察しの通り何故か王家の血を引くものはもふもふが好きでな。陛下も類にもれずモフモフ好きだ。」


 やはりそうか。

 でも合わないわけに行かないし・・・。


 私が後ろにいる一花たちをチラリと見ながら気にしていると宰相閣下が目の前のお茶を飲むと話し始めた。

「一応陛下との謁見の席には王妃様も呼んでおいたので先程のような事態は絶対起こらないと約束しよう。」


 宰相閣下は一応それなりに考えてくれたようだ。

 私はお礼を述べるとその後彼らと夕食を共にしてその日は客間に泊まらせて貰った。


 翌朝、私たちは宰相閣下が用意した衣装を着て王宮からの迎えの馬車に乗ると陛下との謁見に臨んだ。


 王宮はマイルド国など及びもつかないほど建物は豪華で物凄く大きかった。

 私たちはそれに圧倒されながらも宰相閣下と魔術師長であるヴォイ、それに何故かついてきた公爵夫人も加わって彼らに先導されて謁見の間に通された。

 まだ玉座には誰もいなかったが私たちはそこで深く頭を垂れ王族が現れるのを待った。

 私たちが部屋に入ってまもなく衣擦れの音がすると玉座に人が据わると顔を上げるように声がかかった。


 私たちは声に従い顔を上げた。

 そこには私の経営する宿屋に泊まったダン王子と彼を何十年も年を取らせた銀髪の美丈夫が玉座に座っていた。

 玉座に座った王は低い声で話しかけて来た。


「お前が今回王家御用達商人になったシロか?」

 私は王の声にハイとだけ礼をとった。


 王は私を品定めした後何故か一花たちをジロジロと穴が空くほど見つめた。

「その方たちがシロの使い魔か?」


「はい陛下。」

 一花が代表して王の問いに答えた。


「うむ。もそっと近くに寄れ。」


「デイヴィッド!」

 王の隣に座っていた王妃から鋭い声が発せられた。


「いやそのなぁ。あの猫耳が本物かどうかだな・・・。」


「お兄様あれは本物ですわ。」

 私たちの横にいた公爵夫人のデルダが自信満々に断言した。


「デルダお前触ったのか!」

 王は昨日のデルダのように手をワキワキさせていた。


「そうです父上。あれは間違いなく本物の猫耳です。」

 そこに玉座の隣にいた第一王子のダンが隣から断言した。


「お前もかダン!」

 二人は思い出すようにウットリした表情を見せた。


「お前らだけズルいぞ。」


「デイヴィッド!」

 そこに地の底を這うような声が王の隣から聞こえた。


「いやこれはだな・・・。」

 王が慌てて何か言おうとしているのに王妃はその言葉を無視するとなぜか私たちを王妃のお茶会に招いてくれた。


「それなら私も・・・。」

 王妃は王の事をまたもや無視すると目の前にいる宰相に目線を向けた。


「ラッシュ宰相この後の陛下のご予定は?」


 宰相閣下は王妃に軽く礼を取るとすぐに次の謁見と会議があると告げた。

「では陛下。お仕事を頑張って下さいませ。」

 王妃はそう言って謁見の間を退席していった。


 私たちも宰相閣下に促され公爵夫人のデルダと共に謁見の間を辞すと王妃が待っている中庭に向かった。


 なぜかその中庭に向かう間中公爵夫人であるはずデルダは勝ち誇ったように高笑いをしていた。


 はて、何かあったっけ今の謁見で?


 私は中庭に着くまで彼女の高笑いの意味がわからなかった。

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