02.出会い
私は巨木の上に乗って流されるまま川から海に来ていた。
両腕の魔力封じの腕輪が外れたので食事をとれなくても自然エネルギーを魔力変換し、それをエネルギーにして体内に取り込めば一週間くらいなら飲まず食わずで生きられる。
反面その後で食事をすると固形物が喉を通らず当分不味い流動食を食べるしかなくなるが・・・。
私がうんざりと溜息をついていると前方で焦げ臭いにおいと悲鳴剣戟の音が聞こえた。
目を凝らすと商人の船が海賊船に襲われているようだ。
何人か腕の立つ男が応戦しているようだが多勢に無勢海賊に制圧されかけていた。
「くそっ大事な荷物なのに・・・。」
男がうめき声をあげて脇腹に受けた傷口を片腕で押さえながら船の壁際まで後退していた。
私はそのリーダーらしい男の真後ろに瞬間移動した。
「こんにちは。」
男はびっくりして顔を私に向けた。
そこに敵がすかさず剣を振り下ろしたので防護壁で男に当たらない様に遮ってあげた。
「お前何者だ。」
「ここにいる海賊を全員退治したら私をこの船にのせてくれる?」
男は痛む腹を庇いながら頷いた。
「いいだろう。商人の神ヘルメスに誓って。」
私は頷くと腕を空に向け海賊船に特大の雷をお見舞いしこの船にいる海賊には電撃を食らわせた。
ものの数分で海賊船は炎に包まれ海賊たちは感電してその場に頽れた。
男は目を見開いて私を見た。
「あんた何者だ?」
私は男の問いかけを無視すると男の脇腹に手をかざして彼の傷口を塞いだ。
「おい何をした?」
男は押さえていた腹から手を離した。
「傷口を塞いだだけよ。さすがに動くとまだ痛いわよ。でも出血死はしないはずよ。」
「そりゃ嬉しいね。」
男は船にいる部下たちに海賊を拘束するように指示を出すと私を船長室に招いた。
「俺の名前はカンバーバッチこっちは副長のスティーヴンスだ。」
私は一瞬本名を言いそうになって咄嗟に祖母の名前をもじって名乗っていた。
さすがに他国とは言え本名はないか。
「私の名はシロよ。」
「その身なりでシロか?」
私の髪をジロジロ見て副長のスティーヴンスが訝しげに口にする。
「名前は自分でつけるものじゃないわ。」
私は皮肉たっぷりに相手を睨みつけた。
まっ相手がそう言うのもわかる。
生死の境を彷徨ったせいか私の髪は両親から貰った銀色から今は真っ黒になっていたのだから。
「俺の部下が悪いな気にしないでくれ。」
「別に気にしてないわ。それよりこの船はどこに向かっているの?」
「俺たちの船は大国ストロングに向かってたんだがあいにく今の戦闘でマストをやられた。だからいつ頃つけるのかはわからん。」
「マストがあればどの位でつけるものなの?」
「そうだな風向きもあるが良い風が吹けば三日でつける。」
「食料品や水は?」
「それは十分積んでるよ。それだけはまだ略奪される前だったんでたんまりある。」
「そっなら私がそのマストを補修したならそれなりの見返りはもちろんあるわよね。」
カンバーバッチは目を見開いた後大きく頷いた。