16.意外な提案!
「ヴォイ。何を考えているんだ。」
ダン王子はヴォイを怒鳴りつけた。
「ヴォイ。お前俺一人にこいつを押し付けるつもりか?」
レッドは違う意味で怒鳴るとヴォイの襟首を鷲掴んだ。
「レ・・・レッド落ち着いて。」
ヴォイは首を絞められ真っ赤な顔で抵抗した。
「これが落ち着いていられるか。ヴォイお前は俺を過労死させるつもりだろ。」
レッドはさらにヴォイの首をギリギリと締め上げた。
「そ・・・そんなことないわよ。」
「この状況のどこがそうじゃないんだ。」
「いいから私の話を聞いて頂戴。」
レッドは訝しく思いながらもヴォイの首を絞めるのを一旦止めた。
ゴホッゴホッゴホッ。
「とにかくあなただけにダン王子の面倒を押し付ける気はないわ。」
ヴォイはレッドの締め上げようとする腕を押さえながら必死で弁解した。
「ホントーだな。」
レッドの言葉にヴォイは真摯に頷いた。
おい今の会話はどういう意味だ。
二人の会話に後ろからダン王子が文句を垂れていた。
レッドは後ろで喚いているダン王子を無視するとヴォイに理由を話すように目線で促した。
「まず師匠を王都にご招待しますわ。」
ヴォイは自分に説明しろと詰め寄って来た二人をまるっと無視ると私に意外な提案をした。
王都にご招待!
「別に行きた・・・。」
私の言葉は途中で遮られた。
「王都に王家御用達の店舗許可を出すといったらいかがですか。」
王家御用達の店舗許可ってすべての商人が喉から手が出るほど欲しいものじゃない。
それも王都にですって。
それさえもらえば商売は今の3倍いやそれ以上に利益がうなぎ上りになるのは確実だ。
でもそれってそんなに簡単に出せるものなの?
私の疑問が聞こえたのかヴォイはその許可の取り方を説明してくれた。
「ラゲッティ商会の推薦状を持ってあなたの契約している使い魔を連れ王都の宰相を尋ねるだけですよ。」
「はっそんな簡単なことで王家御用達の店舗許可が下りるわけないじゃない。」
私の馬鹿にしたような物言いにまったく動じることなくヴォイはさらに付け加えた。
「宰相である父の面会予約は責任をもって私が取り付けますしここにいるダン王子ももちろん師匠が王都で王家御用達の店舗展開を応援しますから。」
ヴォイの断言にダン王子がすかさず反論した。
「なんで俺がそんな一介の商人を応援・・・。」
ダン王子の言葉は途中でヴォイの囁きによって遮られた。
「師匠が王都に来れば師匠の使い魔である猫耳美・・・。」
ヴォイが言い終わらないうちに事態を察したダン王子はしゃべり出した。
「もちろん王都で王家御用達の店舗を展開する許可が下りるように全力で応援するとも。」
ダン王子はそういうと腕を組んで首を縦に振った。
「いかがですか師匠。」
ヴォイは私に畳み掛けて来た。
今の話を聞く限り反論できるところはどこにもなかった。
王家御用達の店舗許可ははっきりいって喉から手が出るほどほしい。
ダメもとで挑戦してみて出来なくても問題ない。
それどころか運よく許可が下りれば・・・。
つまり今回は実行に移す価値が十分にあるということだ。
私は畳に両手を着くと頭を下げた。
「宜しくお願いします。」
ヴォイは満面の笑みを浮かべると
「王家御用達の店舗許可が出た時は王都で私に師匠の魔法を教えて下さいね。」
念を押された。
私はヴォイに笑顔で了承した。
「もちろんいいわ。でも許可が降りなければ・・・。」
私の言葉は途中でヴォイに遮られた。
「降りないわけありませんから大丈夫です。」
ヴォイは笑顔で言いきった。
私は満面笑みの男二人となんだか複雑な表情の男を一人を残して部屋を下がった。
思ったより早く計画が早く進みそうだ。
お父様お母様待ってて下さい。
必ず二人の無念は私が晴らしますから。
私は拳を握ると決意を新たにして自分の部屋に向かった。




