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15.疑惑

 ヴォイは目の前に置かれた鍋をつつきながら先程の使い魔と呼ばれている獣人たちを思い起こしていた。


 普通使い魔は主と契約する為主従関係において魔力の受け渡しが必ず行われる。

 それなのにヴォイが会った獣人たちの誰一人として魔力の流れが見えたものがいなかったのだ。


 どういうことだ。


 彼らは使い魔じゃないのか?


 いやそんなはずがない。


 ヴォイは鍋をつつきながら汁をおいしそうに啜っているレッドに声をかけた。

「レッド。」


「なんだ?」

 レッドは汁を啜るのを止めて今度は分厚い肉を御椀によそるとパクパク食べ始めた。


「ちょっと聞きたいんだけど。」


 レッドはなんだという顔で御椀から顔を上げた。

「獣人族って確か女性がいないって聞いてたんだけどそれ本当?」

 レッドはそんなことを聞きたいのかと面倒そうにヴォイを見ると詳しく説明してくれた。


 数年前に獣人族に奇妙な病が広まってなぜか女だけが全員罹りあっという間に獣人族は男性だけになってしまったそうだ。


 そうなると使い魔と言われているあの猫耳美少女たちはどこからやってきたのだろうか?

 ああ考えれば考えるほど矛盾でいっぱいだ。


 この世界にいないはずの使い魔っていうことは異世界から召喚したってこと。

 それってどんだけ魔力が必要なの?


 イヤー信じられない。


 ヴォイが心の中で叫んだ時引き戸の外から声がかかった。

「夜分失礼します。この宿の主でシロと申します。ご挨拶よろしいでしょうか?」


 三人はその声に互いに顔を見合わせダン王子が入るように許可を出した。


 引き戸がサッと開くと先程玄関で見た黒髪黒目で平凡な顔立ちの少女が現れた。

「本日はこちらにご宿泊誠にありがとうございます。」

 シロと名乗った少女はそう言うと深々と草で編まれた床に頭を下げた。

「本日の食事の方はいかがでしたでしょうか?」


 シロの問いかけに半分以上を食べたレッドが嬉しそうに答えていた。

「とても美味しかったです。」


「ありがとうございます。」

 私がそう言った後後ろに控えていた犬耳美少年の二人に目配せした。

 すると彼らはサッと廊下から部屋の中に入ってきて置かれていたほとんだ空の鍋を片付けるとデザートを置いて下がっていった。


 彼らの動きをよく見てみるがやはり使い魔と彼らを使役しているはずの少女との間には魔力のつながりがまったく見えなかった。


 どうなっているんだ?

 今の様子を見る限り彼らは使い魔とは思えない。


 ならなんなんだ。

 こんな現象が起こるのは魔道具を作る時に行う錬成魔法くらいだが錬成は無機物でしか出来ない。


 獣人のように生きているものを錬成出来る訳がないんだ。


 なら彼らが魔道具であるわけがないか。

 それにどう見たって彼らには魂の輝きがあった。


 異世界からの召喚をしたとして彼女の魔力なら可能ぽいけどやった途端術者も命を落としかねない。


 やはり無理だ。


 ヴォイは諦めて目の前に置かれてた透明なお菓子に黒い蜜がかけられたものを食べた。


 上品な甘さが口の中に広がっていく。

 上手い。


 ヴォイは透明なお菓子を一口だいに切ってそれにたっぷりと黒い蜜をかけると次々に口に運んだ。


 うーん何も味がついていないお菓子と黒い蜜が混ざり合って・・・。


 混ぜる!


 そうよ錬成魔法で形を作ってそれに心だけを召喚すれば・・・。

 今まで考えたことなかったけど理論上は可能よ。


 ヴォイは目の前の少女を見た。


 この少女は天才よ。


 ヴォイは意を決すると少女に話しかけた。

「シロ様。」


「えっシロさま???」


「いえ違うはお師匠さま。どうか私を弟子にして下さい。」

 ヴォイはそう懇願すると彼女の前に土下座した。


「ちょちょお客様止めて下さい。」

 ヴォイはハッと顔上げるとシロの手を取って満面の笑みで彼女の手に口づけた。


「な・・・なんで手・・・手を離して!」


「畏まりました師匠。」


「師匠ってお客様。」


「あっお客様じゃなくヴォイと呼んで下さい。師匠。」


「私は弟子は取りません。」

 私はきっぱりと断言した。


 ヴォイは私の耳元に顔を近づけると囁いた。

「師匠錬成魔法で魔道具を作った時は国に報告の義務があるんですが。」

 私は驚きのあまり肩が一瞬ビクッと跳ね上がった。


 ヴォイはもう一言囁いた。

「私の父は国の最高権力者の一人である宰相です。何かと役に立ちますよ。」

 私は囁かれた言葉にハッとした。

 ストロング国の最高権力者!

 私は彼の顔を見て一瞬考えてから溜息と共に頷いた。

「今回は出血大サービスよ。弟子にしてあげるわ。ただし弟子は師匠の命令に逆らえないわよ。」

 私の脅しに彼は非常に嬉しそうに頷いた。

「もちろんです師匠。」

 輝くばかりの笑顔が私に降りかかった。

 うっまぶしい。

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