表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/67

11.出会い

 ダン王子が舞踏会会場に入るとすぐに周りをご機嫌伺いにきた貴族に囲まれた。

 これでは件の商人を捜すことも出来ない。

 そう思っているうちに若い令嬢たちに捕まり流れでダンスを踊ることになってしまった。

 しかたなく一人と踊れば私も私もとなってしまい最後には収拾がつかなくなった。


 しょうがない。


 ダンはレッドに目配せすると彼は小さく頷いてそっと離れると捜しに行ってくれた。

 やれやれだから舞踏会は嫌いなんだ。

 ダンは自分で捜すのを諦めると周囲にいる令嬢たちと踊り始めた。



 レッドは王子に頼まれてコクリと頷くと人をスルリとかわしながら件の商人を捜し始めた。

 一人で捜すよりもと思い人を避けながらダン王子の反対側にチラッと目線を向けた。

 そこではヴォイがダン王子と同じように令嬢たちに囲まれていた。


 こっちもか。


 やはり一人で捜すしかないか。 

 それにしても二人ともすごい騒がれようだな。


 レッドからしてみれば確かに二人とも見た目はすこぶる良いがいかんせん彼らの性格を知り尽くしていてきゃあきゃあ騒ぐ令嬢たちの気持ちがまったく理解出来なかった。


 レッドは溜息をつくと令嬢に囲まれて身動きできない二人に背を向けると件の商人を捜し始めた。


 一応この屋敷にいる執事に前もって商人の特徴を聞いておいたが見渡した限りではいなかった。


 さてどうしたものか。


 そう思いながらもう一度周囲を見るとなぜか一人の女性と目があった。


 はてどこかで会ったことがあるような。


 レッドがそう思った時相手も気づいたようで挨拶された。

「メイン隊長お久しぶりです。」


 彼女に苗字を呼ばれて挨拶されたがやはり思い出せなかった。

 彼女はレッドが憶えていないのに気がついて真っ赤な顔で彼を見ると慌ててその場を立ち去ろうとした。


 いかん騎士として彼女に恥をかかせたまま行かせるなんて。

 レッドは慌てて彼女の腕を捉えると謝ろうとした。


 するとレッドの手を払いのける男が現れた。


「アルマに何をしようとした。」

 スティーヴンスはアルマを自分の背に庇うと男の前に立ち塞がった。


 まずいな。

 何だか変な誤解を生んだようだ。


 レッドは男の青い瞳を見据えると先程までの状況を説明しようとした。


「レ・・・レッド!なんでお前がここにいるんだ?」

 スティーヴンスは目の前に現れた犬耳男の筋肉質な腕をガシッと掴んだ。


 逆に掴まれた方のレッドは相手の顔を穴が空くほど見たがどうしても思い出せなかった。


 スティーヴンスはレッドの腕を離すと自分の名前を名乗った。

「俺だスティーヴンスだ。忘れたのかレッド。」


 相変わらずニブイ奴だな。


 レッドは名前を聞いてやっと思い出した。

「お前。もしかしてメイド長の息子か?」


 スティーヴンスはやっと自分を思い出したレッドをガシッと抱き締めた。

 レッドも抱擁を返した。

 二人は懐かしい思い出を撒くし立て盛んに話し始めた。


「あのー。」

 そこにいたアルマはいたたまれない空気に耐え切れずスティーヴンスに声をかけた。


「アルマ。」

 スティーヴンスが後ろを向くとアルマは壁と彼に挟まれさらにデカイ男二人の抱擁をまじかで見たせいで顔を真っ赤にしていた。


「ちょっ・・・今のは挨拶であってだな・・・特になにも・・・。」


 スティーヴンスがなんでか焦って言い訳している横でレッドが空気を読まずに二人に声をかけた。

「彼女はスティーヴンスの伴侶なのか?」


「「伴侶はんりょ!!!」」

 スティーヴンスは思わず真っ赤な顔でレッドのシャツの襟首を締め上げた。


「く・・・くび・・・いき・・・。」


 アルマが慌ててスティーヴンスの手をおさえた。

「スティーヴンス様ダメです。」

 自分の腕に置かれたアルマの手に気がついたスティーヴンスがレッドを締め上げていた手を放した。


 ゲホッゴホッ。


 レッドは絞められた首をさすりながらスティーヴンスを睨んだ。


「いやすまん。だがいきなりあんなことをいうお前が悪い。」


 スティーヴンスの謝っているんだか怒っているんだが不明な言葉をレッドが遮った。

「じゃ二人の関係はなんなんだ。」


「使用人とご主人・・・。」


 今度はアルマの言葉をスティーヴンスが遮った。

「同僚だ。」


「同僚?彼女は船に乗っているのか?」


「いや違う。俺は二年前に船を降りて今はビア商会で働いているんだ。」


「ビア商会?」

 聞いたことがない名前にレッドが聞き返した。


「ああ。そうだな・・・。」

 スティーヴンスは少し考えると窓を指差した。

「ほら、ここの窓から良く見えるあの建物だよ。」


 レッドの目が見開かれた。

「スティーヴンスお前20体もの獣人が働らいている宿に務めているのか。」


「獣人っていえば確かにそうだが?」

 急に真剣な顔で聞いてきた友人を訝しく思いながらスティーヴンスは一緒に働いている獣人たちの事を話した。


「誰かを捜しているのか?」

 あまりにもしつこく聞いてくるレッドを不思議に思ったスティーヴンスがそんなことを聞いてきた。


「ああまあそんなところだ。」


 それからしばらくお互いの近況を話してからレッドは明日にはそちらの宿に泊まるので良ければ宿の主人の話を聞きたいとスティーヴンスに伝えた。


「一応聞いてみるが忙しい人だからな。必ず会えるかどうかは約束出来ないぞ。」


「いやかまわん。」

 レッドはそう言うとスティーヴンスたちと別れて若い令嬢に囲まれている二人の元に戻った。


 それにしてここでスティーヴンスに会うとは思わなかった。

 それに彼の話だと20体もの使い魔を使役しているのも本当のことのようだ。


 あのヴォイでさえ3体が限界なのに何者なんだそいつは。


 レッドは闇夜に浮かび上がるきれいにライトアップされたその宿を窓越しに眺めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ