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TIME TRAVELERS  作者: らむお
1/1

出発

「2006年、2006年です。止まります。」


 大きな音を立てて、列車が停まった。

 黒く艷やかで、どことなくメルヘンチックな雰囲気を漂わせている車体である。

 列車の中には人がまばらに座っていて、居眠りをしている者、読書をしている者、外を見つめている者、様々であったが、その多くは暗い面持ちをした大人たちであった。


 そんななか、美しい黒髪の赤いワンピースを着た少女がいた。

 少女はただ、ぼんやりとくうを見つめていた。


「すみません、ちょっと、相席、いいですかね」

 少女のもとに、一人の男性がやってきた。

「はい…どうぞ。」

 干からびたようにしわしわの褐色のコートを着ていたその男は、徐ろに少女の隣に座った。

「あなた、まだ若いというのに、こんなとこに…」

「…」

 少女は応えない。


 ここに来る者達は、皆『旅行』をするために乗車している。ただ、それはただの旅行ではない。

 時間旅行。

 タイムトラベル、といった方がわかりやすいであろうか。

 この列車はただの列車ではない。時間というレールの上を走行しているのである。

 ただ、自分の存在している時代よりも未来に行くことはできない。行くことが出来るのは過去のみである。車内にいる者達は、過去に後悔の念を持つ者ばかりだ。


「あなた、向こうについたら、何をするんです?」

「…別に、あなたには関係ありません」

「僕はね、恋人に会いに行くんだ」

 少女は男性にまるで関心を持っていない様子だが、男は構わず続ける。

「彼女とは、高校生のときから、ずっと一緒でねぇ。彼女といた時間は、本当に、本当に、楽しかった。あぁ、思い出すだけでドキドキするよ。」

 男性は少年のような笑みを浮かべた。

 少し沈黙があったが、ようやく少女が口を開いた。

「その女性…亡くなったんですか?」

「あぁ…もう、10年も、前のことだけどね」

「…そうですか」


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