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キューピッド様の悪戯としか……

 今回は短めです。すいません…


 では、早速ですが閲覧よろしくお願い致します。

  震える手でハンカチに手を伸ばす。指の腹には柔らかな感触。これで――このハンカチで手を拭いただろうか。口元を拭っただろうか。はたまた溢れる涙を抑えたのだろうか。触れた途端、何故だかこのハンカチが女神様の過去さえも伝えてくるようで、俺は女神様に直接触れたような、いや、もしかするとそれ以上の満足感を抱いたのかもしれない。


 このままお持ち帰りしたい。そんな邪心を容易く振り払うことができた俺はまだまだ健全だと思う。持ち主に、女神様にお返ししなくては。俺はただそれ一心で、ハンカチを握りしめ食器をもそのままに、一目散に駆け出した。


「何をしている」


 扉に手をかけた途端、待ったをかけたのはメデューサだった。落ち着け、俺。眼さえ合わせなければいける。強行突破だ!!

「忘れ物を届けに行きます」

 早口にそれだけ言い残し、俺は返答も待たずに外へと飛び出した。どうしようか、明日からバイト憂鬱すぎる。


 俺は裏口へ向かいロッカールームに忍び、自分の上着を羽織った。そんなことしてる場合じゃない、ですって?そんな殺生なこと言わないでくれよ、予想以上に寒かったんだ。アウトサイド。

 そんなこんなでファミレス入り口に戻ってきた俺は、案の定、女神様を見失っていた。仕方がない。手始めに俺は、ファミレス前でポケットティッシュを配る男に声をかけた。

「ちょっといい?あのさ、女神さ…じゃなくて、このファミレスから出てきた白いコート着た女性、どっち行ったか分かる?」

「あぁ、あっちだよ。なかなかの美人だったからね、見惚れちゃったよ」

 そう言って右を指すソイツ。「女神様は俺のものだ!!」とでも言ってやろうと思ったが、すんでの所で思い止まる。事は一刻を争う。時間の無駄だ。それに、例えコイツが恋敵になったとしても負ける気がしない。大丈夫、俺の方がイケメン。

 自身に何度もそう言い聞かせて、俺は礼だけ残して風になった。ちょっと君、勘違いしないでくれよ、これただ比喩だから。俺まだ死んでないから。




 はてさてどうしたものだろうか。


 現在、絶賛迷子中。本当、ここ何処状態。勝雄の家と逆方面のこの町は、全く俺のテリトリー外だった。

 女神様の現在地どころか、自分の現在地も見当がつかない。悩んだ挙げ句、俺は無作為に歩き回ることにした。というか、それより他に仕方なかった。


 いない。どれだけ探しても、女神様がいない。流石の俺も女神様が家に着いてしまったことを懸念せざるを得なくなってきていた。そもそもこの町、人口密度高すぎだろ。これじゃ、見つかる女神様も見つからない。“諦めて、自分の帰路を探せ”なんて悪魔の囁きも聞こえたが、俺は諦める訳にはいかなかった。何故なら、(これは俺の憶測の域を出ないが)、これが恋のキューピッドが与えたチャンスに違い無いから。だって、そうとしか思えないだろ。一度離れた女神様に再び逢えたのも、女神様がハンカチを忘れていったのも、偶然にしては出来過ぎている。1日限りのキューピッド様の気紛れ、そう考えれば、筋が通る。


 そんなことを考え始めて5分程経った頃だろうか。俺が、通りかかったパチンコ屋の騒音に混じる、女神様の美声を聞いたのは。


 閲覧ありがとうございました。


 果たして、駄目男は女神様を発見なるか!?

 というところなのですが、次話は別視点で進めていきたいと思います。というわけで、この連載初の微シリアスになりそうです。

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