表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

ひかれた

 いよいよヒロインの登場です!!

 1人でも楽しんで下さる読者様がいらっしゃれば、作者は大変喜びます。

「嘘…だろ……」

 絶望の言葉が口をついて出る。全く信じられない。涎で湿った枕を無意識に撫でていた。それでも目は吸い寄せられたように時計を見つめる。

「じゅうさんじ…にじゅっプン」

 いやいやいやいや、無理だって、間に合わないわ。俺今パジャマだよ、髪の毛盛男スタイルだよ。今時流行らないって。俺の美脚力を駆使してもバイト先まで15分半プラス1秒……無理じゃないか、オワッタ!!Good-bye、俺の給料。Bye-bye、樋口一葉様……いや、諦めたらだめだ。いける!!今こそ新記録を出すときじゃないか。

 オトコを見せろ、俺!!



 ただいまの時刻13時35分36秒。走ってます。走ってますよ、どうせ。最初から無理だったんだ、所詮俺はフリーターなんだから。これくらいのピンチごときで自分の限界超えられるなら、今フリーターなんてやってない。

 というか、ん?あれ、目の前になんか赤い光……なんだ、あれ……みんなが俺をみて、る?なに、何が起こってい

「ぐえっ」

 突然強い力に首根っこを掴まれて、俺は後ろ側に引き戻された。尻餅をついた俺の目と鼻の先でくるまが走っていて、強い風に打ちつけられる。そう、くるまが……クルマ……え、車?ええっ!!?


「バカじゃないの!!アンタ死にたいの!!?」

 突如頭上から聞こえた声に我に返る。見上げると…………天使が俺を見下ろしていた。おいそこ、失笑するな。全てを吸い尽くすようなブルーがかった双眸と透き通るような白い肌。触れたくなるような、ふっくらとした艶のある紅い唇。そして風に靡く緑髪。こんな人間いるわけが無い。間違いないだろう、この方は天使だ。

 しかしまぁ……えー、轢かれずに済んだ気したのにな。天使がいるってことは、完全にお迎えきたってことだ。俺死んだんじゃん。

「チキショー…」

 何だよ、結局俺フリーターのまま人生の幕閉じるのかよ。何の夢も無く、何も成せず、ただ徒に20数年生きただけだったのかよ。死ななければいいや、なんて無駄に生きた年月を、過去にこんなに悔やんだことは無かった。これが死ぬってことなのかもしれない。ふっと目頭が熱くなって、数年ぶりの涙が頬を伝う。

 そんな俺を見て小さく首を傾げていた天使は、やがて「あぁ」と頷くと、訳知り顔になっておっしゃった。

「アンタ、自殺志願者ね」

 ……え?いや、バリバリ違うけど。寧ろ何故そうなったし。あ、なるほど、

天使も冗談言うんだね。黙っていると、天使は小さく溜め息を吐いて、それから俺に氷柱のごとく冷酷な(コトバ)を突き刺してきた。


「馬鹿でしょ、完全に。自殺なら家でやってくんない?アンタのバラバラ死体とか誰もみたかないわよ」

 っ……おい、冗談でも言い過ぎだろ。死んでまでこんなに蔑まれる義理はない。俺も流石に耐え難くて、遂には言い返してしまった。

「さっさと連れてけよ!!天使……さま」

 流石に呼び捨てになんてできなかったけど。だって、こんな人外的な美しき女体。俺が呼ぶことすらおこがましい。まぁ、敬称の有無に関わらず、天使に反論してしまったことに変わりは無い。俺殺されるかな?あ、でももう死んでるか。

 天使の逆鱗に触れるのを覚悟して、俺はコンクリートに視線を落とした、が。

「……はぁ!?どんな電波?頭でも打った?それともアンタの脳みそはお尻にでもついてるの?」

 天使があげたのはゲンコツでも金属バットでも無く、素っ頓狂な声だった。


 天使が狼狽しているのは明らかだ。惑う天使やばい、興奮する。

「アンタの目は飾り?」

 怪訝そうに尋ねられ、辺りを見渡せば、町はいつもと何ら違わず、人々はせわしなく動いている。そして俺もまた、いつもと同じく五体満足だった。血液一滴流れてない。これはもしかして……

「やっぱ、俺、生きてる?」

 天使は(冷ややかな眼で)俺を凝視している。天使が、俺だけを見つめているんだ。

「アンタが赤信号なのに飛び出そうとしたから止めてやったの」

 止めてくれた?……天使が人助けなんかするものな…………あ、分かった。彼女は天使なんかではなかったんだ。


 このお方は……


「女神様」

「違うわ!!もういい、アンタめんどくさい。親からもらった命、大事にしなよ」

 そう言って女神様は俺に背を向けて、雑踏の中に消えていった。


……どうしよう。

俺、女神に恋しちゃったよ。



轢かれなかった。

でも惹かれた。

 閲覧ありがとうございました。


 ベタですいません……。好きなんですよ、王道。



 次話もよろしくお願い致します。 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ