表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Hunter and Smith Online  作者: 栗木下
第1章:閉ざされた世界と巨大狼
8/249

8:始まりの村-3

 さて、ユフと別れた所で俺はまず神殿に向かった。


「やっぱり人が多いな。」

 神殿の中には一人の豪勢な法衣を纏った神官が居て、その神官の後ろにはたくさんの扉がくっついた巨大な柱があり、柱の周囲の地面には赤い円陣がいくつも描かれている。

 そして、柱にくっついた扉には何人ものプレイヤーが入っていっては消え、赤い円陣が光る度にプレイヤーが現れては円陣の外に出ていく。


 さて、ここで神殿の機能についてだが、簡単に言えばプレイヤー個人個人のプライベートルームである。

 俺は神官に近づいていく。


「おお、神の使徒よ。如何なされましたかな?」

 神官が一歩前に出つつ俺に話しかけてくる。勿論と言うべきだが彼はNPCである。


「部屋の鍵を貰いに来た。渡してくれ。」

「分かりました。この鍵は技能石と同じくアイテムポーチ外に保管されるアイテムですので安心してお持ちくださいませ。プライベートエリアに関する説明は必要ですかな?」

 どうでもいいが、彼はHASOの中でもトップクラスで不遇なNPCだと思う。


「いや、必要ない。」

「分かりました。」

 そう言って神官は俺など最初から居なかったかのように元の位置に戻る。

 なにせこの先プライベートエリアに関する説明を俺が求めない限りは彼はずっとあそこで黙々と立ち続けているわけだし。


 まあ、俺が気にする事でも無いので、とっとと俺は扉の一つに鍵を挿し込んで開ける。



---------------------



 さて、プライベートエリアの中だが、予めいくつかの設備が置かれてある。

 一つ目は休憩用のベッド。これは使うと休憩状態になり、HP等が急速に回復する設備だ。

 二つ目はアイテムボックス。アイテムポーチは入れられるアイテムの量や種類に制限が存在しているが、ここのアイテムボックスにはそれが無い。簡単に言えば倉庫だ。

 三つ目はクローゼット。手に入れた装備品を収納しておき、使用することによって装備を変更できる設備だ。

 四つ目は簡易の製造設備。職人スキルを使うのに必要な設備が一通り揃っており、対応する職人系スキルがあれば大抵のアイテムが作れる。

 ただ、所詮は簡易なので、設備のレベルとしては最低ラインの物であり、本当に良いものを作りたいと思うのなら、≪小道具職人≫や≪大道具職人≫、≪設備職人≫に≪建物職人≫など設備や道具を作れる職人の力を借りる必要があるそうだ。


 そして、このプライベートエリアだが、部屋の主が招けば複数人の人間が同時に中に入ることも出来るらしい。先程複数の人間が一度に扉の中に入っていったのはそう言う事だろう。

 ただ、広さとしては12畳一間(各種設備は壁に埋め込み)なので、あまり人が多いとちょっと狭いかもしれない。

 まあ、本来広さとか壁紙辺りは課金でどうにかできるのかもしれないが、


「ま、その辺の事は考えてもしょうがない。まずはアイテム確認だな。」

 俺はベッドに腰掛けながらアイテムポーチの中身を改める。


△△△△△

Name:ヤタ

総重量:85


修復石×2 石ころ×13 薬草×3 雑草×20 塩噴き草×5 砂×5 フライフィッシュの鱗×6 フライフィッシュの身×5 フライフィッシュのヒレ×2 オオシオマネキの甲殻×7 オオシオマネキの足×13 オオシオマネキの鋏×2 カニみそ×2

▽▽▽▽▽


 正体不明だったのは石と草類だったが、確かに識別されている。

 ただここでこれらのアイテムをボックスの中に入れて外に出ると外で拾った時はまた未識別状態で手に入るし、雑草や石ころにここまで枠を潰されるのは流石にどうかと思うし、次の技能石が手に入ったら何かしらの識別系スキルを取りたい所ではある。


 まあ、それはさておいて折角なのだし、何かしら作れないか色々と試してみるとしよう。



---------------------



「メイスの強化は素材不足かレベル不足でまだ出来ないか。」

 俺は目の前に表示されている画面を見ながらそう言う。

 ここで職人系スキルの使い方を説明しておこう。

 職人系スキルの使い方は主に二つ。

 一つはアイテムだけを選択して、自動生成でパパッと作ってしまう方法。BPを消費し、質も他の方法に比べると悪くなるが、大量のアイテムを画一かつ短時間で作り出すことが出来る。

 もう一つはアイテムを選択した後に提示される手順に従って自分の身体と設備や道具を動かして作る方法。こちらの方法で作ると時間がかかる分だけ質の良い物ができやすく。わざと指示を無視することによってオリジナルのアイテム(大抵はクズアイテムになってしまうらしいが)を作り出すことも出来る。また、こちらの方がレベル上げに良いという情報もある。


 なお、前者にしても後者にしても作成には対応した職人系スキルのレベルが作成物に設定されているレベル以上であることが必要である。


「ま、新しい武器を作れないならまずは武器の修復でレベル上げだな。」

 俺は武器のメイスを取り出して、画面から『修復』のコマンドを選択する。

 修復には先程見せたアイテムポーチにも入っていた修復石を用いることになるが、その際に要求される修復石の量は武器のレベルや損耗度合いによって変わってくるのだが、当然の様に上位の武器や損耗が激しいと求められる修復石の量は多くなる。

 なお、修復には対応した職人系スキルが必要になるので、修復を行えばスキルのレベル上げになる様になっている。


「さて、求められている修復石は一個か。なら問題ないな。」

 俺はアイテムポーチから修復石を取り出し、備え付けの炉でメイスと修復石を熱した後、ハンマーで叩いて結合させていき、両者が冷えると再び炉で熱する。

 こんな事で武器が直るのか!とか言いたくなるが、そこはゲームである。気にしてはいけない。

 そして数回繰り返したところで武器の修復が完了したと言う旨のメッセージが流れてくる。


「うし。完成。じゃあ次は酒の方だな。」

 俺はメイスをしまって、≪酒職人≫用の簡易道具……というか小さ目の樽と櫂を取り出し、俺が櫂を握ったところでアイテムを選択する画面が開かれる。

 そして俺は驚いた。


「フライフィッシュの身や、オオシオマネキの足でも酒が造れる……だと。」

 俺はてっきり酒を造るのには果実や穀物の様に何かしらの糖を持ったアイテムが必要だと思っていた。だが流石はゲームである。まさか明らかにタンパク質と脂質オンリーな材料で作れる酒があるとは……、いやまあ、馬乳酒みたいにほぼタンパク質なものから作られる酒も一応あったか。というかこの感じなら食べられるアイテムは全て材料として使えそうである。


「まあ、何はともあれまずはレベル上げとして雑草辺りで作ってみるか。」

 そして俺は雑草を選択してお酒を造り始めた。

やっと職人系スキルの初使用です。

でも本格的な作成は次回なんですよねー


07/25 少し改稿

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ