67:王都ミナカタ-12
さて、やるべき事と言ってもまずは狩猟神の神殿で大量に回収し、その後使っていなかった素材を利用しての防具作成依頼(ついでに防具の修復)である。
「おぃーすガントレットいるか。」
「おお、ヤタであるか。噂は色々と聞いているであるよ。」
俺は神殿前の広場でガントレットのオッサンを見つけて話しかける。
「あらいらっしゃい。」
「久しぶりです。アーマさん。」
と、アーマさんも俺に気づいたのか話しかけてくる。
「それで今日は何の用である?」
「いくつか防具を作ってもらおうと思ってな。」
そう言いながら俺はメニューを開いて二人に俺の持っている素材を見せる。
「また随分とたくさんあるわね。」
「おまけに見たことどころか聞いたことも無い素材がいくつもあるである。」
開かれたメニューの内容を見て二人はそう言う。見た事も聞いたことも無い素材と言うのはあれだ、マンティドレイクの素材とかウルグルプの珠の事だろう。
「とりあえずこの素材でウルグルプ装備の首、胴、腕防具を作ってもらえるか?」
「お安い御用である。」
ガントレットのオッサンが任せておけと言わんばかりに胸を張る。
「ただ、ウルグルプの珠。これに関してはどこに使いたいの?」
と、ここでアーマさんがそんな事を聞いてくる。
ただ、これに関しては全く持って未知の素材なので聞かれても答えられない。
「うーん。素材の相性としてはどこに使うのがお勧めですか?」
「そうね。珠と言う素材の種類で見るなら首・頭・胴辺りかしらね。相性の良さもその順番だと思ってもらっていいわ。」
「なるほど。」
「ただ、ウルグルプの素材だという事も加味すると難しいわね。どうやらどの部位にもブースト用の素材として用いれるようだし。」
むう。要約するとアーマさんでも分からない。か。
まあ、見た感じ血赤のウルグルプ限定素材っぽいしな。情報なんてまず無いか。
となるとだ。
「なら首防具でお願いします。」
「その心は何であるか?」
「何となくネックレスには宝珠とかが付き物だと思うから。」
いやー、この気持ちはほとんどの人が納得してくれるよね。首飾りってそういう物じゃない?
「分かったわ。なら手数料込みでこのぐらい素材を貰って……そうね。夜までに仕上げておくから夜になったら取りに来て。」
「分かりました。ではお願いします。」
「任されたである。」
そうして俺は二人に別れを告げて神殿のプライベートエリアに移動する。
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「さて、いい加減スキルを取得するか。」
プライベートエリアに移動した俺はスケルトンから入手した技能石を使用する。
「どれにするかな……」
俺の前に無数のスキルが表示される。
まず今の戦闘スタイルで足りないものを考える……が、よくよく考えてみると戦闘用スキルの枠的にはもう一杯一杯なんだよな。おまけに今の戦闘スタイルでかなり安定してるし。
バーバリアンスタイルを貫くのなら≪蹴り≫とか≪紋章職人≫とかまだまだ取れそうなスキルはあるけどどれも使う先が限られたり、戦闘用だと枠が足りなかったりするんだよなぁ……。
で、純粋にRPとか無視して総合的な戦闘能力を上げるなら≪器用強化≫で生産能力を上げたり、≪投擲具職人≫で≪投擲≫に使う使い捨ての武器を造ったりと言ったところか。
次に挑むのが技巧神の神殿で水場が多いらしいから≪泳ぎ≫系統のスキルを取るのも有りではあるな。
「うーむ。」
俺は悩む。すごく悩む。こういう時にスキルの枠を増やしたいなとか思う。出来ないけど。
と言うわけで、斜め読みで色々なスキルを見て行く。
≪火属性適性≫、≪太陽の加護≫、≪肺活量強化≫、≪棒マスタリー≫、≪火事場力≫、≪黄泉還り≫、≪時間感覚≫、≪混乱耐性≫、≪爆発物職人≫、≪回復量増加≫、≪自然治癒力強化≫……うーん。こうして見ると本当にHASOのスキルは多種多様である。
ぶっちゃけ説明を読んで使い方を考えているだけでも2,3日ぐらいは余裕で潰せる気がする。
「おっ、これなんか面白いか?」
と、ここで俺の目に一つのスキルが目に留まる。
≪四足機動≫:制限解除系スキル。獣の様に両手も足のように使って自由自在に移動することが出来る。
これがあれば狼の様に走ったりできるという事だろう。
ただまあ、瞬間的にはともかく継続的に走る場合はよほどレベルが高くないと普通に走るより遅いんだろうな。人体の構造上それは止むを得ない。
と言うわけで取得。とりあえず、普段は≪鉄の胃袋≫の代わりに付けておく。
「えーと、後は武器の方だけど……微妙に素材が足りないな。」
新たなスキルを取得した俺は武器の強化先について見る。が、どれも素材不足で俺の望む強化をするのは難しそうだ。
というのも、
クロノコンボウ:強化したばかりで普通に強化できない。少なくとも三神殿の攻略が終わるまでは次の強化は難しそう。
Bドロップメイス:砂浜のモンスターの素材が必要。
コヒツジジュウジ:次の強化に必要な素材が分からん。
ボアノーズ:クロノコンボウを上回るレベルで強化をするには素材不足。とりあえずマンティドレイクの角はこっちに回す予定。
こういう状況だからだ。
とりあえず明日にでも砂浜と東の海岸を繋げるついでにBドロップメイスの為に素材を集めるべきだろう。
「と、そろそろ夜か。」
気が付けば外の日は完全に落ちていた。大量のスキルを見ていたのが原因だろうな。
で、俺はアーマさんたちから装備を受け取るために神殿前の広場に向かう。
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「ここまでの物が出来るのは予想外だったわ。」
「全くである。」
「はあ?」
俺の姿を確認した二人が最初に言ったのがその言葉だった。
「まあ、いいから着けて見なさい。」
「分かりました。」
俺はアーマさんから装備品を受け取って装着する。
新しい装備品の名前はウルグルプベストにウルグルプアーム。そして巨大狼の首飾り。
まずウルグルプベストに関しては前に身に着けていたスペルゴートベストの色違いと言ったところで見た目にはただ黒い毛皮のベストだ。しかし、さりげなく裏地にプロレスベアの素材が使われていたりもするので防御力は確実に高まっている。
ウルグルプアームに関しては基本の素材にウルグルプの素材を使い、要所要所にベノムッドとマンティドレイクの素材を使った贅沢な造りである。言うまでも無く防御力はかなり高い。
そして巨大狼の首飾り。外見としては狼の頭を模した飾りがウルグルプの珠を咥えたデザインの首飾りである。が、性能が明らかにヤバい。首飾りなのに防御力もかなり高いが、それに加えて敏捷上昇などのステータスアップ効果もついているようだ。
これは間違いなくウルグルプの珠の効果だな。普通に同じものを作ってもこんな物が出来るとは思えない。
と、ここで何となく俺は自分の使える祝福を確認する。
するとこんな物が加わっていた。
【獣人化:ウルグルプ】
……。
とりあえず、ウルグルプアームを外してみる。するとこの祝福も消える。ウルグルプアームを付け直して今度は≪噛みつき≫を外してみる。すると再び祝福が消える。
色々と付けたり外したりして見る。で、その結果から見るにこの祝福の発生条件は指輪以外全身ウルグルプ防具で、≪噛みつき≫≪嗅覚識別≫≪四足機動≫≪大声≫など複数のスキルが関わっているようだ。まあ、スキルに関しては被りもありそうだが。
うん。後で使ってみよう。
「では、攻略頑張るであるよ。」
「で、私たちの所に素材を持って来てね。」
「装備ありがとうございます。では行ってきます。」
「行ってらっしゃいである。」「行ってらっしゃい。」
そして俺は砂浜へと向かって駆け出した。
△△△△△67話時点
Name:ヤタ
Skill:≪メイスマスタリー≫Lv.14 ≪メイス職人≫Lv.9 ≪握力強化≫Lv.10 ≪掴み≫Lv.12 ≪投擲≫Lv.11 ≪噛みつき≫Lv.13 ≪筋力強化≫Lv.9 ≪嗅覚識別≫Lv.7 ≪大声≫Lv.11 ≪嗅覚強化≫Lv.6 ≪方向感覚≫Lv.8 ≪四足機動≫Lv.1
控え:≪酒職人≫Lv.9 ≪鉄の胃袋≫Lv.6
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Name:ヤタ
Equipment:攻撃力:150+闇10 防御力:45+水1+火1
武器:クロノコンボウ 【ダークスイング】 【ベノムスイング】
頭:ウルグルプヘッド 【ハウリング】 【ウルフファング】
首:巨大狼の首飾り 【獣人化:ウルグルプ】
胴:ウルグルプベスト
腰:ウルグルプベルト
腕:ウルグルプアーム 【アイアングラップ】
脚:ウルグルプグリーヴ
指輪1:スペルゴートリング(青)
指輪2:スペルゴートリング(赤)
控え武器
Bドロップメイス 121+水5 【ヒール】
コヒツジジュウジ 130+光5 【ヒール】
ボアノーズ 140 【スイングダウン】
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【獣人化:ウルグルプ】についての詳細についてはまた後ほどですが、スキルと防具の制限がかなりきつい祝福となっています。
09/15誤字訂正
08/12誤字訂正




