31:王都ミナカタ-1
新章開始です。
これからもよろしくお願いします。
剥ぎ取りが終わったことによりインスタントエリアが解除され、俺の目の前に徐々に草原とは別の風景が映り込んでくる。
最初に見えたのは堅牢そうな石造りの城壁。次に見えてきたのは開かれた高さ10mは有りそうな巨大な鉄製の門。続けて見えるのは門の内側に建てられた数々の中世風の石で出来た住居。最後にはるか遠くにいくつもの尖塔を備えた城の様な物が見えてきた。
ここは南の草原のボスであるウルグルプを倒したプレイヤーのみが入る事を許されるHASO世界最大の都市ミナカタ。通称、“王都”である。
「ただ、やっぱり真夜中だな……。」
ただ、真夜中のためそこかしこで篝火が焚かれており、所々で見回りをしている衛視とプレイヤーらしき人影以外に動いている人物はおらず、昼の王都とは全く違う雰囲気が漂っている。
いや、昼の王都を俺は知らんけどね。ただ何となくのイメージっていうのがあるからさ。
「まあ、とりあえず。RPGの基本と行こうか。」
俺は門兵にいつまで突っ立っているんだ?という門兵の視線をスルーしつつ、王都の中に足を踏み入れる。
さあ、まずはRPGの基本。どこに何があるのかの施設とアイテムの確認である。(住民については夜でもあるし落ち着いてからにしておく)
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俺はまず基本中の基本。という事で王都中心にある神殿に向かった。セーブは大事だよね。というか何か不慮の事故があって巨大狼改めウルグルプのドロップ品を無くすのは御免である。
ちなみにさっき遠く見えたお城は王都の南東に位置しているらしく、条件を満たすまで中には入れないらしい。
「にしてもデカいな。」
俺は始まりの村にあった物よりも一回りか二回りは確実に大きい神殿を見ながら思わず感想を呟く。
ただ、デカいと言っても神殿のNPCに聞いたところ使える機能に関しては何処の神殿もほぼ変わらないらしく、王都の神殿に到達することによって追加で使えるようになった機能と言えばこれくらいだ。
「ポータル?」
「ええそうです。天の使いである皆様方だけが使える各地の神殿と特別なセーフティポイントを繋ぐ祝福の門。それがポータルです。尤も、各地を繋ぐと言っても繋げられるのは本人が行った事のある場所だけですがな。」
早い話が都市間と一部特別な場所とを繋ぐワープポイントである。
まあ、便利な事この上ないんだけどな。こういう物が無いと移動だけで数日かかったりすることになる。
後、何でユフがウルグルプを討伐してすぐに村に戻れていたのかの理由がよく分かったわ。あいつこれを使ったんだな。
で、とりあえず死に戻りの際のポイントを王都の神殿に再設定し、プライベートエリアのアイテムボックスにウルグルプのドロップ品を置いた俺は神殿を後にするのであった。
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そして続けてやってきたのが神殿の隣に建てられ、真夜中であるにも関わらず煌々と明かりが灯された建物。
ここは全狩人・職人連合協会。通称“協会”である。
協会で行えることは主に三つ。
1つ目はプレイヤーが剥ぎ取った魔物の素材や作成したアイテムの売却。これはレア度1以上の物なら大抵の物を売り払うことが出来る。
が、NPC売りとなるわけで当然安く買い叩かれるので、そこは要注意である。
2つ目はそうやって協会に売り払われた素材やアイテムの購入。ただし値段は売却額の2倍以上で、レア度が高いアイテムだと売却額の10倍以上の値段で売られることもあるらしい。また、そのプレイヤーが一度手に入れた事のあるアイテムしか購入対象にはできないそうだ。
何と言うか随分とあこぎなやり方である。
なお、プレイヤーが売却したアイテムは2週間以内に買い手が付かない場合は破棄されるそうだ。たぶん無制限に貯め込むとさすがにサーバーがヤバいんだろう。ただでさえ生物の臭いまで再現して負荷がかかっているわけだし。
そして3つ目は貨幣の両替である。これはまあそのままだな。ただ、HASOの貨幣制度は多少特殊なのできちんとした説明が必要であろう。
まず大前提としてHASOのお金は一般的なRPGと違って専用の保管場所を持たずに一枚一枚がアイテムとして個別に扱われている。
で、HASOの貨幣は全部で6種類有り、100枚で上位の貨幣に両替できる。
具体的には下から順に、獣石貨、魔物銅貨、職人銀貨、狩人金貨、神月貨、輝陽貨というらしく、獣石貨を1円とするならば他の貨幣はこういう価値になる。
獣石貨=1円
魔物銅貨=100円
職人銀貨=10,000円
狩人金貨=1,000,000円(100万円)
神月貨=100,000,000円(1億円)
輝陽貨=10,000,000,000円(100億円)
……。ぶっちゃけ神月貨や輝陽貨はHASOスタッフの悪ふざけで存在しているような貨幣の気がする。
いやまあ、アイテムとして独立して存在しているという事は武器や防具などの素材として扱える訳だし、もしかしたら神月貨や輝陽貨はそちらの用途がメインなのかもしれない。扱うにもそれ相応のレベルが必要になりそうなアイテムだけど。
ちなみにそれぞれの外見としては獣石貨は狼の絵が刻まれた灰色のコイン。魔物銅貨は悪魔の様な物が刻まれた銅製のコイン。職人銀貨は職人を象徴するアイテムである金槌が描かれた銀製のコイン。狩人金貨は剣と弓を組み合わせたような図柄の入った金製のコイン。
で、神月貨は美しい女性の絵が刻まれ鏡のように光を反射する乳白色のコインらしく、輝陽貨は太陽の様に光り輝くオレンジ色のコインらしい。
神月貨と輝陽貨がらしいなのはこの説明をしてくれた協会のNPC受付嬢もこの二つに関しては実物を見たことが無いからである。というか色や特徴的にファンタジーな金属製だな。きっと、
うん。入手できる気がしない。
そんな事はさておいて、使う機会が無さそうなビッグラットの素材を全売りし、獣石貨20枚に魔物銅貨2枚を手に入れておく、予想通りの二束三文だよ!
まあ、多すぎても邪魔だから別にいいけどさ。
そんなところで俺は協会を後にして次の施設に向かう。
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次の施設は王都北部と西部を埋め尽くすように広がる職人街である。
職人街は各職人ごとに店舗が分かれており、今は深夜なので閉店してしまっているが、賃料を払う事によって神殿のプライベートエリアに用意されている物よりも上等な生産設備を一定時間使うことが出来たり、最低ランクの武器・防具・アイテム(例えばベースメイスとか)ならばここで購入することも出来る。
「にしてもカオスだなぁ……。」
ただまあ、当然と言えば当然だが、多種多様な職人の店が集まっているために職人街の様相は混沌を極めている。
なにせ、石造りの店の隣に木造の店舗があるのは当然で、何か突起物の様な物が生えている店があればその突起物に絡めるように別な何かを出している店もある。
今は真夜中なので物音一つしないが、きっと日中は大量の人が行き交うと共に様々な声が乱れ飛んでいるのだろう。
なお、例外として職人街に≪料理職人≫に対応した設備は無い。そちらは王都の東部で種別ごとに分けられる形で、通称“料理街”と呼ばれつつ存在しているようで、深夜でも酒場の様なタイプならば普通に営業している。
というわけで、俺は魔物銅貨2枚を消費して一人で祝杯を上げて一日を終えたのであった。
「今日も酒が旨い!」
やっと通貨が出たよ!
そして王都ミナカタは王都としか呼ばれないからミナカタと言う名前は確実に忘れられるよ!




