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Hunter and Smith Online  作者: 栗木下
第1章:閉ざされた世界と巨大狼

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21:南の草原-1

 南の草原は基本的には平坦で、時折岩が地表に露出していたり、丈の高い草が密集している場所があった。


「おお、居た居た。」

 そして俺が南の草原に入ってしばらく経ち、人影も疎らになった頃。俺の目の前の丈の高い草が密集しているところから一匹の巨大鼠が現れた。


「キュー!」

 灰色の巨大鼠は体長にして50cm程であり長い前歯が特徴的である。

 そしてそんな巨大鼠が俺に向かって勢いよく突撃してくる。恐らくだがある程度まで接近した所で飛びかかり、噛みついてくるのだろう。


「だが甘い!【アイアングラップ】!」

 俺はウッドガントレットを装備したことによって出現していた祝福【アイアングラップ】を起動。BPを1割ほど消費して両手が淡い光を発すると共に、一定時間≪掴む≫で掴んだ相手に継続ダメージを与えられるようにする。

 そして、俺の予想通り口を開いて飛びかかってきた巨大鼠の頭を掴み、そのまま力を込めていく。


「キュウウウゥゥゥ!!」

 頭蓋骨がミシミシという音を立てる強さで握られているために巨大鼠が悲鳴を上げているが無視する。

 さて、今の俺が所有している祝福についてだが、今朝装備をガントレットのオッサンから受け取った時点で三個まで増えていた。効果についてはメニューの説明から確認できたが、実際に使ってみないと分からない事も多いので、その辺りについてはこれから確かめていくつもりである。

 と、十秒ほどで【アイアングラップ】の効果時間が切れたために巨大鼠が悲鳴を上げるのを止めて暴れだす。なので僅かに存在しているクールタイムを挟んで俺は再び【アイアングラップ】を起動。継続ダメージを与えられるようにする。


 で、【アイアングラップ】の使い心地としてはまずまずと言ったところか。ダメージそのものは小さいが元々≪掴み≫はダメージを目的としたスキルではないので、おまけ程度とは言えダメージが付いてくるなら儲けものである。

 それに≪握力強化≫によってダメージが上昇する。というのは確認も何もしてないので希望的観測だが、決してありえない話ではないと思う。

 ≪握力強化≫の効果的にその方が自然だ。


 さて、こういう考察をしている間にも三度目の【アイアングラップ】を俺は使用しており、三度目の【アイアングラップ】の効果時間が切れる頃には巨大鼠は全身の筋肉を弛緩させていた。

 どうやら巨大鼠を倒すことが出来たらしい。

 というわけで、左手で掴んだまま剥ぎ取り用ナイフを取り出して剥ぎ取る。


△△△△△

ビッグラットの皮 レア度:1 重量:1


ビッグラットから剥ぎ取れた灰色の皮。皮には様々な使い方や加工法が存在している。色々試してみよう。

▽▽▽▽▽


「チュートリアル乙。」

 ビッグラットの皮を見た瞬間に俺は思わずそう呟いていた。

 まあ、普通は南の草原が最初だからな。こういう説明文のアイテムがあってもおかしくないだろう。


 さて、それはともかくとして次の獲物を俺は見定める。

 次の獲物はこの南の草原の昼に出てくるもう一体のモンスター。スライムである。

 と言っても某国民的RPGに出てくるような水色で小さいスライムではなく、体高1m程ある緑色でゼリー状の生物であり、半透明な体の中心には核の様な物がある。


 俺はゆっくりとスライムに近づいていく。スライムはノンアクティブなので、こちらが攻撃するまでは襲い掛かってこないようである。

 なので、当然の様に第一撃は……


「全力で行くぜ!」

 全力でクラブメイスを振り下ろして大ダメージを与えようとする。

 が、メイスがスライムに触れた瞬間。俺の手に伝わってきたのはダメージを与えた手応えではなく、まるでクッションか何かを叩いたような感触であった。


「なっ!?」

 俺はその感触に驚きつつも、体の一部を伸ばして殴りつけようとしてきたスライムの攻撃を後ろに飛んで回避する。

 どうやら、スライムの体は打撃属性に対して高い耐性があるらしい。と言ってもメイスや杖の様な低火力の打撃武器ではなく、ハンマーの様に高火力の打撃武器ならば普通に弱点であろう核まで攻撃を届かせて葬ることも出来るのだろうが。


 さて、スライムがゆっくりと近づいてきているこの場面で俺はどうするべきかを考える。

 高い打撃耐性を持つとはいえ少しずつならダメージを与えられているようなので、本当にゲーム開始直後なら相手が倒れるまで殴り続ける。と言うのが本来の戦い方だろう。

 だが、今の俺には別の攻撃手段もある。

 というわけで、今回は効果と使い心地を確かめるためにも別の手段を取る。


「起動。【ダッシュタスク】」

 【アイアングラップ】の半分ぐらいのBPが消費され、今度は口元が淡く光ると共に、バッドマスクと俺自身の牙が鋭く尖っていく。【ダッシュタスク】の効果は≪噛みつき≫の攻撃力を増した上で対象に向かって一直線に駆け寄り、牙で攻撃する祝福である。

 どうでもいいが夜や暗闇の中ではこの淡い光はどうなるんだろうな。敵にも見えるとしたらいい的になりそうだ。


「ガルッ!」

 と、そんなどうでもいいことを考えている暇は無く、俺の体は祝福の効果によってスライムに向かって駆け出し、すれ違いざまに前にビッグバットが俺にやったように浅く噛みつく。

 すると、スライムのゼリー状の体が薄く切られ、そこから中身である液体が勢いよく漏れ出てくると共に俺の口の中に入ってきたスライムの体液が俺の舌にメロンソーダの味を伝えてくる。


 俺は【ダッシュタスク】の効果によって浅く噛みつけた後、ダメージを受けて怒り狂っていると思しきスライムから距離を取る。

 さて、メイスでの攻撃が通用しない以上俺は≪噛みつき≫で攻撃するしかない。

 ふっふっふ。貴様の体液は全て俺が啜ってくれるわ!



-----------------



「はあ。飲んだ飲んだ。」

 結局俺はその後も通常の≪噛みつき≫を交えつつクールタイムが明ける度に【ダッシュタスク】をスライムに対して行い、スライムの体液を全部啜った。

 いやー、何でスライムの体液が甘いメロンソーダなのかは分からないが、美味しいわぁ。


 と、俺はそんな感想を抱きつつ残ったスライムの核を剥ぎ取り用のナイフで突いて素材を回収する。


△△△△△

グリーンスライムの薄膜 レア度:1 重量:1


グリーンスライムの中身を保持するのに必要な薄い膜。向こうが透けて見えるほど薄い。

▽▽▽▽▽


 ちっ、普通の素材か。仮にグリーンスライムの体液なんていうアイテムがあれば何か面白いものが作れたかもしれないと言うに。


「まっ、とりあえずはセーフティポイントまで敵を狩りながら進んで、夜になるのを待つか。」

 そして俺は南の草原の奥へと向かっていった。

やっと祝福を行使できました。

ちなみに【アイアングラップ】はウッドガントレット+≪掴み≫、【ダッシュタスク】はバットマスク+≪噛みつき≫で発現しています。

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