206:王都ミナカタ-46
妙なイベントに遭遇した翌日。
俺はヤルガバッハさんから設備が完成したと言う連絡を受けたため、武器強化に必要な素材を持って『イッシキ』へと向かった。
「これが新しい設備なのか。すげぇな。」
「立派な設備になったものである。」
で、『イッシキ』に入店した所で俺はアーマさんに連れられて奥の部屋に行き、そこで一昨日設備について話し合った際に見た炉を始めとする鍛冶道具が大幅に改良されているのを俺は見て、思わず感想を漏らしてしまった。
「うわ、ハンマーがまるで手に吸い付くような感じだ。」
「炉の火を見ても今までの設備は何だったのかと問いたくなるレベルである。」
そして実際に鍛冶道具を握って見て再度驚く。
いやだって、≪メイス職人≫の店の上位設備と比べ物にならないぐらいしっくりする感じがするし。
「作成難易度もそれに見合うだけの高さだったがな。」
ヤルガバッハさんがしてやったりと言う顔でそう言う。
でも、実際そんな顔をしていいぐらいにはこの設備は出来がいい。
「ふむ。そんなに高かったのであるか?」
「ああ。恐らくだが、今まで『イッシキ』で使っていた設備との間にはもう一段階挟むンだと思う。そうでもないと納得できない難易度だったしな。」
ふーむ?今のヤルガバッハさんの言葉が確かならアレかな?本来は間に湿地帯や干潟で回収できる素材で作った設備を挟むところを一足飛びにランクアップしてしまったという事か?
「何にしても完成したのなら早速使ってみるであるよ。ヤタ。」
「お、おう。」
俺はガントレットのオッサンに促されて鍛冶作業をするための位置に付き、今回強化する武器と素材を取り出す。
「ほう、ドリルか。」
「ふむ。ドリルであるか。」
「ああ、ドリルだ。」
「ドリルと聞いて。」
で、取り出した素材の中には殺人機械2号から回収した殺人機械のドリルも含まれていたため、ガントレットのオッサンとヤルガバッハさんといつの間にか現れたホリラーが反応を示す。
いやでも、反応したってしょうがないよね。ドリルは男の浪漫だ……し……
「ホリラー!?」
「何時の間に来たであるか!!?」
「てか、どっから嗅ぎつけた!?」
「ヤルガバッハに話があって来たら、ドリルの気配がしたものだからアーマさんに奥へと通してもらった。」
驚く俺たち三人を尻目に淡々とホリラーが事情を語る。
うーん。流石はホリラー……採掘のプロだけあってドリルに対する情熱は俺たちの比ではないか。
「とりあえず武器を作ったらどうなんだ?」
「あ、ああ。そうだな。そうしよう。」
俺はアイテムポーチからテックソルトハニーキャンディを取り出して舐め始めると作業を開始する。
さて、今回の強化対象はマンティメイスである。と言うわけで、
①マンティメイスの電撃発生部から食塩水等を抜く。
②殺人機械の歯車とモーター、それにプロトキリングの回路にオートシューターの弦、宝箱型の採取ポイントで回収出来た導線を組み合わせて、電気を浴びると回転する謎の機械を作成。
③マンティメイスの角部分と殺人機械のドリルの内側を削って噛み合うようにしてくっつける。
④接合部を加熱し、十分に熱せられたところで取り出してハンマーで叩いて完全に接合。
⑤それから再度加熱、ハンマーで叩いての強化、狩人の水による冷却を数度繰り返す。
⑥ドリル部分とモーター部分を回転が伝わるように接合。
⑦モーター部分の周囲をプロトキリングの装甲片や殺人機械の装甲片で囲い、加熱して接合、球状にする。
⑧球状にした部分の内側に動力源となるイエロースライムの体液を流し入れる。
⑨最後にドリル部分に殺人機械の刃片を接合して殺傷能力を高め、メイス部分にドリルとは逆回転する歯車を付けてアクセントとする。
「うし。完成。」
俺は出来上がったメイスの性能を確かめる。
△△△△△
キリングディグメイス レア度:6 重量:3 種別:メイス 作成者:ヤタ
攻撃力:240
属性攻撃力:雷55
耐久度:100%
殺人機械2号のドリルを取り付け、電気の力で高速回転させる事によって殺傷能力を大幅に上昇させたメイス。
そのドリルは敵の肉を巻き込み、引き裂き、焼き焦がす。
▽▽▽▽▽
「攻撃力240……半端ないな……」
「ここまでの武器を難なく作れるであるか……」
「流石はドリルだぜ……」
表示されたステータスとウンウン唸りながら回転するドリルを見て三人が三人それぞれの反応を見せる。
しかしまあ、試作型爆裂錫杖もそうだが俺としてはもう少し攻撃力が高くなってもおかしくない気がするんだよな。
いくら魔改造やウルグルプの珠を含んでいるからと言って灯台前の素材だけで作ったシッコクノキョロウの攻撃力が220+闇60なんだし。
で、ちょっと気になったのでその辺の事情を三人に話したところこういう返答がきた。
「うーン。もしかしたら間の段階を飛ばしているせいで作成後の性能が若干下がっているのかもな。」
「防具で言う所のベース素材が弱すぎて他の素材の足を引っ張っているのに似た状況かもしれないである。」
「もしくは使っている素材の質が最良じゃないのかもな。」
うーん。流石は生産職。俺みたいな純戦闘人間は知らない様な情報がポンポン出てくるなぁ……
ん?てかそうなると本当に最強の武器を作るとなると……
「まあ、最強の武器を目指すならそれこそ建物から作る覚悟が必要だしな。」
「ベース武器にしても壊れた武具の破片の質で結構変わるであるし。」
「使う素材に関しても他の職人系スキルで何手間かかけて良くした物を使った方が出来上がる装備の質が上がるぞ。」
俺の疑問を察したのか三人が三人ともとんでもない事を言ってくれる。
うん。とりあえず今の状況でそこまでやるのはバカのやる事だな。そんな時間や暇は流石に無い。
「で、武器が作り終わったところで質問であるが、ヤタはこの設備でどんな防具を作ってほしいであるか?」
と、話が一段落したところでガントレットのオッサンが防具についての話を持ちかけてくる。
「そうだな……。この設備ならセンケンジンキの素材も使えるんだよな。」
「それは問題ないである。」
ふむ。そうなるとだ。
俺はガントレットのオッサンに昨日手に入れたウルグルプの珠を含む大量のウルグルプ素材に、センケンジンキの防具片、魔力片の半分、血、地下礼拝堂の金管と手持ちのお金全てを渡してこう依頼する。
「なら、全部位ウルグルプ素材+センケンジンキ素材で頼む。基本的な見た目としては今と同じような感じで。」
「ふむ。これは職人として腕の見せ所であるな。承ったである。」
俺の依頼に真剣な顔でガントレットのオッサンが頷く。
「となれば他の職人にも声をかけて祭りと行くべきか。」
「だな。これは全職人が全力で競ってもいい場面だ。」
と、同時に残りの二人も全力で協力する姿勢を見せる。
ああうん。頑張ってくれるのはありがたいけどセンケンジンキの素材はかなりの貴重品だから無駄にしないでね。もう一回取れと言われても取れるか分からないし。
一応、遺跡で手に入れた素材も放出しておくけど無駄遣いは厳禁だからね。
「まあ、他の職人の事はさておいてヤタは防具が出来上がるまでの間はどうするであるか?」
「とりあえず遺跡の探索を進めるよ。まだ殺人機械1号が見つかってないし。」
そう言い残して俺は『イッシキ』を後にし、準備を整えてから遺跡のインスタントポータルへと飛んだ。
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Name:ヤタ
Skill:≪メイスマスタリー≫Lv.39 ≪メイス職人≫Lv.34 ≪四足機動≫Lv.40 ≪噛みつき≫Lv.37 ≪嗅覚識別≫Lv.38 ≪闇属性適性≫Lv.34 ≪蹴り≫Lv.36 ≪掴み≫Lv.37 ≪鉄の胃袋≫Lv.34 ≪投擲≫Lv.36 ≪BP自然回復≫Lv.27 ≪大声≫Lv.33
控え:≪酒職人≫Lv.27 ≪器用強化≫Lv.29 ≪握力強化≫Lv.29 ≪筋力強化≫Lv.30 ≪嗅覚強化≫Lv.30 ≪方向感覚≫Lv.27
ストック技能石×1
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Equipment:攻撃力:240+雷55 防御力:120+闇20 (全防具に黒霧鋼(+闇2)使用)
武器:キリングディグメイス 【サンダースイングⅡ】 【クラッシュスイング】
頭:ウルグルプヘッド 【ハウリング】 【ウルフファング】 【ポイズンバイト】 【ダークエンチャントⅡ】 (クエレブレの素材使用)
首:巨大狼の首飾り 【ダークエンチャントⅡ】 【獣人化:ウルグルプ】
胴:ウルグルプベスト 【ダークエンチャントⅡ】 (ショットフロッグの皮使用)
腰:ウルグルプベルト 【ダークエンチャントⅡ】 (クエレブレの素材使用)
腕:ウルグルプアーム 【アイアングラップ】 【ダークエンチャントⅡ】 (ヌマヒトガタの素材使用)
脚:ウルグルプグリーヴ 【ダークエンチャントⅡ】 (クエレブレの素材使用)
指輪1:ブラックミストリング (闇8) 【ダークエンチャントⅡ】
指輪2:ゲコドロリング (HP・BP回復 2/h)
控え武器
Rシザーメイス 142+水15 【ディフェンスライズ】
スノーミストメイス 180+氷35 【アイススイング】 【クールゾーン】 【ブリザード】
キツネトリイ 195+光25+闇10 【ヒール】 【スモールサンクチュアリ】
シッコクノキョロウ 220+闇60 【ダークスイングⅡ】 【獣人化:ウルグルプ】 【フォーススイング】
試作型爆裂錫杖 200+火75 【ファイアスイングⅡ】 【ブラストスイングⅡ】
≪闇属性適性≫+メイス祝福 【ダークヒールⅡ】 【ダークエンチャントⅡ】 【ダークキュアⅡ】
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ドリルの匂いが有るところにホリラー有り!




