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Hunter and Smith Online  作者: 栗木下
第8章:黒狼騎士と樹巨人

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201/249

201:遺跡-10

「おっ、」

 遺跡の探索を続ける俺はいつもの様に罠を警戒しつつ扉を少しだけ開いて部屋の中の様子を見る。

 すると僅かな隙間から今回の目的の一つである上位設備の材料が採取出来るポイントである宝箱が見えた。


「んー。大丈夫だな。」

 が、そこで慌てて踏み込んだりはせずに俺は慎重に罠の有無を確かめてからゆっくりと扉を開ける。


「……。」

 そして部屋の中をしっかりと見た俺は絶句する。


「これは……。」

 そこにあったのは9個の宝箱の採取ポイント。

 しかもその全てに採取が可能であると言う表示が出ている。

 普通のゲームならここは宝物庫かなんかで、ボーナスポイントだと思って片っ端から採取を始めるだろう。


「絶対になんかある……。」

 だが、遺跡に到達するまでに西の森、北の山、坑道、霧の湖、灯台と散々教育され、遺跡に到達してからも今までとは比べても酷い罠に晒され続けたHASOプレイヤーならこう判断するだろう。


 『これは罠だ!』


 と。


「油断するな油断するな油断するな……。」

 俺はまず周囲を見渡して壁に穴が開いていないか(以前に壁から大量の槍が飛び出て来た部屋があった)、天井と壁の間に風が通り抜ける様な隙間が無いか(吊り天井が有ると天井を勢い良く落とすために僅かだが隙間が有る)、扉と床の間に段差が存在しないか(吊り天井の逆パターンで床がせり上がって押しつぶす罠が有る)を確認する。


「まだだ……まだ分からない……。」

 部屋そのものにどうやら仕掛けは無いらしい。

 だが、ここで油断したプレイヤーの喉笛を噛み千切ってくるのがHASOクオリティだ。まだ油断はできない。

 俺は部屋に異常がないのを確認すると次は宝箱本体を採取体勢に入らない様に気を付けつつ子細に調べていく。

 宝箱に仕掛けられている罠と言えば爆発にパンチグローブ、毒針、毒ガス等々とにかく採取しようと調べたプレイヤーに対して手痛い反撃を加えてくる罠が殆どで、中には部屋全体に及ぶような仕掛けも有るだろうがそっちの仕掛けは先程の調査で無さそうなのが判明しているので除外する。

 でだ、俺には≪罠職人≫を始めとする罠を解除出来る諸々のスキルが無いので見つけても放置するしか無いが引っかかるよりはマシなので念入りに執念深く調べる。

 だが……


「何も……無いだと……」

 9個の宝箱全てを俺の実力で可能な限り調べたが何も見つからなかった。


「落ち着け落ち着け……そうだ。素数を数えるんだ。素数は孤独な数字……」

 俺は必死に頭を落ちつけつつ9個もの宝箱が設置されている意味を考える。

 とりあえず、単純にボーナスと言うのは有り得ない。絶対に有り得ない。HASOスタッフがそんなに優しいはずが無い。だからこれだけは天地がひっくり返ってもあり得ない。


「となれば……」

 で、思いついたのが単純なボーナスポイントではなく、運試しの場という形だった。それならば鬼畜がデフォルトのHASOでもまだ有り得るだろう。

 ただその場合はハズレを引くと相当凶悪なペナルティが飛んでくることになるだろうがその辺りはしょうがないだろう。


「まあいい。まずは一つ目だ。」

 俺は勘で何となくこれなら大丈夫だと感じる宝箱を選んで開けてアイテムを採取する。

 すると一つアイテムを採取した時点で開けた宝箱が消える。

 どうやら俺の予想通りに運試し要素が強いようだ。


「なら二つ目だ。」

 俺は二つ目の宝箱を開けてアイテムを2個採取する。

 そしてアイテムを2個採取した時点で宝箱が消える。


「三つ目……。」

 三つ目の宝箱は3個アイテムを採取した時点で消え去る。

 どうやら開けた宝箱の数+1回アイテムが採取できると考えてよさそうである。

 となれば希望的観測になるが、9個の宝箱全てを開けられたなら1+2+3+4+5+6+7+8+9で45個のアイテムが採取できることになりそうである。


「ただまあ、それなら何があってもいい様に身構えておくべきだな。」

 しかし、これだけ美味しいならハズレを引いた時のペナルティは絶対にヤバいものになるだろう。

 なので俺はさらに警戒を強める。


「じゃあ四つ目……いや、これじゃないな。」

 で、四つ目の宝箱を開ける直前で俺は何となく嫌な予感がして別の宝箱を開けて採取する。

 何故嫌な予感がしたのかは分からないが、運試し系統ならこの手の勘は信頼すべきだろう。


「じゃあ五つ目……っつ!」

 そして五つ目の宝箱を俺が開けた瞬間に部屋中にアラーム音が鳴り響き、開けっ放しにしておいた扉が勝手に閉まった上にガチャリと言う鍵のかかる音が響くと共に全ての宝箱が溶けるように消え去る。


「何が来る……。」

 俺は周囲を警戒すると同時にいつでも帰還石を取り出して使える様にアイテムポーチに左手を突っ込んでおく。


カタカタカタ……


「……。」

 俺はスキル構成を戦闘用の物に変更し、微かな音や匂いにも反応できるように身構える。


カタカタカタ……


「……。」

 少しずつ、本当に少しずつだが周囲の空気が揺れ、何かが近づいてきているのが臭いで分かる。


「「「ガガガバチョー!!」」」

 そして部屋の四隅に突如宝箱が出現したかと思うとそこから手足が生えてビックリバイトへと変身して奇声を上げる。

 4体のビックリバイトに囲まれると言う状況になって俺はこの部屋の仕掛けを理解する。


「なるほどな……。」

 つまりこの部屋は運試しの要領でアイテムが採取できるが、欲を張ってハズレの宝箱を引いてしまうとそれまでに開いた宝箱の数と同数のビックリバイトに襲われると言う仕掛けが存在しているのだろう。

 そして恐らくではあるが9個目の宝箱は確定でハズレなのだろう。HASOスタッフならそれぐらいはする。

 欲は身を滅ぼすとはよく言った物である。


「まあ、やってやるよ。センケンジンキを倒した俺の実力を見るがいい!」

「「「ガガガバチョー!!」」」

 しかし裏を返せばここでビックリバイトたちを殲滅できれば大量にビックリバイトの素材が手に入るチャンスでもある。

 そして俺とビックリバイトたちの戦いが始まった。

宝箱部屋に対する訓練されたHASOプレイヤーの反応例でした。


12/22誤字訂正

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