182:VS2号-2
「ふっ!」
「反撃ー!」
俺と2号の戦いは長引いていた。
と言うのも俺の攻撃はシッコクノキョロウ、≪蹴り≫、≪噛みつき≫のいずれかを当てるしかないのだがそのいずれも火力としては微妙で、しかも2号は一部のタイミングを除けば一撃喰らうたびに反撃のドリル突撃をやってくるためそれで時間が取られるのである。
「さて、次は何処から来る……?」
おまけに2号の反撃ドリル突撃は最初の突撃は水平方向一択だが、飛出しに関しては地面、壁、天井の三択になっているため、その回避には細心の注意を払う必要がある。
なお、2号は機械系のボスなので、≪噛みつき≫単体で使うと恐らくは噛み付くたびに満腹度は回復せずにダメージを受ける。俺は≪鉄の胃袋≫のおかげでダメージも受けずに満腹度を回復できているが。
ガ……
「来た!」
と、ここで掘削音と振動が一瞬止まったのを感じ取って俺は前方に飛出し、それと同時に4本の武器の刃を真下に向けた状態で天井から2号が飛び出し、地面に武器を突き刺し周囲の地面に振動を撒き散らしつつ着地する。
「おらぁ!」
だが、天上から落ちてきた場合は武器を地面に突き刺したことによって2号が次の攻撃に移るまで多少時間がかかることが分かっている俺は2号に接近し、飛び蹴りからのコンボ攻撃を行って最後に蹴りの反動で距離を取る。
「……。」
2号がこちらを向く。
が、反撃ドリル突撃でループさせてしまうと簡単すぎるためなのか2号は別の行動をするための準備を整え始める。
「また、面倒なのが来たな。」
「地均し♪地均し♪」
2号は武器を持った腕を収納すると代わりに脚を長く伸ばして振り上げ、四本の脚で素早く四股を踏み始める。
「地均し♪地均し♪」
そしてそのままの状態でこちらに向かってゆっくりと接近してくる。
この地均し攻撃はモーションが分かり易いので未だに掠ってすらいない攻撃だが、2号の脚がハンマーのようになっていることを考えると踏み潰されたらお終いだろう。
おまけにこの攻撃の最中は2号の周囲は激しく揺れるため接近して攻撃→反撃ドリル突撃へ強制移行させる。と言うことも出来ない。
「くそっ……投げ矢が残っていればな……」
本来ならば投げ矢などによる遠距離攻撃が対抗策になるのだろうが、既に投げ矢を切らしてしまっている俺は逃げ回る事しかできない。
と、しばらく逃げ回っていると2号の手足が元に戻りドリルの先端をこちらに向けてくる。
「げっ」
「ぶち抜けー」
「のわあああぁぁぁ!!」
そして次の瞬間高速回転している状態のドリルが発射され、俺はそれを全力で横に跳ぶことによって回避する。
実を言えばこのドリルを用いた各種攻撃こそが投げ矢が残っていない原因の一端でもあり、同時に祝福を用いた攻撃を頻繁にするわけにいかない理由でもあったりする。
と言うのも2号のドリル攻撃にはとある追加効果が入っており、その追加効果は掠っただけでも効果を発揮されるのである。
「殲滅、殲滅ー!」
2号が再び武器を持った状態で回転を始める。
「くそっ、無い無い尽くしだ……な!」
2号はゆっくりと俺の方に近寄ってくる。
が、俺はその回転攻撃を壁を使って飛び越え、頭に飛び蹴りからのコンボを決める。
「反撃ー!」
「……っつ!くそっ!」
そして、2号の反撃ドリル突撃だが着地が僅かに遅れたため俺は僅かに掠ってしまい、2号が壁の中に消えた所で俺は急いでアイテムポーチを確認する。
「上薬草酒が持ってかれたか……。」
2号のドリル攻撃の追加効果……それはアイテムポーチの中に入っているアイテムをランダムに破壊すること。
この追加効果の為に俺が用意した回復アイテムや投げ矢の大半は破壊され、BPを回復する手段がないために祝福の行使を可能な限り渋らざる得なくなったのである。
おまけに言うと帰還石も既に破壊されているため、逃げる事も叶わなくなっている。
「来るか!」
「反撃ー!」
と、ここで2号が横の壁をぶち破って突撃してきたため、俺はギリギリのラインでそれを躱すと停止した2号を一回だけ殴りつけて距離を取る。
「ていうかいい加減倒れろよ……」
「突撃~!」
疲れを隠せない俺を余所に2号が武器を構えて突進してくる。その動きにダメージによる乱れは見てとれず、先はまだまだ長そうである。
そして俺は2号の攻撃を大きく回避した所で反撃のために駆け出すのであった。
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「ぜぇぜぇ……」
「ぐるぐる~?ぐるぐる~?」
戦いが始まってから既に2時間以上は確実に経過したと言える頃。
2号の動きに僅かな乱れが出始めると同時に2号はドリル以外の部分を全て引っ込め、代わりにその球体の様な体をドリルで埋め尽くしていた。
「お前の血は何色だー!」
そして始まったのは全身に生えたドリルを回転させることによって発生した力を生かして部屋中をまるでスーパーボールの様に跳ね回る攻撃。
もちろん、これもドリルによる攻撃の為、当たればアイテムが壊されることとなる。
「ちっ!」
だが、それ以上に問題なのはこの行動の不規則さにあった。
と言うのも単純に壁に当たって反射するわけでなく、ドリルの回転を利用しているために実際に反射するまで反射方向が読めないのである。
「お前の血は何色だー!」
「くっ!」
そして今もまたギリギリのところで俺は2号の攻撃を回避する。
おまけにこの攻撃は一回一回が長く、必ず俺から離れた位置で攻撃を終了させるために反撃すらマトモに出来ないと言う鬼畜仕様である。
と言うか何よりも2号の台詞がムカつく。
なんて言うかいい加減ムカつきすぎたし祝福の使用制限とかもう解除していいだろうこれ。
「ふう。」
俺は疲弊した精神を無理やり昂らせて集中力を戻し、どの方向から2号が来るのかだけを探る。跳ぶ先が分からないなら跳んでからこちらの行動を決めればいい。単純な話だ。
「お前の血は何い……!」
「んなもん……」
2号が俺の左手後方から突撃してくる。
それを感知した俺はシッコクノキョロウに闇を纏わせつつ振り返り、
「赤色だああぁぁぁ!!」
「ろおおおぉぉぉ!!?」
無詠唱【ダークスイングⅡ】を2号のドリルとドリルの間に無理やり叩き込んで吹き飛ばす。
「が……あ……」
吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた2号は手足に頭とドリルを壊れたように高速で出し入れし始める。。
「あああぁぁぁ!!?」
「【ハウリング】『アオオオォォォン!』」
そして一際大きな声を上げると自爆して周囲に破片を撒き散らしつつ四散した。
なお、破片にもしっかりと当たり判定が有りそうだったので、【ハウリング】付きの≪大声≫で吹き飛ばしておく。と言うか、吹き飛んだってことは当たり判定付いてたなこれ。もしかしなくてもメインで作ったスタッフは灯台や霧の湖と一緒か。
と、ドロップ品が手に入ったという表示が入ったところで2号との戦いは終わりとなった。
とりあえず、大量にアイテムが破壊されたので出来れば手近な神殿に戻りたい所である。
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取得アイテム(ヤタ)
殺人機械の歯車×6
殺人機械の装甲片×3
殺人機械の刃片×3
殺人機械のドリル×2
殺人機械のモーター×2
殺人機械の核×1
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Name:ヤタ
Skill:≪メイスマスタリー≫Lv.29 ≪メイス職人≫Lv.25 ≪四足機動≫Lv.29 ≪噛みつき≫Lv.27 ≪嗅覚識別≫Lv.26 ≪闇属性適性≫Lv.24 ≪蹴り≫Lv.26 ≪掴み≫Lv.25 ≪鉄の胃袋≫Lv.24 ≪投擲≫Lv.25 ≪大声≫Lv.25 ≪筋力強化≫Lv.25
控え:≪酒職人≫Lv.23 ≪嗅覚強化≫Lv.23 ≪方向感覚≫Lv.23 ≪BP自然回復≫Lv.14 ≪器用強化≫Lv.21 ≪握力強化≫Lv.23
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殺人機械と書いて『キリングマシン』と読みます。
ゲーム中ではルビも何もないので『さつじんきかい』としか読まれませんが。
12/08誤字訂正
 




