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Hunter and Smith Online  作者: 栗木下
第5章:狩人と狐
146/249

146:霧の湖-13

「ヤ……」

 その声が聞こえた瞬間眠っていた俺の体は瞬時に覚醒し、散々ショットフロッグからされていた狙撃へと対応するのと同じように反射的に右手で掴みかかっていた。


「タ……?」

 そして体の覚醒に若干遅れて覚醒した俺の頭が知覚したのは口を開けた状態で固まっているミカヅキとそのミカヅキの胸に向かって俺の右手が伸ばされているという状況。


「……。」

「……。」

 俺もミカヅキもその状況に思わず思考停止して固まっていた。


「ヤタ……。」

「!?」

 ミカヅキの口から普段接しているのと同一人物とは思えない程威圧感に溢れた声が聞こえる。

 俺の意識はその声で復帰し、今の状況からどうすれば脱せるかをすぐさま考え出す。


 一先ずだ。そう、この堅い胸から急いで手を放して謝……ん?堅い?


「良かったですね。きちんとセクハラ防止のプログラムが働いていて。」

 俺は今の状況をよくよく確認してみる。

 まず俺の右手はしっかりとミカヅキの胸に伸ばされている。

 が、触れる直前に障壁の様な物がミカヅキの胸と俺の手の間に張られており、俺の目の前にはハラスメント行為に対する警告文が表示されたウィンドウが出て来ている。

 つまり、俺の右手はミカヅキに触れているようで触れていない。


「で、何時まで触っているつもりですか?」

「っつあ、すまん!」

 俺はミカヅキの言葉に慌てて手を退く。するとそれに合わせて警告文も消え去る。


「まったく。ソロだから警戒心が高めなのは分かりますが、セーフティポイントでもこれは流石に高すぎですよ。」

 ミカヅキが呆れたようにそう言う。


「すみませんでした。それで、ミカヅキはどうしてここに?」

 俺は謝りつつも何故ミカヅキが霧の湖に居るかを聞く。

 俺の記憶が確かなら血赤のベノムッドを倒しに行くとか言っていたと思うんだが……


「本当ならそうしたかったのですが、護衛として頼まれたので。」

 俺の言葉にミカヅキはそう答える。

 にしても護衛?となると護衛対象は……


「ああ本当だ。なんか30人ぐらいこっちに向かって来てるな。」

「流石の≪嗅覚識別≫ですね。」

 俺が周囲の匂いを探ると、クエレブレのゲートが有る方から大量のプレイヤーの匂いがしてくる。

 そしてしばらくするとプレイヤーたちが霧の中からセーフティポイントの中に現れた。



----------------



「ということなの。」

「なるほど。」

 霧の中から現れたプレイヤーたちはその大半が一般には生産職と呼ばれるタイプのプレイヤーたちだった。

 その中で俺は今アーマさんと話をしている。


 で、彼らが来た理由だが何でも霧の湖と沈没船で手に入る素材が優秀だという事が判明し、それらを使った各種アイテムを大量生産するために今回は来るのが比較的楽な霧の湖での採取ツアーの様な物が企画されたらしい。


「それにしてもよく生産職メインでクエレブレを倒せましたね。」

「何人か死に戻りしちゃったけどね。」

 なお、クエレブレに関しては大量の消費アイテムをフル活用することによって多少の犠牲を出しつつ倒したらしい。

 というか大量の杖を用意して祝福を放ったら≪装備変更≫で次の杖を出して再び祝福を放つマシンガン戦法とか俺にはいろんな理由で無理な戦法だわ……


「それでヤタ君の方は何か新しい発見とかあった?」

「ああそう言えば。」

 そこで俺は白霧鉄が【ダークエンチャント】によって変化したことをアーマさんに伝える。


「ふうん……」

 するとアーマさんはすぐに他の職人を何人か呼び、何か話し合いを始める。

 恐らくだが今俺が出した話を他の職人にも話しているのだろう。


「それにしても祝福の影響で変化するとは面白い素材ですね。」

「数が集まればどうなるか楽しみですねぇ。」

 と、ミカヅキとアステロイドが近づいてくる。

 ちなみにハレーに関しては今回は別行動だそうだ。何でも前線組が大量に矢玉を求めてきたとかで全力で生産中らしい。


「そう言えば二人はこれからどうするんだ?」

 俺はミカヅキと若干だが雰囲気が変わったような気がするアステロイドに今後の予定を尋ねる。

 と言っても二人は職人たちの護衛役だそうだし、護衛役という事はこれからアーマさんたちと一緒に職人神の神殿まで戻るのだろうが。


「私もアステロイドもこれからはフリーですね。」

 だが、ミカヅキの言葉は俺の予想と違うものだった。


「帰還石と言う便利なアイテムが出来たおかげで護衛が片道で済むようになったのはありがたいですよねぇ。」

 しかもアステロイドの口から聞き慣れないアイテムの名前が出てくる。

 と言うか帰還石ってもしかしなくても……


「アステロイド。ヤタが混乱しているようなので、色々と説明する必要があるようです。」

「ですねぇ。」

 そして俺の混乱を察してかミカヅキの説明が始まった。


 曰く、帰還石とは≪錬金職人≫がつい先日作成法を確立したアイテムである。

 で、帰還石はその名の通り使用すると使用したパーティを死に戻りのポイントとして設定した場所まで転送する使い捨てのアイテムとのこと。

 そして今回はそれが各PTに一個ずつ事前配布されたそうで、護衛役の分はアーマさんたち職人たちから報酬の一端として渡されたそうだ。


「すげえ便利だな……」

 とりあえず帰還石に関して俺が思うのはそんなところである。

 だって帰還石一個あればわざわざデスペナを喰らって帰る必要とか無くなるわけだし。


「で、ヤタは今日はどうする予定ですか?」

「ん?俺か?」

 ミカヅキが俺の予定を聞いてくる。

 うーん。帰ってから伝えようと思った情報はもう伝えられたしな。となるとだ。


「レベル上げでもいいけど今日はボスの百目狐に挑む予定。何なら一緒に行くか?」

 憎き百目狐を今度こそ噛み殺しに行くべきだろう。


「そうですね。道中の敵と戦ってみて問題なく相手できるようなら一緒に挑んでみてもいいかもしれませんね。」

「新しいボスですかぁ……どんな攻撃をしてくるんでしょうね……」

 ふむ。ミカヅキは乗り気で、アステロイドはある意味変わらずか。


「じゃあ、とりあえずボスゲートまで一緒に行くか。」

「ですね。」

「そうしましょうかぁ。」

 そして俺たちはアーマさんたちが帰還石で帰るのを見送ると百目狐のボスゲートが有る方面へと向かって移動を始めた。

ラッキースケベ何て起こらんよ

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[一言] 起こって欲しかった(血の涙)
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