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Hunter and Smith Online  作者: 栗木下
第5章:狩人と狐
133/249

133:霧の湖-8

『あ……来……』

 俺の意識が浮上すると共にノイズ交じりの声が聞こえ、ほぼ砂嵐な視界が俺の前に広がる。


『高……ク……ヤー……だか……』

 微かな材料から判断する限り声の主は女性で、場所は研究室の様な所だろうか?


『い……眠……』

 そして再び俺の意識は埋没していった。



----------------



「ーーーーー!」

「ーーーーー!」

「ん……?」

 目を覚ますと遠くから戦いの音が聞こえてきた。

 と同時に意識の覚醒に合わせて俺の鼻に戦っている人物たちの匂いが伝わってくるようになる。


「プレイヤー側は4人で、敵はヌマヒトガタたち。それにこのままだとショットフロッグも参戦するな。」

 俺はゆっくりと立ち上がると軽く柔軟体操をしてから完璧に意識を覚醒させる。


「じゃ、朝飯ついでに手助けするか。」

 そして俺はセーフティポイントの外へと飛び出し、感知したショットフロッグの居る場所へと≪四足機動≫を使って一直線に駆けだす。


「ーーーーー!」

「……。」

 しばらく走るとゆっくりとショットフロッグが口の中で卵を孵している姿が見えてきた。

 しかし、狙撃に集中しているためなのか俺にはまだ気づいておらず、ヌマヒトガタと戦っているプレイヤーたちも目の前の敵に集中しているために気づいていないようだ。


「っつ!気を付けてください!霧の中に敵が隠れています!」

 と、ここでプレイヤーの一人がショットフロッグに気付いたのか声を張り上げ、ショットフロッグに対応するために声を上げたのと別のプレイヤーが動き出そうとする。

 が、ショットフロッグの攻撃態勢は既に整っているため、今からでは攻撃を阻止することは出来ないだろう。


「ゲ……」

「ヒャッハー!朝飯だぁ!!」

「ゲ……ムググ!?」

「!?」

 だがまあ、その前に俺がショットフロッグの口を≪掴み≫で抑え込み、≪噛みつき≫で何度も何度も噛み付いてHPを削り取るのだが。


「え……な……」

 と、ここで霧の中からヌマヒトガタと戦っていたプレイヤーの一人が姿を現すが、その顔は驚愕に包まれている。

 まあ、お互い聞きたい事とかは色々あるだろうがとりあえず。


「ちょっと待ってろ。朝飯喰っちまうから。」

「ゲグー!?」

「あ、ああ……」

 満腹度の回復は大切である。ショットフロッグさんマジメイン食料。



-----------------



「で、アンタらは狩猟神の神殿側から来たプレイヤーって事でいいのか?」

 さて、ショットフロッグを食べ終わったところでヌマヒトガタたちを討伐したプレイヤーたちと合流である。


「ああ。俺たちはパニドフライを倒して霧の湖に入って来たんだ。」

 PTの一人、ギター状の楽器を装備したドレッドヘアーの男が俺の質問に答える。

 なお、さっき俺の姿を見て驚いていたのもこの男だ。


「分かった。ならとりあえずセーフティポイントがあっちにあるからそこで話をしよう。ここだといつ襲われるか分からないからな。」

「そうだな。そうしよう。」

 そうして俺はプレイヤー4人をセーフティポイントへと案内した。



------------------



「で、とりあえず自己紹介ってことでいいか?」

 でまあ、連れてきたところでまずは自己紹介タイム……なのだが。


「いや、アンタはしなくても大丈夫だ。『蛮勇の魔獣』は有名だしな。」

 と、ドレッドヘアーの男に言われてしまった。

 まあ、あれだけ暴れてれば有名にはなるか。どう有名なのかはこの際気にしないでおく。


「じゃあ、私たちについてまずは自己紹介するわね。」

 そう言ってこのPTの中で唯一の女性プレイヤーが前に出て、他の二人の男性はそのままだが、一人だけ女性から少し離れる。


「私は『鉄壁の歌姫』にしてボーカルのナーナン!」

 女性改めナーナンが背中に括り付けたスタンドマイク風の武器を抜いてそう言う。


「俺は7つの楽器を操る『虹色触手』にしてベースのテンタクルス!」

 ドレッドヘアーの男性が次々に持っている楽器を≪装備変更≫を使って変えながら演奏する。


「ワイは激しく音楽をかき鳴らす『爆走ギター』にしてギターのバクーハ!ちなみに似非関西人やで!」

 もう一人のアフロヘア―の小さ目の男性が激しくギターを演奏しながらポーズを決める。


「「「3人合わせて『狩人行進曲(ハンターズマーチ)』!」」」

「さあ、どんな戦いでも私たちのライブで楽しく彩ってあげるわ!」

 そして何故か後ろで爆発が起こりつつ3人そろって決めポーズ。

 ああうん。間違いない。この3人は同類だ……誰のとは言わないが。


「で、アンタは?」

 俺は一人離れていた鳥風の被り物を被り、背中に杖を付けた男性に顔を向ける。


「あ、私は雇われの風使いでトゥートゥーと言います。普段の所属は情報班で、今回はマッピング役もしています。以後お見知りおきを。」

「あ、どうもです。」

 トゥートゥーさんの丁寧な答えに俺も思わず頭を下げつつ答えてしまう。


「蛮勇さんノリ悪いなぁ。この前の宴会でも私たちの演奏はあまり耳に入ってなかったみたいだし。」

 ナーナンが非難の目を向けつつそう言う。

 ん?てかこの前の宴会……?


「ああ、スノクワイバーン戦後の宴会で演奏してたプレイヤーたちか。やっと思い出したわ。」

 うん。そう言えばあの時ライブをしていた集団が居たな。まさかここまで来れるプレイヤーだとは思っていなかったから顔とか全然見てなかったわ。


「まあ、『月戈の暗殺者』に『堅実なる剣士』の二人と喋っておったし、しゃあないか。」

 バクーハがやれやれと言った表情でそう言う。

 と言うかいつの間にかユフにも二つ名付いたんだな。


「何だっていいさ。」

「そうですね。そう言った話は一先ず後回しにしましょう。」

「そうね。本題を優先すべきよね。」

「やな。」

「?」

 俺以外の4人は宴会に関する話はこれでお終いと言った感じでそれぞれ地面に座り、俺もつられてその場に座る。


「で、本題って何だ?」

「では、単刀直入に聞きます。」

 ナーナンが漏らした本題と言う言葉に俺は反応して問いかけ、それにトゥートゥーさんが応じる。

 トゥートゥーさんの真剣な表情に俺も思わず身構える。

 そしてトゥートゥーさんが紡いだ言葉は……


「私たちと組みませんか?」


 思いもよらない物だった。

テンタクルスは掲示板にもちょくちょく出ております

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