131:霧の湖-6
「しかし見つからねぇなぁ……」
俺は霧の湖をセーフティポイントを探して彷徨っていた。
「と、またか。」
「ゲコゲコゲコ……」
ただまあ、当然ながらそうやって彷徨っていると大量の敵に遭遇するわけだが……既に何回も戦っている俺の身としてはヌマヒトガタは良いスキルのレベル上げ相手であり、ショットフロッグは美味しい食料扱いである。
「ほい終了。【ダークヒール】」
でまあ、当然のように多少の被弾はしても問題なく殲滅は出来、その被弾して減ったHPも戦闘終了後に【ダークヒール】を使って回復完了である。
「にしてもこれはそうだよな……」
で、今までの戦闘経験から俺は霧の湖に出現するモンスターに関して一つの仮説を立てる。
まず霧の湖に出現するモンスターは6種類。
その内、普通に遭遇するのはヌマヒトガタ、ショットフロッグ、キリウミの三種類。
まあ、こいつらに関しては散々戦っているから問題ない。
問題なのは未だ未討伐である残りの3種類。
海月に関してはとりあえずどう足掻いても無理ゲーなので放置しているが、恐らくは湖の中に入る事によって出現するモンスターだと考えていいだろう。
で、牛頭と馬頭に関しては推測だが……キリウミを倒した後に起きる周囲の霧の消失。あの瞬間に出現するかどうかの判定が行われるのではないかと思う。
というのも今日になってから何度かキリウミを撃破したのだが、初回と違って一回も牛頭も馬頭も出現しなかったのである。
「と、噂をすればか。」
とまあ、そんな事を考えていたら急に霧が深くなり、キリウミの匂いがしてくる。
「ぎきゅー!」
「ほい、ほい、ほほーい」
そんなわけで俺はキリウミの射撃攻撃を避けてから、跳び蹴り、噛み付き、メイス攻撃とコンボを決めて撃破する。
「ブモオオオォォォ……」
「と、来たか。」
そして霧が晴れるのと同時に牛頭がその姿を現す。
うーん。これは確定かな?
となると最初に牛頭馬頭揃って出た俺はどんだけ運が悪いんだろうな……。
「ブモオオォォ!」
「おっと。」
牛頭が俺に向かって斧を振り下ろしてくるが、俺はそれを体を横にして紙一重で避ける。
にしてもこの斧。真っ白で綺麗だよな。ドロップ品で出てくるならぜひ回収して売りたい。
「ブモ……オ!?」
「ふん!」
続けて牛頭が横に斧を振ろうとするのを見て、俺は牛頭の足元に蹴りを当てつつ牛頭の後ろに移動する。
「ブ……」
牛頭が俺を攻撃しようと振り向く。
「ま、とりあえずは地道に削りますか。」
が、その前に俺はメイス、≪蹴り≫、≪噛みつき≫で三連攻撃を決めてから再び牛頭の後ろに移動する。
味?勿論牛肉です。
「ブ……」
うん。やはりと言うべきか何と言うべきか。
攻撃方法が攻撃方法だから後ろに回り込まれるとどうしようもないらしい。また、俺を攻撃するために方向転換をしているし。
「まあ、それなら節約しながら戦わせてもらうかね。」
「ブモオオォォ……」
そして俺は宣言通りに凄く地味な戦いをする事となった。
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「ブモオオオォォォ!!」
「うおっ!何だ?」
と、牛頭との戦闘開始から10分ほど経過した頃。突然牛頭が叫び声を上げ、左手に霧が集まっていく。
「げっ」
そして形成されたのは右手に持っている物と同じ巨大な斧。
「ブモモオオォォ!」
「うおおおおおぉぉぉいぃ!」
で、そんな物を生み出した牛頭は当然のように斧の二刀流で自分の周囲を縦横無尽に薙ぎ払い、俺は急いで距離を取る事によって牛頭の攻撃を回避する。
「ブモオオォォ!」
「雑魚敵が火事場モードとかどういうエリアだよ……」
牛頭が距離を取った俺に再び攻撃をするために突撃してくる。
それに対して俺は≪四足機動≫を発動出来る体勢を取る。
「ブモッ!」
「ふん!【ダークスイングⅡ】」
牛頭が右手の斧を振り下ろす。
俺はそれを左に跳んで避けると牛頭に接近して【ダークスイングⅡ】を当てる。
「ブ……」
手ごたえは十分にある。が、今まで削ったHPからするとたいして痛手にはなっていないだろう。
「ブモオオォォ!?」
そのため俺は一気に戦いを決めるために続けて≪蹴り≫と≪噛みつき≫も併用して攻撃を仕掛け、牛頭のHPを一気に削り取っていく。
「ブモオオォォ……」
「ふう。」
そして既に火事場モードに入るほどHPが減っていた牛頭はそのHPが0になり、その場で倒れる。
「さて、剥ぎ取りだな。」
俺はメイスを収納して、代わりに『剥ぎ取りの手』を取り出して、牛頭の体に触れて素材を回収する。
「ん?」
が、牛頭の体は消えない。どうやら雑魚の癖に牛頭は2回も剥ぎ取り出来るらしい。
と言うわけで再度触れてもう一つ素材を回収する。
そして回収できたのはこんなアイテムだった。
△△△△△
キリゴズの肉 レア度:3 重量:1
キリゴズの肉。まるで牛の霜降り肉のような味がする。
食べると満腹度+20%
▽▽▽▽▽
△△△△△
キリゴズの角 レア度:3 重量:1
キリゴズの真っ白な角。未知の金属が含まれているらしく、大きさの割に軽い。
▽▽▽▽▽
キリゴズ……漢字だと霧牛頭か?まあ、1対1なら何とかなる相手だったな。
で、とりあえず持ち帰れたら肉はコッチミンナ行きだな。アイツならうまく料理できるだろ。
そして俺は再び霧の中を移動し始めた。
キリゴズの肉はランスビーフの肉よりも上質です。