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Hunter and Smith Online  作者: 栗木下
第5章:狩人と狐
127/249

127:霧の湖-2

 俺は霧の湖を足場を確かめながら慎重に進んでいく。

 と言うのもどうやら霧の湖はエリア全域に湖が広がっているのはほぼ間違いないようなのだが、足場に関しては入り口付近の木造桟橋以外にも、ビルの屋上の様な場所(湖面の下に沈んでいる建物も見えた)、クエレブレ戦でもあった巨大なハスの葉などが足場として設置されており、それらの足場は決して地続きではなく時折飛び移っていく必要があるのため、きちんと次の足場の位置を見極めておく必要があるのだ。


「にしても敵が来ないな。」

 で、霧の湖の探索を開始して既に30分ほど経過しているのだが一向に敵に遭遇しない。

 ≪嗅覚識別≫は確かに敵が居ることを俺に告げ続けているのにだ。


「こちらの様子を窺っているのか……?」

 そして、この状況を偶然敵の移動方向と俺の移動方向が一致しているために会わないと考えるのはあまりにも浅はかだろう。

 だから俺は今霧の向こう側に居る敵は様子を窺っていて、条件を満たせば襲ってくるのだと考える。


「まあ、それなら……だ。」

 俺はメイスの位置をいつでも抜ける様に調節してから、コンクリートっぽい石系の素材で出来た足場に両手を着くと、≪嗅覚識別≫に集中する。

 現在俺の周囲に居るモンスターの数は3。いずれも霧で見えない程度に離れた場所で動きを止めている。


「一気に行く!」

 そしてその内の一体に狙いを定めると全身のバネを生かして一気に駆け寄る。


「ヌ!?」

「ゴーレム!?」

 駆け寄った先に居たモンスター。それは全身が泥で作られた人型のモンスターであり、その手には剣のような物が握られていた。


「何だっていい!今はそんな事は重要じゃない。」

「ヌガ?」

「げっ……」

 俺はそのまま泥人形に近寄るとメイスを引き抜いて叩きつける。

 が、その柔らかい体にメイスの攻撃による衝撃は効果が薄いのか泥人形は平然としている。

 闇属性分に関しては……分からない。


「ヌッ!」

「よゆ……うおっ!」

 反撃と言わんばかりに泥人形が拙い動きで剣を振ってくる。

 俺は当初それを簡単に躱せると思っていたが、俺に届く直前に剣の位置が急に変わって俺に迫ってきたために慌てて大きく身を翻して避ける。


「ヌー……」

「ああ、なるほど。泥だから伸縮自在なのね。」

 俺は改めて泥人形を見る。すると泥人形の手は最初に見た時よりも細くなる代わりに長くなっていた。


「とりあえず何が効くかを調べるか。」

 俺は石製の足場の具合と周囲の泥人形と思しき敵の動向を確かめつつメイスを構え直す。


「ヌッ!」

「ふっ!」

 再び泥人形が手を伸ばして切りつけてくる。

 俺はそれを普段と違って大きく避けると、そこから飛び蹴りを泥人形の頭に繰り出す。が、これも泥人形の柔らかい体には効果が薄いようである。


「まずっ!」

 続けて≪噛みつき≫を人で言う所の首を一応狙って繰り出し、距離を取りつつその肉を齧り取る……が、やはり泥だけあって不味い。というか≪鉄の胃袋≫のおかげで問題無いが無かったらたぶんダメージを受けてるなこれ。

 ただ、効果はメイスや≪蹴り≫よりも有りそうだ。


「ヌー……」

「いずれにしても地道に攻めるしかないか。」

 そして泥人形が攻撃の構えを取ったのに合わせて俺も再び構えを取った。



---------------



「はぁ……予想通りだけどやっぱり強いな……。」

 結局泥人形を討伐できたのはその後4,5分ほど攻撃を続けた後であった。

 これはメイス、≪蹴り≫の効果が薄く。≪掴み≫は剣の部分しか掴めないという相性の悪さも有るだろうが、それ以上に実力差が有るためだと俺は感じた。


「まあ、考えてみれば実力不足は当たり前なんだけどな。」

 ただ、クエレブレの実力が三神殿のボス以上であることを考えてみればこれは当たり前の事実でも有る。

 というか、運営側の想定していた突入時期は絶対三神殿関連……いや、灯台のイベントが終了してからだな。これ。


「とりあえず剥ぎ取るか。」

 俺はメイスを納め、『剥ぎ取りの手』を取り出して泥人形の身体から素材を剥ぎ取る。


△△△△△

ヌマヒトガタの泥 レア度:3 重量:1


ヌマヒトガタの体を構成する泥。きめ細かく高級な陶器の素材として珍重されている。

▽▽▽▽▽


 陶器……ええと≪食器職人≫とかあったっけ?流石に興味の無い分野の職人系スキルまでは覚えてないな。

 とりあえず、武器の素材としては土・水辺りの属性素材として使えるかもな。泥だし。


「さて、それじゃあ、次の相手に行き……うおっ!?」

 そして、次のヌマヒトガタの元に行こうと思い、『剥ぎ取りの手』を外したところで俺はヌマヒトガタ以外の臭いを感じて反射的にメイスを抜いて振り上げていた。

 と、同時にメイスに何かが当たって潰れた感覚と強い衝撃が俺の体に伝わってくる。慌ててHPを確認すると僅かだがHPが削られていた。


「ゲコゲコゲコ……」

「ちっ……」

 蛙と思しき鳴き声と共にヌマヒトガタが居る場所よりもさらに奥の場所で何かが動いてこちらから離れていくのを感じた。

 と、同時に先ほど別のヌマヒトガタと交戦していた際にはほぼ微動だにしていなかったヌマヒトガタがこちらに向かって動き出しているのを俺は鼻で感じ取る。


 俺はこちらを狙撃してきたと思われる蛙を追う事を諦め、こちらに接近して来ているヌマヒトガタに向かって武器を構える。

 検証と考察を重ねる必要はあるが、現状の推移を見る限りではヌマヒトガタは蛙の狙撃行動が行われると行動を開始すると見てよさそうだ。


「「ヌー……」」

 べちゃりと言う音と共に2体のヌマヒトガタが俺が今居るのと同じ足場に飛び移ってくる。

 その手に握られているのは両方とも先ほどの個体と同じく剣だ。どうやらヌマヒトガタには持つ武器による個体差が無いらしい。


「「ヌッ!」」

「一気に攻める!【ダークスイングⅡ】!」

 ヌマヒトガタが2体とも勢いよく手を伸ばして切りつけてくる。

 俺はそれを片方のヌマヒトガタに接近しつつ回避すると、【ダークスイングⅡ】によって大きな闇を纏ったメイスで殴りつける。


「ヌゴー……」

 殴られたヌマヒトガタの上半身が人では有り得ないほど背中側に折れ曲がる。

 どうやら吹っ飛びはするが、やはり打撃属性部分の入りは悪そうだ。


「ヌッ!」

「甘い!」

 俺の後ろでもう一体のヌマヒトガタが剣を振り上げ、切りつけようとしてくる。

 が、俺は剣の柄部分を蹴る事によって軌道を逸らすと同時にメイスをヌマヒトガタの頭に突き入れて多少のダメージを与える。


「「ヌー……」」

「たくっ、本当に時間がかかりそうだ。」

 だが、2体とも何事も無かったかのように体勢を整えて剣を構え、俺もそれを見て油断なくメイスを構えた。

 まだまだ霧の湖の探索は始まったばかりである。

分かる方は分かるシリーズですよ。

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― 新着の感想 ―
ミス…霧が深くて主人公の髪がオレンジに見えるな…
[一言] 霧が濃いな……w
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