122:VS雪飛竜-2
さて、坑道から戻り、ハレーから頼んでいた物を受け取ると、期日まで俺はハイウォームカクテルを量産して自分で使わない分に関しては色々な所に売り払う事でお金を稼いでいた。
また、それと並行して職人街で対雪飛竜やそれ以外でも使えそうなアイテムを見つけては購入していたのだが、まあそれは置いておいて。
「では、第2次雪飛竜討伐隊出発します!」
気が付けば2回目の雪飛竜討伐に出発である。
今回の参加メンバーはこの3日間の内に新たに職人神の神殿に到達し、一通りの探索を済ませたメンバーも混じっているため、前回よりもその数は大きく増えて80人ほどである。
そしてその中には多少装備が変わったミカヅキたちも混じっている。
恐らくだがミカヅキはサルファーサイス製で、アステロイドはストーンゴーレム製。ハレーは……ちょっと分からないな。
「それではヤタ。お互いに健闘をしましょう。」
「ああ。頑張ろう。」
ただまあ今回は俺とは別行動であり、ミカヅキたちはミカヅキたちで雪飛竜を討伐する予定である。
なお、道中は前回以上に楽で、相変わらずのソロプレイヤーである俺はハイウォームカクテルを呑むと大量のアイテムを持ったままボスゲートに真っ先に入った。
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ボスゲートを抜けた先で雪飛竜が俺の目の前に降りてくる。
「グギャオオオォォォン!!」
そして雪飛竜が咆哮を上げた所で戦いが始まり、雪飛竜が氷炎弾を放つために距離を取り始めると同時に俺は≪四足機動≫で素早く山道を登り始める。
「来たか。」
遠くから青白い炎の弾丸が俺を狙って飛んでくる。
さて、雪飛竜はこれでゲートの色が判断できるわけだが……
「1,2……」
1発、2発と氷炎弾が俺の後ろに着弾して巨大な氷柱を作り上げる。
そして移動を続ける俺の後ろに3発目の氷炎弾が着弾する。
「赤確定か。」
計3発の氷炎弾。それはつまりこの雪飛竜が4段階中の3段階目である赤色のボスという事だ。
「グギャオ……」
と、雪飛竜が掴みかかり攻撃の為に突撃してくる。
さて、まずは第一の策だ……。
「オオォォォン!」
「ふっ!」
雪飛竜が俺に向かって爪を突き立てようとした瞬間に俺は身を捩ってギリギリのレベルでそれを避け、舞いあがった雪が落ち着く前にアイテムポーチから白迷彩布を取り出して身に纏う。
「グギャ?」
雪飛竜の戸惑いが布越しにだが伝わってくる。
どうやら、雪飛竜は白迷彩布によって姿をくらましている俺の事を認識できていないらしい。
「グギャオー」
雪飛竜が何処かに飛び去って行く。
「……よし。」
そして2分3分と経過し、何も起こらない事を確認してから俺は布を纏ったままゆっくりと移動を始めた。
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「グギャオオオォォォ!」
「っつ!?」
俺の頭上を雪飛竜が飛び、俺は慌てて白迷彩布で体を包み込んで見つからないようにする。
「オォォォ……」
「ふぅ。」
戦闘……と言っていいのか微妙なところだが、雪飛竜との戦いが始まってから既に十数分経っているが、前回よりも俺の歩みは進んでいない。
「まあ、見つからない事を優先にしているから当然と言えば当然なんだがな。」
だが、歩みが遅い代わりに雪飛竜の攻撃は最初の確定部分以外はされてすらいない。
「と、来たか。」
そしてここで前回俺が死に戻りした場所。落とし穴付きの雪原に出る。
この雪原は広い代わりに障害物が無いため、対策がなければ簡単に雪飛竜に見つかってしまうだろう。
おまけに落とし穴に落ちれば恐らくはその音に反応して雪飛竜はやって来てしまい、視覚への対策をしていても見つかってしまうだろう。
「ま、だからこその対策その2だ。」
俺は布に隠れたままアイテムポーチから白く染め上げた10フィート棒を取り出す。
本来の10フィート棒は≪罠職人≫の店で買える茶色い棒なのだが、それでは雪飛竜に見つかる可能性がある(実際の所雪飛竜が色を知覚しているかは分からないが)ため、先日ハレーに白く染めてもらったのである。
「っつ!?」
「グギャオオオ……」
雪飛竜が再び俺の頭上を通っていく。
俺は慌てて布の下に隠れつつ、雪飛竜が過ぎ去ったところで雪原を10フィート棒を突いて落とし穴の有無を確かめていく。
「危なっ!」
と、突いた先の雪原が突然無くなる。どうやら落とし穴があったようだ。
というか、前回と落とし穴の位置が違うのかは難易度の差なのかそれともランダム設定なのか……多分後者だな。HASOスタッフだし。
「まっ、とにかく慎重に行くだけだ。」
そして俺は落とし穴付きの雪原を抜けた。
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「さて、ここからは白迷彩布じゃどうしようもないな。」
落とし穴付き雪原を抜けた先で俺を待っていたのは深い谷に架かった氷で出来た橋だった。
当然の話だが色が大きく違うため、今も上空を飛び回っている雪飛竜の目を白迷彩布で誤魔化すことは出来ないし、透明度が高いために下から覗かれてもアウトである。
「だからこその対策その3だ!」
「グギャオオオォォォ!!」
俺は白迷彩布を脱ぎ捨てる。するとすぐさま俺を発見した雪飛竜が頭上にやってくる。
「行くぜ!【獣人化:ウルグルプ】!」
「グググ……」
俺は【獣人化:ウルグルプ】を発動するとすぐさまアイテムポーチから職人栗鼠種のブランデー(巨狼肝中漬け)を取り出して一気呑みする。
本音を言えば完漬けにして10分間減少無効にしたかったアイテムだが、時間が無かったのでしょうがない。
それに例え漬け込み具合が途中でもこれで5分間だけだが、満腹度とSPゲージが減ることは無くなった。
「『飛ばしていくぜええ!』」
「グンギャオオォォン!」
俺が≪大声≫を使いつつ≪四足機動≫を用いた現状最も速い移動方法で移動し始めると同時に、雪飛竜が俺の後方でブレスを吐いたまま前進を始める。
「くっ……」
俺は必死に駆ける。が、徐々に距離は詰められている。どうやら相手の方が僅かに速いらしい。
だが、SPを気にしなくてもいいだけ他のプレイヤーより状況はマシだろう。
それにだ。俺のスキル構成なら……
「ふん!ぬぐぐ……」
俺は雪飛竜のブレスに追いつかれる直前に、氷の橋の縁に手をかけると体を橋の外に出し、更に橋の下にあった太い氷柱を掴んでブレスを回避し、雪飛竜が飛び去ると同時に橋の上に戻る。
言うまでもないが【獣人化:ウルグルプ】で強化されている上に≪掴み≫を持っている俺だからこそできる荒業である。
「今の内だ!」
雪飛竜は氷の橋の上を一掃し終えると今度は氷炎弾を放つためなのか遠くへと飛んでいく。
だが、その間に俺は氷の橋を渡り切る。
そして俺の後ろに氷炎弾が着弾したのを聞きつつ俺は雪山を全速力で駆け上がっていく。
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「ふぅ……」
雪飛竜の攻撃を避けつつ辿り着いた雪山の頂上は闘技場の様に雪が一面に敷き詰められている場所で、最奥には台座にハンドルの様な物が取り付けられた魔除けの灯が安置されていた。
「【獣人化:ウルグルプ】解除。」
既に職人栗鼠種のブランデー(巨狼肝中漬け)の効果が切れたため、俺は【獣人化:ウルグルプ】を解除した状態で魔除けの灯に近づく。
「グギャオオオォォォ!!」
「来たか。」
と、ここで雪飛竜が上空に現れ、俺に向かってブレスを吐こうとする。
「グギャ……!?グギャオ!!?」
が、ブレスが放たれる直前に魔除けの灯から帯状の光が放たれ、雪飛竜はそれに絡め取られて墜落する。
「グググ……」
雪飛竜が傷ついた体でゆっくりと立ち上がる。
しかし、結構な高さから落ちたにも関わらず雪飛竜の目からは戦う意思は失われていない。
「グルガ……」
「さあ、」
ただ、再び空に飛び上がろうとしても帯状の光に妨害されて飛び上がることは出来ないようである。
雪飛竜もそれを理解したのかこちらを睨みつけてきて、俺もそれを受けてクロノキョロウを抜く。
そして、
「グギャオオオオオォォォォォォ!!」
「ここからが本番だ!」
雪飛竜の咆哮と共に戦いの第2ラウンドが始まった。
後半戦に続きますよー




