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墓石へ

作者: 統一

 私が知っている風水がある。


 それは桃花水法と言われる中国より伝わる風水で、寝室で決まった方角に花瓶を置いて良縁を呼び込むという方法である。


 私は丑年、三角形や角ばった形の花瓶を、南の方角に置けば、やがて私の願望が叶うらしい。




 私は過去に、その風水を成功させた事がある。知人を通じて知り合った彼は、20代後半の営業マンだった。

 ある日、その彼が私に話したい事があると誘い、近くの霊園まで行く事になった。ある墓石まで辿り着くと、その墓石には彼の名字が、しっかり刻まれてあった。

 そして、彼は私に――


「僕と一緒に、この墓石に入ってくれないか?」


 と、プロポーズをして来たのだった。


 私は嬉しくなかった。

 だって、理想とは懸け離れたプロポーズだったから。

 これを切っ掛けに、私達は別れる事になった。

 今はもう音信不通である。




 風水を実行して1ヶ月。


 私と風水は相性がいいらしく、おかげで再び運命の出会いを果たした。

 30代半ばの、青年実業家である。あの時の彼よりも安心出来る存在だったが、理解出来ない部分が一つだけあった。それは、デートの最中いつも御経の本を片手に、読経している事だった。


 私が話し掛けると、一旦は止めるが、沈黙が流れると再び読経し始める。

 遂に、私は憤慨して、彼に問い詰めた。

 すると、彼は――


「知らない方がいいよ」


 と言った。

 私は気になって、何度も訊いてみた。

 今となっては訊かなければ良かったと後悔している。



 実は、私の背後に見知らぬ男がピッタリ憑いているというのだ。



 墓石らしき物から血塗れの顔を出し、私の髪を引っ張り、中に引き摺り込もうとしているという。


 まさかと思い、知人に連絡してみた。

 案の定、私の背後には、あの時の彼が憑いているようだった。



 私と別れた数日後、自宅マンションの最上階から飛び降り自殺をしたという。






過去の作品ですが、投稿してみました。

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