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キャラバン、

作者: りょりょ

 東京~渋谷~

 「臨時ニュースをお知らせいたします。」

 

<ピーポーピーポーピーポー>

<ザワザワザワ>


 「はあ?マヂかよ、あり得ねえっつーの…」

 「でさー、うちの彼氏がさー…」

 「おー兄ちゃん金だしなよ、さっさとさ!…」

 「いらっしゃいませーどーぞご覧下さーい…」

 「駅員何やってるんだよ電車来ねーんだけど…」

<ザワザワザワ>


今日は曇り...か。

どんな時でも、下にいる奴らは馬鹿ばかりだ。

自分が不利になったり、自分の都合と合わなくなるとすぐ勝手な行動に出る。

時間に迫られてるのか、有り余ってるのかわからない。

そんなに有意義に生きたいなら...ふふっ

みんな死んじゃえよ。


 「昨夜9時30分頃、渋谷駅、ハチ公口前で何者かによる無差別殺人事件があり、警察による厳重調査が進められています。今後もお出かけの際は充分お気をつけ下さい。」


 「物騒よねー怖くて外にも出れないじゃない。」

 「最近の日本は荒れ果ててきてるんだ、みんなこの不況に生き残るためピリピリしてるんだよ。」

 「あらっ!ずいぶんのん気ね、あなたも巻き込まれなきゃいいけどね。」

 「毎日そんなこと気にしてたら、生きてけないだけだ。」

 「ふーん。それより、海起きてこないわね、かーいー!!」


面白い...面白すぎる...ふふっ...ふふっ...笑いが止まらない。

お前たちが存在しようとしまいとこの世界は回る。

ぎゃっはっはっはっはっはっはっは...次は何しようかな。


 「なんだよ!!!早く起こせよ母さん!!!もう完璧遅刻だっつーの!!!これで23回目だぜ?どうしてくれるんだよ!!!」

 「何言ってんの!あんたが早く起きないからでしょ!あ、ちょ、海、朝ごはん!!!」

 「いらねーよ!!行ってきまーす!!!」

 「あ、もう!殺人事件あったみたいだから気をつけなさいよ!!」


 海は全力で家を飛び出していった。


<ガタンガタンガタン>

 「次はー渋谷、渋谷ー…」


 海の学校は渋谷にある香澄高校に通っている。あまり偏差値が高くなく通称カス高と呼ばれている。若者が集まる渋谷で自分も目立ちたいだけで高校を選んだ。自宅は渋谷区と、家から割と近いのも理由の一つだった。どの時間に電車に乗ってもたいてい友達が乗っているというあまり真面目ではない学校だ。今日もまた同じだった。


 「はあ..はあ..はあ...死ぬかと思った。」

 「よう!かーいーちん!おはー。」

 「はあ..はあ..何だ..統耶か..おはよう、また遅刻かよ!」

 「あーそーなんだよーってお前もだろって!」


 そんな毎日が緒方海の日常だった。学校に着いては遅刻で先生に怒られ、授業中は居眠り、放課後になれば渋谷の街をうろついて、女の子に絡んでく。そんな生活が彼にとっては平凡で楽しかった。

 悪魔に出会うまでは。


 「そーいえば知ってるか海ちん!?昨日のハチ公の殺人事件。」

 「あぁ、なんか母さんが叫んでたような、あんな人通り多いとこで殺して捕まらないとかどんだけ運良いんだよ。俺もそんな強運が欲しいもんだねぇ。」


 海は統耶と昨日の事件について話しているが、勿論2人ともまったく興味はない。自分は事件に関わっていない、だから自分には関係ない。これが当たり前だと思っている。当然、自分だけじゃなく周りの人も同じだと。


 「俺も欲しー!!最近なんてぇ、ラーメン屋のバイトでどんぶり割るは、自転車乗っててヤンキーに激突からの追いかけまわされるはでマヂついてないんだよー。あ、強運と言えばさー、2組の相沢、めっちゃ可愛い彼女出来てやンの!!!あれこそ強運。」


 統耶は人差し指を海の顔の前に立てながら言った。海も負けずに、自分の不幸話をした。


 「俺だって負けてねーかんな!!地下鉄で線路に携帯落としてグシャってなったり、買い直した携帯、防水だと思って風呂に入れながら使ってたらビリビリってなったり、新しい携帯買った帰り道、ヤンキーに絡まれてバキってやられたし、お前よりぜってー不幸だ…。」

 

 海は思い出すにつれて悲しくなり、落ち込んでいた。それを聞いた統耶は大爆笑していた。


 「ぎゃはははは!!つか携帯ばっかじゃん!!しかも、グシャとかビリビリとか効果音多いし。そりゃ短期間に携帯3台壊れれば不幸だわ。でも、風呂に入れながらのやつは自分が悪いんじゃね?ぎゃはははは!!!」


 「う、うるせーなー!!お前だってヤンキーに突っ込むとか馬鹿だろ!ちゃんと前見て走れっつーの。やっぱ訂正、俺のほうがまだましだ。」


 2人はどっちが不幸じゃないか、争っていた。たいして変わらない、どっちもどっち、こいつら馬鹿だ、大声で言い争っていた2人の会話を聞いていた周りの生徒が苦笑いを浮かべながら思っていた。


 何も変わらない日常が今日も過ぎると思っていた。

 そして、放課後になり、海は一人学校の玄関を出ようとした時だった。


 「おい、緒方!今日こそ部活来てもらうからな!!」

 「うっ!山野先輩…」


 海は実はバスケ部。後ろから声を掛けてきたのは、そのバスケ部のマネージャー、山野未久だった。

 香澄高校でも五本の指に入る顔立ちをしていて、それに魅かれ、バスケ部に入部した部員が多かった。海もその中の一人でバスケットボールは全くの未経験だった。練習に参加したのは、最初の一回のみで、いわゆる幽霊部員だ。


 「ちょ、ちょっと今日は用事がありまして…ごめんなさい!!!」

 そう捨て言葉を残して、海は走って逃げた。

 「あっ、緒方ー!!ったくもう!次見かけたらただじゃおかないんだから。」

 と未久が言ったその時だった。

 「今の子今日死ぬかもね。次は無いと思うよ。ふふっ」

 寒気のするような空気が流れ、未久が後ろを振り向くと全身黒い服装をした男が立っていた。


 「なにあんた!!部外者は学校立ち入り禁止なんだけど!!つか死ぬってなんであんたがわかるのよ!?ふざけたこと言わないで、気持ち悪い、さようなら。」


 未久はその場を後にした。男はただ不気味な笑みを浮かべ何も言わず立っているだけだった。未久は8メートルくらい歩いたところでもう一度男を見ようと振り向いた。が、既にそこに男の姿はなかった。元の場所に戻ったがどこにもいない。本来、数秒の間にその場所から動いたならまだ四方八方見渡せば姿は見えるはず、しかしその数秒の間に男は姿を消した。


 「はぁはぁ、危なかったー。危うく捕まるとこだったぜ。部活なんてやってられっかツーの。」


 全力で逃げた海はセンター街に向かっていた。今日は他校の女子高生、瞳と遊ぶ約束をしていた。疲れながらも歩いてセンター街に着き、約束をした瞳を探した。瞳とは前に合コンで知り合った仲だ。海のどストライクだった。着いてから5分くらい探すとメッカの前に彼女はいた。


 「よう!瞳ちゃん!!悪い、待たせた?」

 「ぜーんぜん!どこいこっか!?」


 海は正直早く付き合ってラブラブなプリクラを撮りたかったが、まだ早いと断念した。メッカの前で待ってるなんて自分を誘ってると勝手に勘違いをし、すごく燃えていた。


 その後、109で買い物やゲームセンターで遊んだり、ご飯を食べたりで時間は午後9時を回っていた。


 「今日はありがとね。買い物付き合ってくれて。また遊ぼうね。ばいばーい!!!」

 

 目的を果たすことができずに海の楽しい時間は終わった。


 「はぁ…溜息しか出ないや。なーんか脈なしって感じだったしなー…まぁ楽しかったからいいや。俺も帰ろ。」


 海は帰ることにし、地下鉄の渋谷駅へと向かった。


 「まもなく2番線に9時31分発北千住行きが参ります。危ないですから黄色い線の内側でお待ちください。」


 海はホームで携帯をいじりながら電車を待っていた。この時間帯の渋谷駅は人が沢山いてあまり身動きができなかった。しかし海はトイレに行きたくなり、一本電車を見送ることにした。


 「まっ、次でいっか。」

 込み合うホームで人と人の間を縫うようにして歩き、階段を上っていった。


 「電車が到着いたします。黄色い線まで下がってくださーい。」


 <パアアアアアアア>


 <バチッ>


 駅員がアナウンスをし、電車のクラクションが鳴り響いた瞬間、ホームの電気が消えた。ホームはざわつき始めた。  

 




 


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