天に昇る
「ニャ〜オ ニャ〜オ」
ハルくんの鳴き声が聞こえたと思ったら、ゴロゴロゴロと喉を鳴らしながら寝ている私の顔に身体を擦り寄せて来た。
寝ていた私は目を覚まし瞼を開く。
『アレ? 頭痛が無い』
バクダン酒の飲みすぎでしっちゃかめっちゃか痛い筈の頭痛がない。
なんでだろ? って思いながら身体を起こしたら、『え? えぇぇぇぇ! わ、わ、私、そ、空を飛んでるー』空を飛んでた。
バクダン酒の飲みすぎでツイに死んだか?
「ニャアン」
イヤイヤ、それだったらハルくんが此処に居るのはおかしい。
アメリカとイランの戦争が終わらずガソリンが配給制になった所為で、私は勤めていた運送会社をクビになった。
もう少しでデコトラに改造できるトラックの頭金と改造費が貯まるところだったのに。
それで自棄酒を呷る日々が続いてた。
その自棄酒も物価がドンドン高くなっている所為で真っ当な酒が手に入りづらいってのもあって、手に入りやすくて安いカストリ酒通称バクダンを飲んで過ごしていたから。
闇で手に入れたバクダン酒にメチルアルコールが入っていて何時死んでもおかしくなかったけど、ハルくんはアルコールの匂いを嫌がり1滴も口にして無いから死ぬはずが無い。
死んでないって事は夢か?
バチン!
自分のホッペタをひっぱたく。
「痛い!」
「ニャ〜〜ン」
ハルくんが甘えた声を出しながら私の胸に飛び込んで来た。
胸に飛び込んで来たハルくんを抱きしめモフる。
痛いし、ハルくんをモフモフできるって事は夢でも無い。
って事は本当に空を飛んでるってこと?
まぁいいや、考えのは後にして、今はハルくんと一緒にこの大空を楽しもう。
眼下に見えるはずの地上は霞みかかかってるようで見えないけど、頭上にはサンサンと春の暖かい陽光を降り注ぐ太陽があり、何処までも続く青空が広がっている。
私はハルくんと手と手を取り合って輪になってグルグルと回ったり、じゃれついて来たハルくんを背中に乗せて両手を横に広げ、暖かい陽光を降り注いでいる太陽に向け飛んだりしていた。
沢山の人や動物が大空を舞っている。
アメリカとイランの戦争を火種に戦火は世界中にドンドン拡大して行った。
その結果、何処の国が最初にボタンを押したのか今となってはどうでもよい事だが、全面核戦争が勃発。
大空を舞っている人や動物は着弾した核兵器によって一瞬で蒸発し、自分が死んだことに気がつかないまま天に昇って行く魂たちだった




