第9話:【断絶】和平交渉の使者と魔女の哄笑
本日も驚異的な勢い、ありがとうございます!
9時台だけで 23 PV、この「いま読まれている」感覚が執筆のエネルギーになります。
第9話では、ついに王国側が「和解」という名の身勝手な取引を持ちかけてきます。
聖女だった頃のリアナなら頷いたかもしれませんが……今の彼女は「魔女」。
容赦のない突き放しをお楽しみください!
王都から差し向けられた「使者」が魔女の森の境界に現れたのは、太陽が真上に差し掛かった頃だった。
かつて私が王宮で何度も顔を合わせた、老練な外交官の伯爵だ。彼は、血の雨に濡れ、泥に汚れた礼服の裾を震わせながら、見えない何かに怯えるように森の奥を見つめていた。
「……リアナ様! リアナ・フォン・エリス様! 国王陛下からの伝言を携えて参りました! どうか、お姿をお見せください!」
私は城のテラスから、その滑稽な姿を水晶球越しに眺めていた。
隣でアスタロトが、退屈そうに私の髪を指で弄んでいる。
「どうする、我が魔女よ。放っておけば、この男は恐怖で心臓が止まるだろうが」
「いいえ、それは勿体ないわ。せっかく『降伏』の味を届けに来てくれたんですもの。たっぷり味わってあげないと」
私は漆黒のローブを翻し、一瞬にして伯爵の背後へと転移した。
「……呼んだかしら、伯爵?」
「ひっ、ひいいいいい!」
伯爵は情けなく悲鳴を上げ、地面に這いつくばった。
かつて私が「聖女」だった頃、彼は私の謙虚さを「御しやすさ」と履き違え、鼻で笑っていた男だ。その彼が今、私の足元に額を擦り付けている。
「リ、リアナ様……。陛下は、先のことは全てエルナとエドワードの独断であったとおっしゃっています! 貴女様を処刑台へ送ったのは間違いだったと。どうか、この呪いを解き、再び王国の聖女としてお戻りいただきたい……。見返りとして、エドワードとの婚姻を認め、公爵の位を――」
「あはははは! あはははははは!」
私は、腹の底から湧き上がる笑いを抑えきれなかった。
婚姻? 公爵位?
国が滅びかけ、自分たちの命が惜しくなった途端、ゴミを見るように捨てた私に「戻ってこい」とは。
「伯爵。あなたは、一度割れた鏡が元に戻ると本気で思っているの? それとも、私の頭が火刑台の煙でいかれたとでも?」
私の瞳が紅く輝く。
足元の影が触手のように伸び、伯爵の喉元を優しく、けれど確実に締め上げた。
「……いい? 国王に伝えなさい。リアナという聖女は、あの日、あなたがたが火をつけた瞬間に灰になったわ。今ここにいるのは、あなたたちの滅びを願う魔女だけよ」
「ま、待って、お待ちください! ならばせめて、この血の雨だけでも……!」
「お断りよ。その血は、あなたたちが私を殺そうとした時に流れた、私の心の涙だと思って、一滴残らず飲み干しなさい」
私は、絶望に白目をむいた伯爵を森の外へと放り出した。
城へ戻ると、アスタロトが愉悦に満ちた笑みで私を迎えた。
「冷酷だな。だが、それでこそ私の魔女だ。……さて、次はどう動く?」
「和平の使者が無様に帰れば、国はパニックになるわ。……次は、王宮の中からエルナを引きずり出してあげましょうか」
私の復讐のリストから、また一人の名前が消える。
けれど、本当の地獄はこれからなのだ。
最後までお読みいただきありがとうございます!
「戻ってこい」という身勝手な誘いを一蹴したリアナ。
交渉決裂の報が王宮に届いた時、彼らはどのような顔をするのでしょうか。
次回、第10話:【告発】偽聖女の化けの皮と民衆の暴動。
ついにエルナが隠していた「不都合な真実」を、リアナが王都全土に暴露します。
本日、このままの勢いで更新を続けます!
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