第6話:【誘惑】魔王との毒ある夜
深夜帯にもかかわらず、連投にお付き合いいただきありがとうございます!
前話で王都を血に染めたリアナ。
復讐の興奮冷めやらぬ彼女を迎えたのは、美しき魔王アスタロトでした。
魔女と魔王。二人の距離が急速に縮まる、甘美で危険な夜のエピソードです。
血に染まった王宮を背に、私は夜の帳へと溶け込んだ。
魔女の森に佇む古城のバルコニー。冷たい月光が、私の頬にこびりついた乾いた返り血を白く照らし出している。
「……ふふ、あはははは!」
喉の奥から、抑えきれない悦びが込み上げる。
あのエルナの、絶望に引きつった顔。エドワードの、無様なまでの狼狽ぶり。
今まで私がどれほど尽くしても一度も見せなかった顔を、彼らは今日、恐怖という最高のスパイスを添えて私に捧げてくれたのだ。
「そんなに楽しいか、我が魔女よ」
ふいに背後から、低く甘い声がした。
振り返るよりも早く、強靭な腕が私の腰を抱き寄せる。
アスタロトだ。彼の体温は人間よりもわずかに低く、それでいて肌を焦がすような熱を孕んでいる。
「ええ、最高に楽しいわ。……アスタロト、あなたの言った通りね。守るよりも壊す方が、ずっと心が軽くなるわ」
私は彼の胸に身を預け、真紅の瞳を見上げた。
アスタロトは細長い指先で、私の顎をくいと持ち上げる。彼の顔が近づき、その漆黒の角が月明かりを遮った。
「お前はまだ、絶望の味を知ったに過ぎない。復讐とは、ただ相手を殺すことではなく、その心臓をゆっくりと握り潰し、生ける屍に変えていく過程を楽しむものだ」
彼の唇が、私の耳朶をかすめる。
ぞくりとした快感が背筋を駆け抜け、体の芯が痺れるような感覚。穏やかな愛とは正反対の、毒を流し込まれるような、それでいて離れられない強烈な誘惑。
「……教えてあげるわ、リアナ。本当の『地獄』への堕ち方を」
アスタロトの手が私の髪を掬い上げ、首筋へと降りていく。
彼が指先で描いた魔法陣から、闇色の霧が溢れ出し、私の体を優しく、けれど逃がさないように包み込んだ。
「今夜はまだ終わらない。王国の連中が、流した血の雨を必死に拭っている間に……お前には、さらなる深淵の力を授けよう」
彼の腕の中で、私は瞳を閉じた。
この男に魂を切り刻まれるのなら、それも悪くない。
城の奥深く、甘い薔薇の香りと獣のような気配が混ざり合う夜が更けていく。
明日、王都の連中が目にするのは、今日よりもさらに凄惨な「奇跡」になるだろう。
最後までお読みいただきありがとうございます!
復讐の炎に、魔王の毒が注がれる――。
リアナが手にするのは、一国を一夜にして滅ぼしうるほどの禁忌の力。
次回、第7話「【崩落】騎士団の全滅と王子の悲鳴」。
王国が誇る最強の騎士団が、たった一人の魔女の前に跪くことになります。
本日もまだまだ更新を続けていく予定です!
1作目の1,700 PV を超える勢いで、皆様に楽しんでいただけるよう全開で執筆します!
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