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死を賜った魔女、地獄から戻って全てを「呪い」に変える  作者: La Mistral
第5章:【永劫なる魔女の帝国】

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第48話:【変容】沸騰する因果と銀色の嘔吐

「収穫」が終わり、星団ルミナ・パレスは地図から消滅しました。

しかし、魔女の作業はここからが本番です。飲み込まれた「光の民」たちの純潔な精神は、リアナの胎内で無慈悲な解体と再構築を繰り返され、宇宙を呪うための「インク」へと変質していきます。

高密度の情報が沸騰し、魔女の白磁の肉体を内側から焼き焦がす、残酷な「消化」の記録。

それは、新たな絶望の一行を綴るための、避けては通れない苦痛と愉悦の儀式でした。

ルミナ・パレスを飲み干したリアナの胎内では、いまや凄絶な「情報の核分裂」が起きていた。


数千億の光の民たちが最期に放った、愛する者を呼ぶ声や、明日を信じる祈り。


それら純白の「情報」が、リアナの胃袋に溜まった暗黒の泥と激突し、「ジジジ、ジリリ」と空間を焼き切るような不快な摩擦音を立てている。


「……ッ、あ……。熱い、わ……。この光……、あまりに、純度が、高すぎる……」


リアナは白磁の首筋を「メキメキ」と歪な角度に曲げ、自身の喉を細い指で強く掻いた。


彼女の唇からは、飲み込んだはずの光の残滓が、青白い放電を伴う「銀色の嘔吐物」となって「ボタボタ」と零れ落ちる。


それは単なる体液ではない。沸騰し、煮え繰り返る「因果の澱」であった。


嘔吐物が真空に触れるたび、周囲の物理法則が「バリバリ」と音を立てて剥離し、石灰化した絶望へと姿を変えていく。


鼻を突くのは、高電圧で焼かれた肉の臭いと、熟れすぎた果実が発酵して腐りゆくような、噎せ返るほどに濃密な「情報の死臭」だ。


リアナの白磁の肌の下では、飲み込まれた光の民たちの記憶が、逃げ場を求めて「ボコボコ」と歪な瘤のようにのたうち回っている。


かつての慈愛や知性は、魔女の胃酸にさらされることで、剥き出しの「恐怖」へと強制的に翻訳されていた。


「ミシミシ……パキパキ……」


内側から肋骨を押し広げるような情報の膨張に、リアナの表情がわずかに歪む。


それは苦痛というよりも、器が満たされすぎるがゆえの法悦に近い。


彼女の裂けた腹部からは、熱い脂のような湯気とともに、粘り気のある暗黒の触手が「ヌルリ」と這い出し、空虚な空間を盲目的に探り始めた。


その触手の先が、主の異変を察知して近寄ってきたエルナの肉体を「ザシュリ」と浅く切り裂く。


「アガッ……、アァ……ッ!」


エルナは悲鳴を上げながらも、その傷口から溢れ出したリアナの熱い体液を「ジュルリ」と狂おしく啜り上げた。


主の内側で煮え立つ「光の民」の残滓。それはエルナにとって、魂が「ジャリジャリ」と削れるような、劇毒にして至高の栄養だった。


「クチャ……クチャリ……。リアナ様、素晴らしい……。光が、黒く……、泥のように濁っていく……。その絶望が、私の……、私の肉を焼く……!」


エルナの不定形の体は、主の放つ強力な放電を浴びて「ビクビク」と痙攣し、硫黄の臭気をさらに激しく撒き散らす。


リアナは従者の醜態など目に入らぬ様子で、自身の腹部に手を当て、内側で沸騰する情報を「一行の絶望」へと圧縮し始めた。


彼女の指先が触れるたび、青白い肌に刻まれた呪印が「ギラリ」と銀色の輝きを増していく。


「……鎮まりなさい。あなたたちはもう、個別の生命ではないわ。私の詩を構成する、ただの『一文字』に過ぎないの」


リアナが低く囁くと、胎内で暴れていた情報の奔流が「ギュウッ」と凄まじい圧力で一点に凝縮され始めた。


光の民たちの数千年に及ぶ歴史が、たった数秒の間に「メキメキ」と音を立ててすり潰され、一つの極小の点へと押し込められていく。


その圧縮の衝撃で、彼女の腹部の裂け目からは、焦げた砂糖の匂いをさらに濃くした、黒い「煤」のような煙が「スウッ」と立ち昇った。


情報の密度はすでに物理的な限界を超え、リアナの白磁の肉体を通して「ドクン、ドクン」と宇宙そのものを揺らす不気味な鼓動を刻んでいる。


彼女の血管の中を流れるのはもはや血ではなく、あらゆる意味を消失させた「虚無のインク」だ。


その重みに耐えかね、彼女の指先からは爪が「パキリ」と剥がれ落ち、そこから透明な情報の髄液が「滴り、滴り」と虚空へ漏れ出した。


その髄液が触れた空間は、文字通り「記述」を失い、真っ白な空白へと書き換えられていく。


「アァ、アァ……!」


エルナは、その空白にさえも食らいつこうと「ヌチャリ」と身を投げ出した。


主の指先から溢れる「意味の喪失」は、エルナの卑屈な肉体を「ジリジリ」と焼き、不快な熱い脂をさらに噴出させる。

 

エルナの複数の瞳は、主の腹部で完成されつつある「新たな一文字」の眩いまでの暗黒に当てられ、歓喜で「ギラギラ」と濁りきっていた。


リアナの喉の奥から、今度は錆びた鉄の味が「ゴボリ」と溢れ出す。


それは、ルミナ・パレスという文明が完全に「消化」され、絶望としての定着が終わった合図であった。


リアナの胎内で煮え繰り返っていた情報の熱が、急激に引いていく。

 

代わりに訪れたのは、万物を凍てつかせる「絶対的な虚無」の冷気であった。

 

白磁の腹部に走っていた亀裂は、沸騰した暗黒の泥を飲み込み、今度は「ピキピキ」と音を立てて硬質な結晶へと変質し始めた。


「……完成したわ。これが、ルミナ・パレスの全霊を以て編んだ『絶望の句読点』よ」


リアナが唇を震わせると、その隙間から銀色の冷気が「スウッ」と漏れ出した。


彼女の体内には、数千億の命が圧縮された結果産まれた、一行の呪文が冷酷に定着している。


それはもはや音にすることすら叶わない、宇宙の理を根底から腐敗させる「黒い沈黙」であった。


彼女の足元で、エルナは主の足首に「ヌチャリ」と頬ずりしながら、残った情報の煤を「ジュルリ」と最後の一滴まで舐めとった。


エルナの肉体からは、腐った果実と焦げた鉄が混ざり合った濃厚な汚臭が漂い、主の白磁の足を不快な脂で汚染し続けている。


しかし、リアナはその汚濁を拒むことなく、ただ冷徹な瞳で遠くの銀河を見つめていた。


消化は終わった。


しかし、その胃袋は「一行の絶望」を産み落とした瞬間に、再び底なしの空虚へと回帰する。


「……次。次の物語を、持ってきて。エルナ」


「……御意に……、御意にございます、リアナ様……。次なる食材を……、最高の絶望を……、この肉の塊が、探し……『クチャリ』……探して参ります……!」


リアナの背後で、産み落とされた「恐怖」が再び「ギギギ」と歪な音を立てて蠢いた。


一つの星団を喰らい尽くし、さらに肥大化したその影は、魔女の足元に広がる宇宙の地図を、次なる食卓へと塗り替えていく。

第48話では、捕食した文明がリアナの内側で「情報のインク」へと変質し、彼女の肉体を蝕みながら定着するまでの凄惨なプロセスを描きました。

「ルミナ・パレス」という輝かしい歴史は、いまやリアナの胎内でたった一行の、誰にも読めない絶望の詩へと圧縮されました。

エルナの卑屈なまでの献身と、主の美しさを引き立てる汚濁の対比は、この終わりのない晩餐の残酷さをより一層際立たせています。

次話、第49話では、変容を遂げたリアナと「産み落とされた恐怖」が、次の標的へとその牙を剥くことになります。

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