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死を賜った魔女、地獄から戻って全てを「呪い」に変える  作者: La Mistral
第5章:【永劫なる魔女の帝国】

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第40話:【選別】巫女の祈りと魔女の接木

ようこそ、魔女が支配する天界の「加工場」へ。

 第40話では、惑星エリュシオンから収穫された「最上の素材」である巫女たちが、リアナの手によって神殿の一部へと作り替えられる光景を描きます。

 かつての英雄たちが柱となり、王たちが壁となったこの神殿に、今度は「信仰」という名の新たな不協和音が加わります。清浄な魂が絶望の建材へと変質していく、その凄惨な美学を五感のすべてでお楽しみください。

次元の門から天界の石畳へと吐き出された巫女たちは、潮溜まりに打ち捨てられた深海魚のように、粘りつく水音を立てて身を悶えさせた。


彼女たちの鼻腔を真っ先に突いたのは、エリュシオンの草原の香りではなく、熱せられた銅と腐敗した内臓が混ざり合ったような、肺の奥を凝固させる重苦しい鉄錆の臭気である。


その大気は、吸い込むたびに喉の粘膜をざらついた灰で削り取るような乾きを伴い、舌の上には、神殿を構成する負の魔力が帯びる、錆びた釘を噛み潰したような強烈な金属の苦みがこびりついた。


彼女たちが頬を押し当てた床は、もはや無機質な石ではなく、無数の人間の顔が浮き上がった「生きた皮」のように、弾力と異常な熱を帯びた湿り気を備えている。


そこからは、何十年も閉ざされた地下貯水池の底に溜まった泥水のような、重冷たく酸っぱい腐敗臭が絶え間なく立ち上っていた。


リアナがゆっくりと歩を進めるたびに、硬いヒールがその肉の床を踏み締める「グチャリ」という湿った音と、彼女のドレスの裾が擦れる「カサリ」という乾いた音が、静寂に包まれた神殿に不気味な不協和音となって響き渡った。


リアナの吐き出す呼吸は、凍てつく冬の夜の冷気よりも鋭く、巫女たちの露わな肩を掠めるたびに、目に見えない氷の刃で切り裂かれたような鋭い痛みを残す。


彼女が細い指先を弾くと、神殿の天井から「ギィ、ギィ」という耳障りな軋み音を立てて、黒い鉄のような茨の触手が降下してきた。


その棘の先端からは、焦げた砂糖と胆汁を混ぜ合わせたような、吐き気を催すほどに甘美で、粘りつく紫色の体液が滴り落ちる。


それが巫女たちの白い法衣に触れた瞬間、ジュウという肉の焼ける音と共に、焦げた羊毛のような鼻を突く異臭が立ち込め、清浄な布地をどす黒く侵食していった。


リアナは、手にした黒水晶の杖の先端で、最も若く、震えの止まらない巫女の喉元を冷たく滑らかな感触でなぞった。


その瞬間、巫女の耳朶を打ったのは、神殿の深層から響く、数千の魂が磨り潰される際に発する、超高域の金属摩擦音に似た


「キィィィン」


という絶鳴であった。


その音の振動は、石畳を伝って巫女の骨髄へと響き、胃の底を激しく揺さぶり、生理的な嫌悪感と共に、喉の奥に熱く酸っぱい嘔吐の兆しを突き上げてくる。


リアナが細い指先に魔力を込めると、そこから立ち上る燐光は、冷たい火花のように散りながら、焼けたゴムのような鼻を突く異臭を放ち、巫女の視界を極彩色の火花と漆黒の闇で明滅させた。


「……あ、あは! お姉様、この子たちの『叫び』、とっても澄んでて美味しそうだね……っ! 早く、あの柱の欠けたところに、綺麗に『植えて』あげようよぉ!」


エルナの肉塊が、ずぶずぶと腐敗した沼を掻き分けるような湿った音を立てて、巫女たちの細い肢体を包み込み始めた。


その接触面からは、人間の体温を遥かに超えた、爛れるような熱気が放射され、巫女たちの肌には、沸騰した油を浴びせられたような、じりじりとした焼けるような痛みが走る。


同時に、エルナから分泌される粘液は、古いカビの生えた地下室のような湿り気を帯びた重苦しい臭気を放ち、巫女たちの鼻腔を容赦なく塞いでいく。


舌の奥には、恐怖によって過剰に分泌された唾液の粘り気と、魔力が引き起こす、腐りかけたメロンのような不自然な甘みがこびりつき、呼吸をするたびに肺がザラついたガラス片で満たされるような圧迫感が、彼女たちを支配していった。


リアナが神殿の「断罪の柱」を指し示すと、石の表面が「ミシミシ」と意思を持つように脈打ち、その隙間から、煮え繰り返る鉛のような銀色の液体が、重い音を立てて噴き出した。


液体が石畳を伝い、巫女たちの爪先を浸していくと、鼻腔を突くのは強烈な硫黄の臭気と、神経を逆なでするような「ジリジリ」という高周波の振動音である。


銀色の熱液が肌に触れた箇所からは、焦げた髪の毛のような凄惨な臭いと共に、氷が弾けるような「パチパチ」という音が立ち上り、巫女たちの意識は、激痛による白い閃光の中へと、泥のように沈んでいく。


彼女たちの祈りは、喉の奥に逆流した血の温かな味と共に磨り潰され、神殿の欠損を埋めるための、意志を持たない「生きた建材」へと加工されていく工程が、今、湿った肉が断たれる鈍い音と共に加速した。


神殿の天井付近に位置する、まだ「欠落」していた漆黒の梁へと巫女たちが吊り上げられると、そこからは滴る冷たい油のような魔力の雫が「ポツリ、ポツリ」と彼女たちの額に落ち、氷の針で頭蓋を穿たれるような鋭い麻痺を引き起こした。


リアナが指先を優雅に翻すと、背後の壁面に埋め込まれたかつての英雄たちが、乾いた木の枝を折るような「パキパキ」という音を立てて身を震わせ、自分たちの肉を構成する腐食した魔糸マイトを、新たな「素材」である巫女たちへと這わせ始める。


巫女たちの肌の上を滑るその糸は、真冬の湿った蛇のような、ぬらぬらとした不快な冷感と、古い火葬場に漂う煤けた灰の匂いを伴っていた。


「さあ、溶け合いなさい。あなたたちの清らかな信仰も、この神殿を支える強固な『絶望』の一部となるのよ」


リアナの声が響くと同時に、巫女たちの背後の石壁が、生き物の口のように「グチャリ」と開き、そこから放射された熱を帯びた蒸気が、彼女たちの意識を熱い霧で塗り潰した。


彼女たちの口腔内には、極限の恐怖が引き起こすアルミ箔を噛んだような金属的な刺激と、内臓がせり上がってくるような、重たく苦い胆汁の味が充満していく。


耳元では、石壁に同化した王たちの指先が、巫女たちの肋骨を「ガリガリ」と削り取るような振動を伝え、それは逃げ場のない低音の唸りとなって彼女たちの脳髄を揺さぶり続けた。


ついに巫女たちの肢体と神殿の石材が接合される瞬間、空間には「ベキベキ」という骨が石へと転換される際の、身の毛もよだつような硬質な破壊音が響き渡った。


彼女たちの指先からは、生命の最後の輝きである温かな血の香りが失われ、代わりに湿った粘土のような、無機質で重苦しい土の臭いが立ち込め始める。


視界が石化の呪いによって灰色の点描に塗り潰される寸前、彼女たちが最後に感じたのは、自分の鼓動が神殿全体を巡る、地鳴りのような


「ドクン、ドクン」


という巨大な心臓の拍動に吸い込まれ、二度と自分自身の声が出せない「建材」へと成り果てた、圧倒的な終焉の感触であった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 第40話では、巫女たちの肉体と魂が神殿の「梁」や「接木」として物理的に融合する、魔女リアナの芸術的な統治のワンシーンを肉付けしました。

 祈りが悲鳴に変わり、温かな血が石の脈動へと書き換えられる。この神殿の完成は、そのまま全宇宙への絶望の伝播を意味します。

 次回、第41話:【侵食】銀河を奔る黒い雷光。

 エリュシオンを完全に手中に収めたリアナが、次なる標的として、さらに高度な文明を持つ星系へとその魔手を伸ばします。

 引き続き、この終わらない断罪の旅路を見届けてください。

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