第4話:【凋落】枯れ始めた王国の恩恵
いつもお読みいただきありがとうございます。
処刑台から魔女が消え、静寂が戻ったはずの王国。
しかし、彼らはまだ気づいていません。
唯一の「守護者」を自らの手で追い出したことが、どれほど愚かな選択であったか。
崩壊の足音は、すぐそこまで迫っています。
魔女リアナが処刑台から消えた日から、わずか一週間。
王都を包んでいた祝祭の空気は、今や見る影もなく、代わりに重苦しい絶望が霧のように街を覆っていた。
「……陛下。また報告が参りました。東部の小麦が全滅、さらに王都を流れる水路の汚染も止まりません」
「なんだと……!? 聖女エルナの祈りはどうした! 彼女が毎日、水辺で祈りを捧げているのではないのか!」
王宮の会議室。エドワード王子の怒声が響く。だが、報告に訪れた騎士は、真っ青な顔で首を振るだけだった。
「それが……エルナ様の祈りでは、一向に事態が好転しないのです。それどころか、エルナ様が触れた水が腐り始めたと、民の間では『偽聖女』との噂まで……」
「馬鹿な……。彼女こそが真の聖女だ。あの魔女がいなくなったことで、国は浄化されるはずではなかったのか!」
エドワードは拳を机に叩きつけた。
彼らはまだ、自分たちが何を失ったのかを理解していなかった。
リアナが毎日欠かさず行っていたのは、単なる「祈り」ではない。彼女は自らの膨大な魔力を、国の隅々まで張り巡らされた結界に流し込み、毒を浄化し、大地の肥沃さを維持していたのだ。
それを「祈るだけで手に入る当然の権利」だと思い込み、彼女をゴミのように捨てた。
その頃、王宮の裏庭では。
「……どうして。どうして治らないのよ、これ!」
エルナが、枯れ果てたバラ園の真ん中でヒステリックに叫んでいた。
彼女がかつてリアナから盗み出した『聖女の首飾り』は、今やどす黒く変色し、不気味な熱を発している。リアナが込めておいた「貯蔵魔力」が底をついたのだ。
もともと祈りの力など持ち合わせていない彼女にできることなど、何一つない。
「リアナお姉様さえ、あそこで死んでいれば……! お姉様の残した魔力が切れるなんて聞いてないわよ!」
エルナの足元で、かつて美しい花を咲かせていたバラが、墨のように崩れ落ちていく。
それは王国の未来を暗示しているかのようだった。
一方、魔女の森。
私は、アスタロトの城の最上階から、遠く王国の空がどす黒く濁っていくのを眺めていた。
「……ふふ。思ったより早かったわね。ねえ、アスタロト?」
背後でワイングラスを揺らしていた彼が、冷ややかに微笑む。
「当然だ。太陽のように慈悲を注いでいた主を殺そうとしたのだ。残されるのは、等しく冷たい死だけだろう」
「いいえ、まだ死なせないわ。乾きに喘ぎ、飢えに苦しみ、私を殺したことを一生後悔してもらうまでは」
私は指先で、漆黒の液体が詰まった小瓶を弄ぶ。
かつて薬を作っていたこの指は、今、国を終わらせるための毒を練っている。
「そろそろ、一通目の招待状を送ってあげようかしら?」
私は、最初の「ざまぁ」の一撃を放つ準備を始めた。
最後までお読みいただきありがとうございます!
枯れ果てた大地に、腐敗する水路……。
「聖女がいなくなっても安泰だ」と笑っていた王子たちの顔が、どんどん青ざめていくのを見るのは、魔女となったリアナにとっても至福の時かもしれません。
次回、第5話:【襲来】呪いの使者。
王都にさらなる混乱をもたらすため、リアナが自ら動き出します。
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