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死を賜った魔女、地獄から戻って全てを「呪い」に変える  作者: La Mistral
第5章:【永劫なる魔女の帝国】

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38/54

第38話:【遠征】宇宙(そら)の彼方と魔女の眼光

本日も、終わりのない深淵へようこそ。

第38話では、この世界のすべてを「素材」へと作り変えたリアナが、その冷徹な眼差しをまだ見ぬ「外」へと向けます。

一世界の支配では満足できない、魔女の無限の渇き。それは救済の名を借りた、宇宙規模の侵食の始まりです。

完成された絶望の帝国から、次元の壁を越えて放たれる魔女の軍勢。

新たな獲物を捉えたリアナの冷酷な決断を、圧倒的なスケールで描き出します。

天界の神殿に響き渡る悲鳴の旋律は、もはや安定した背景音、あるいは心地よい子守歌へと変わり、リアナの底知れぬ退屈を埋めるには至らなくなっていた。


 彼女は玉座から音もなく立ち上がり、神殿の最奥に位置する「次元の展望台」へと足を向ける。


そこは、この世界の理の外側――まだ絶望の色彩を知らぬ無垢な星々が瞬く「外宇宙」を覗き見るための、虚無への窓であった。


「アスタロト、見て。あんなにもたくさんの光が、まだ何も知らずに輝いているわ。自分たちがいつまでも安全だと信じて、愛や希望なんていう、脆くて下らない概念を抱きしめながら」


 リアナが展望台の縁に白く細い指先をかけると、その指先から漏れ出した漆黒の魔力が、次元の境界線にガラスが割れるような鋭い亀裂を生じさせた。


 視線の先には、美しい緑に包まれた未開の惑星や、精緻な機械仕掛けの文明を誇る異星が、まるで宝石箱の中身のように浮かんでいる。


 そこには数億の命があり、まだ一度も魔女に捧げられたことのない、数億の「未知の悲鳴」が眠っているのだ。


「……あ、あはは! お姉様、新しいおもちゃ、いっぱいあるね! あの光ってる星、全部ひとつずつ握りつぶしたら、どんな音がするのかなぁ……っ! 楽しみで、胸がドキドキしちゃう!」


 エルナの肉塊が、歓喜に全身を波打たせながらリアナの足元に縋り付く。


 彼女にとっても、この世界の素材はすでに搾り尽くされ、新鮮な反応を返さない「使い古し」ばかり。


 新たな生命をその手で解体し、自我が粉砕される瞬間の爆発的な快楽を、彼女の歪みきった魂は激しく求めていた。


「ええ、エルナ。まずはあの一番輝いている星から始めましょう。あそこの住人たちには、私たちの『完成した音楽』をいち早く届けてあげなきゃ。自分たちがどれほど無力で、全宇宙に逃げ場など存在しないのだと、その魂に刻み込んであげるのよ」


 リアナが両腕を優雅に広げると、神殿の広場に配置された「生きた楽器」たちが、主の昂揚に呼応して一斉に共鳴を始めた。


 柱に埋め込まれた異界の代行者たちの神経が限界まで引き絞られ、王たちの喉が血を吹き出しながら絶叫する。


 その凄まじい密度の負のエネルギーが、リアナの魔力という触媒を得て、空間を無理やり抉じ開ける巨大な「侵食のゲート」を形成していく。


 門の向こう側からは、未知の世界の、何も汚れを知らない穏やかな風が流れ込んできた。


 だが、その清浄な風も、魔女の神殿に触れた瞬間にどす黒い毒気に汚染され、腐り果てていく。


 リアナは背後に控えるアスタロトを振り返り、その冷酷な唇を三日月のように吊り上げた。


「アスタロト、軍勢を出しなさい。私たちの分かちがたい『平和』を、あの無知な星々に分けてあげるのよ」


 魔王アスタロトが静かに頷き、その巨大な影を広げると、神殿の暗がりから、もはや人間としての形を留めない異形クリーチャーたちが次々と這い出してきた。


 かつての高潔な騎士や慈悲深い聖職者たちが、魔女の果てなき実験によって作り替えられた、死ぬことのない「絶望の伝道師」たち。


 彼らは次元の門を潜り、幸福な夢を見る異世界へと、その醜悪な爪を伸ばし始めた。


 天界の神殿は、いまや一世界の中心などではなく、全宇宙をその暗黒で飲み込むための「侵食の心臓」へと進化したのだ。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

第38話では、復讐の舞台を次元の壁を越えた「外宇宙」へと拡張しました。

一つの世界を完璧に支配し、すべての素材を使い切ったからこそ生まれる、魔女の底なしの虚無感。それを埋めるために別の文明を蹂躙するという、救いようのない次元侵略の幕開けです。

次回、第39話:【侵食】無垢なる惑星と魔女の先遣隊。

平和を享受していた人々が初めて目にする、天から降る「地獄の軍勢」。

魔女の新たなコレクションとして、彼らがどのように「加工」されていくのか。

引き続き、この終わらない断罪の旅路を見届けてください。

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