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死神の使命

バトル小説を目指しています。

血が出るなどの表現が多少細かく記載されている為、R15設定させていただいてます。

似ている内容の小説や漫画がありましたら好みのジャンルなのですぐに知らせて頂けると嬉しいです。

※確認した後、この小説は削除させていただきます。


誤字脱字報告も是非お願いします


死神は人間が嫌いだった。

弱い癖に必死に生きようとする醜い生き物。だが、死を恐れてなり振り構わず命乞いをする人間を無慈悲に死に(イザナ)うのが死神にとって何よりの至福のひとときでもあった。そういう醜い人間の方が霊魂も美味しく感じて喰いごたえがある。

だが───ある日を境に死神は人間の霊魂を喰らうのを止めた。きっかけは一人の人間の老夫だった。いつもの様に自身の骸骨姿を見て怯える人間の霊魂を頂こうと老夫の前に姿を現すが、老夫は恐れる事なくただの客人として死神を扱った。初めての反応に死神自身が戸惑ってしまい、生まれて初めて霊魂を奪う事が出来なかった。

屈辱を味わった死神はどんな手を使ってでも霊魂を奪い取ろうと、その日から毎日の様に老夫に会いに行った。しかし、老夫は変わらず死神が来ると嬉しそうに茶と菓子を出して座るよう促してくる故、慣れない対応にいつも流されてはいつの間にか茶を飲んで老夫の話を聞いてしまっていた。死神は相槌するばかりで話はしないが、ここ何十年ずっと一人だった老夫は人間でなくとも話し相手が居てくれるだけで嬉しかったのだ。

だが、老夫も老い先短い人生。持っても後数年が良い所だろう。それを分かっていた死神は勝手に死ぬのを気長に待った。

そして、老夫はぽっくりと死んでいった。もちろん死神が霊魂を取ったからではなく寿命もしくは病気でだ。その場面に立ち会ってしまった死神に老夫は「話し相手になってくれて、ありがとう」と優しく微笑み感謝の言葉を述べた。死神に感謝するなんて本当におかしな人間だった。体から抜けていく霊魂を見つめ、久しぶりの食事のはずなのに───喰べる気になれなかった。


人間を喰べる事をやめてしまった死神は日に日に衰弱していった。少しずつ死に近づいている自身に笑いが込み上げてくる。死んだらまたあの老夫に出会えるだろうか。その時は自身の話でもしてみようかと楽しみを思い浮かべながら目を瞑る。

しかし、次に見た光景は死後の世界ではなく優しそうな人間の女性に抱かれた景色だった。言葉は母音しか発せない程の幼い赤子。まさか自分自身が嫌いだった人間に転生してしまったなんて思っても見なかったが老夫と同じ人間として生きるのもまた良いのかもしれない。


蓮見(ハスミ)家の長男───(コウ)と名付けられた死神は子供が出来にくい体質だった母から生まれた。幸は家族に大層可愛がられ、たくさんの愛情を与えられた。

人間の愛情を知った幸は幸せな時間に浸っていたが、永遠に続くとは限らない。幸が高校生に上がったと同時に祖父の病気が発覚してしまい、長くはないと診断され入院生活となってしまった。初孫で一番可愛がってくれた祖父に毎日会いに行き、その日あった出来事を話した。今ではもう上手く話す事が出来なくなってしまった祖父だが、幸の話を嬉しそうに聞いてくれた。

だが、祖父の症状は悪化し、家族に見守られながら祖父は旅立って行ってしまった。元死神だからなのか少し妖気が残っているらしく人の霊魂がはっきりと見えていた幸は無事に冥界まで行ってくれと願いながら飛んでいく祖父の霊魂を見送った。

しかし、窓から外に出た瞬間───一瞬にして祖父の霊魂が姿を消したのだ。驚きのあまり窓から身を乗り出す勢いで外を見ると魔妖怪らしき生き物が数人の霊魂を風呂敷に入れている姿が目に映った。


「幸…?大丈夫?」

「あ、うん…ちょっと外の空気吸ってくる」


息子の心配が出来る余裕もないだろうに母は涙をハンカチで拭きながら幸を見る。大丈夫だと安心させつつ少し一人にして欲しい雰囲気を醸し出しながら急いで病院を出る。悲しむ家族が心配だが、今は祖父の霊魂が優先だ。あいつが魔妖怪なら祖父の魂が冥界に行く事はないだろう。そうなれば、二度と転生する事はない。

額に汗を流しながら病院の裏手に回ると魔妖怪が動きを止めたまま風呂敷の中を覗き込んでいる姿を捉える。これ幸いと転がっていた鉄パイプと長いロープを手に取って、近くに建っていた立ち入り禁止の廃ビルの屋上に駆け上る。鉄パイプをロープで固く結び、そのロープを腕に巻き付けてから助走をつけて槍投げの如く魔妖怪目掛けて鉄パイプをぶん投げる。風を切り、一直線に飛んで行った鉄パイプは魔妖怪の背中に鈍い音を立て命中する。そのまま重力に従い落ちていく鉄パイプをロープで回収すると、自身の倍くらいありそうな図体に二本の角を生やした一つ目の魔妖怪が背中を片手で押さえながら振り向き、幸を捉える。


「な、何だお前!!」

「その魂を返せ」

「お前…人間じゃないな」


魔妖怪は大きい一つしかない目ん玉で幸を食い入る様に見る。それを不快に思いながらも、前世の記憶も前世の力も持ち合わせている幸は人間ではないのかもしれないと一瞬頭を過ってしまった。


「お前には関係ない。いいから魂を返せ」

「フン、魂は何個あってもいいしな…お前の魂も貰ってやるよっ!!」


余裕の笑みを浮かべながら魔妖怪は幸目掛けて一直線に向かって来る。だが、幸は魔妖怪には目もくれずロープを外して適当な場所に投げながら片手で鉄パイプを回し、手に馴染ませる。前世に使っていた鎌とではサイズが大いに違うが今の幸には扱いやすい最高のサイズ感だった。


「だいぶ小さいがアイツ一体なら余裕かな」


やっと目線を鉄パイプから魔妖怪に向けたものの、その距離約五メートル。だいぶ狭まった距離感だが幸もまた余裕の笑みを浮かべながら動こうとはしなかった。

 

「てめ…っふざけやがってっ!」


舐められた発言をされた魔妖怪は激怒し、握っていた拳から鋭く尖った長い爪に瞬時に切り替え大きく振りかぶる。重苦しい空気を切り裂き、地面に突き刺さる寸前の所で幸は後方に跳躍し避ける。瓦礫が崩れる音が響き渡り、廃ビルが少し揺れる。単純な攻撃だが、食らえば即死だ。


「よく避けたな、だが、次はないぞっ!!」


地面に突き刺さった爪を抜き、一心不乱に突き刺してくる。しかし、攻撃パターンが少なく見切ってしまった幸にとってはダンスの如く華麗に避ける。しかし、幸自身には当たっていないが廃ビルへのダメージが多く、このままでは崩れかねない。

となると、出来るだけ一発で尚且つ───苦しみを与えられる最高の部位を探すがやはり、死神が知る一番の場所は一箇所しか思いつかない。


「避けてばがりか…っ」

 

だいぶ疲れてきたのか表情が曇り、息が上がっていた。仕方がないと動きを止め魔妖怪に向き直り、地面を蹴ってまっすぐ魔妖怪に向かって走り出す。急に走って来た幸に驚きながらも血迷ったかと大きく腕を振り下ろす。


「もらったぁぁぁぁぁあ!!」


今までで一番の大きな音を立てて地面に突き刺さり煙が舞う。勝ちを確信した魔妖怪だったが、自身の手から何かを貫いた感触が感じられない事に違和感を覚え、確認する為に煙を払う。

すると───


「居ないだと…っ!」

 

爪先には誰も居なかった。では、どこに行ってしまったのか。探すべく、刺さったままの爪を抜こうとした瞬間───背後からの風の音で冷や汗をかく。


「待ってたぜ」

「まさか…っ!」

 

確実に捉えたと思っていた幸が傷一つなく魔妖怪の背後に立っていた。幸は腕が振り下ろされる寸前で地面と爪の間を滑り込み、股を通って背後に回り込んだ。


「御愁傷様、だな」

「やめてくれ…っ!!!」

 

妖気を込めた鉄パイプを首目掛けて野球の如くフルスイングする。焦りからか刺さった爪がうまく抜けず、反応が遅れた魔妖怪は逃げ場を失い鉄パイプをもろに食らってしまった。骨の折れる鈍い音と共に断末魔をあげ、もがき苦しむ。

 

「あ、悪い。鎌だと痛みを与えず一瞬なんだがな」

 

次第に首筋の色が変色し出し、神経が働かなくなったのか魔妖怪は痙攣しながら横に倒れて動かなくなってしまった。

それを見取ってから、手に握られていた風呂敷を奪い取り口を開く。自由に飛んで行く霊魂を一つずつ目で追いながら祖父の霊魂を探し出す。

 

「居た…」


一番最後に出てきた霊魂はまさしく祖父のだった。両手ですくい自らの手で空に返す。


「よかった、さて」


無事冥界に送り出す事が出来て一安心したが、殺してしまった魔妖怪をどうするべきか考える為に目線を向けると幸は目を見開く。一瞬目を離しただけだが音も無く魔妖怪は───消えていた

確実に仕留めた筈なので自身の力で消えた可能性は無い。となると、誰かの手によって消されたという事になるがそれは一体何の為なのか、疑問は残るが今は祖父の死を弔うのが先だと考え、急いで病室に戻った。


色々な手続きや葬儀が終わり、久しぶりに落ち着いた夜を迎える事が出来た幸は休んでいた学校も明日から始まるので早く寝に着く為にベッドに入る。

しかし、そうもいかないらしい。窓の外から何かの気配を感じるが幸の部屋は二階でベランダは無い。となると、必然的に人間でない事が明らかになる。無視をした方が身の為なのだろうがこのままでは気が散って寝る事が出来ない。せっかく入ったベッドから降り、締め切っていたカーテンを開けて確認すると窓の外に火の玉が浮いていた。


「これは、鬼火か」


この間戦った魔妖怪の仲間ではないと判断し、窓を開けると鬼火はゆらりと炎を揺らしながら中に入ってくる。幸は椅子に座り様子を見ていると鬼火は大きく燃え盛り始め、炎の中から王の字が刻まれた大きな被り物を被り、自身の肩を笏で叩く強面が映し出された。


「やっぱりお前だったか……閻魔」

『久しいの、死神よ』


この世の死者に裁きを下す、冥界の王───閻魔


「もう死神じゃねえよ」

『お主が人間に転生したと聞いた時は冥界中が大騒ぎしたもんだ』


腹を抱えて笑い出す閻魔から顔を背ける。幸自身も悪い事をしてきた自覚はあった。だからこそ、何故自分は罰を受けず人間に転生したのか分からなかった。


「俺を裁いたのはお前だろ」

『まあ、そうなんじゃが』


目を逸らし、渋い表情をする閻魔。何かを隠しているのは明らかだが無理に聞き出そうとはしない。だが、罪を償う事なく人間に転生し、暖かい家族の元に生まれた。愛情を知った今の幸には家族を失う悲しみを知っている。


「今からでも、俺は罪を償う覚悟はある…」

『…転生は輪廻が決めた事じゃ』


それがたとえ間違いだったとしても輪廻が決めた事は絶対だ。後にも先にも変える事は出来ない。


『だが、あの時のお主を見たワシは人間に転生してもおかしくはないと思っておったよ』


閻魔が言う「あの時」とは、死神が霊魂を喰べなくなった原因である老夫の霊魂を無事に冥界まで行ける様に自らの手で連れて行った時の事を言っているのだろう。冥界にとって死神は危険人物扱い。だが、その死神は冥界に着いてすぐ老夫の霊魂だけを置いて姿を消した。その行動に閻魔ですら驚いていたのだ。


『お主が記憶を持って転生したのが何よりの罰なのじゃろう』


前世の行いを一生背負う事が幸の贖罪なのかもしれないと閻魔は言う。

それに幸は記憶だけでなく力も引き継いでいる。きっと何か理由があっての事なのだろう。


「それで、お前は何しに来たんだよ」


ただ世間話をしに来た訳ではないだろうと思い問いただすと苦笑いをしながら頬を掻く仕草をする閻魔に嫌な予感が駆け巡る。


『お主、この間魔妖怪と戦ったじゃろ』


まさか、魔妖怪を殺してしまったのがまずかったのだろうか。いくら祖父の魂を取り返す為だったとはいえ、人間の幸が関わって良い筈がない。処罰を与える為にわざわざ閻魔が姿を見せたのだろうと納得し、身構えるが聞こえて来たのはまさかの言葉だった。


『魔王が復活する』

「…は、」


閻魔の言葉に冷や汗が頬を伝う。


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